第24話 世界の真理
アイシス先輩と出会った翌日。おれは始業前の教室で、昨日気付いたこの世界における一つの真理かもしれないとある内容について考察をしていた。
うーむ、こうして同じクラスの女子生徒を観察していると、やはりおれの考えは正しいように思える。まあ、データ数が少ないと言えば少ないのだが、おれが把握できる限りでは、おれの考えとズレはない。
ただ、問題があるとすれば、師匠とサフィアの二人だ。まあ、サフィアのほうは一旦置いておき、まずは師匠のほうだな。
師匠は変身魔法で変化したその姿を「アタシの昔の姿を完全に再現した物。ゆえに、頭のてっぺんからつま先、果ては五臓六腑に至るまで完璧に美しい」と言っていた。というか、外見はいいとして五臓六腑が美しいってなに? 健康体ってこと?
しかし、そのあと「間違えた。アタシは見た目と年齢が変わらない特異体質で、変身魔法は使っていない」とか言ってたけどな。なんだ、その謎の体質? DBを使って不老不死にでもなったんですか、師匠?
まあ、いいや。とりあえず、師匠の見た目は昔の姿を完全に再現した物という前提で話を進めよう。
で、おれの知り合いの女性達の魔術師としてのランクを下から順に並べると、サフィアが三星魔術師、リミアが五星魔術師、アイシス先輩が七星魔術師、ルミル先生が八星魔術師、師匠が九星魔術師の順になる。
そして、この順番はとある物の順番と完全に一致している。
それがなにかというと、ズバリ、女性の胸のサイズだ!
魔術師のランク数と魔力量には基本的に相関関係があるが、女性の胸のサイズもまた相関関係がある。
これこそ、おれが気付いたこの世界における一つの真理である。
この考えが合っているかどうか実際に先ほど確認してみたのだが、念のため、もう一度確認してみよう。
例えば、向こうに座っているあの女子生徒は四星魔術師であり、胸の大きさはリミアよりやや劣るように見える。
そして、その近くにいる女子生徒は三星魔術師であり、胸の大きさは先ほどの四星魔術師の子よりまた少し小さい。
そんな感じで確認していくと、おれの考えはやはり正しいように思える。ただ、このクラスには六星魔術師以上はいないし、データ数もやはり少ないのだが。
あと、ここで問題になるのが、最初に考えたサフィアのことである。サフィアは三星魔術師なのだが、先ほどの三星魔術師の女子生徒と比べて胸の大きさに明らかな差がある。
ぶっちゃけ、サフィアってA……じゃなかった、一星魔術師なのでは、と思えるほどの差だ。
まあ、何事にも例外はあるし、サフィアは三星魔術師にしては明らかに魔力量が多い。もしかすると、魔術師のランクに対して魔力量が多いとその分、胸の大きさに変化があるのかもしれない。
そんなことを考えていると、当の本人であるサフィアから声をかけられた。
「ねえ、レイン。あなた、さっきから難しい顔をしてるけど、いったいなにを考えてるの?」
……おれはそんな顔をしていたのか。
まあ、今おれが考えていたことは、人によってはくだらないが、別の人によっては非常に重要な事だからな。というかむしろ、世の健全な男子の大半は気にしていることではないだろうか?
だって、ググール先生に尋ねれば、アニメキャラの胸のサイズのランキングとか出てくるよ、たぶん。今のおれには確かめる方法がないけどさ。そんなことを考えていたおれに対し、今度はサフィアが心配そうな顔をしながら口を開く。
「……ねえ、なんでずっと黙ってるの? もしかして、そんなに深刻な悩みなの? あたしで良かったら話を聞いてあげるわよ」
やっぱ、サフィアって良い奴だなあ。さて、それはおいといて、とりあえずこの場は誤魔化さないとな。女性の胸のサイズについて考えてましたなんて言えるはずがない。
「……いや、大丈夫だ。単にサフィアは可愛いなあって思ってただけだよ」
「……はあ? なんで、あんな顔をしてたのにそんなことを言い出すのよ?」
サフィアはわけがわからないよ、と言いたげな顔をしていた。いや、だって、小さい膨らみってそれはそれで可愛いじゃん。あと、小さいことを気にしている女の子というのも非常に可愛い。
その点でいくと、サフィアは以前リミアのほうを見て自分の胸を押さえながら、
「なんで同い年なのにこんなに差があるのかしら……」
ってつぶやいてたことがあるからな。
というわけで、おれがこの状況で、サフィアは可愛いという結論に至ったのはごく自然なことである。だが、やはりそんなことを言うわけにはいかないので、それも誤魔化すしかない。まあ、この場は適当に流せばいいだろう。
「……いや、本当に気にしなくて良い。もし、なにかあったら相談するからそのときは話を聞いてくれ。あと、心配してくれてありがとな」
「……まあ、あなたがそう言うならいいけど……」
やや納得がいってないようだったが、サフィアはそう言って話を終わりにしてくれた。
さて、サフィアのためを思えば、おれが気付いたこの世界の真理についての考えは外れていたほうがいいのかもしれない。
だが、それが合っているのか外れているのかは、大いなる神のみぞ知る話である。