第183話 三人目のメインヒロイン
「ゆえに、アイシス」
昔話を終えたアイシスはおれの隣で幸せそうに微笑んだ。……うん、アイシスがそうやって微笑む気持ちはよく分かる。なんて孫想いの素敵なお祖母さんなんだ。
……だから、おれの名前のほうは雑じゃね、という感想は一旦置いておこう。
「本当に良いお祖母さんですね、レイシスさんは」
「ああ、そうだな。私は本当に周囲に恵まれた。家族や学友、生徒会の皆、それに――」
アイシスはおれの右腕にぎゅっと抱きつき、言葉の続きを口にする。
「それに、良い恋人にも恵まれたよ」
「……そう言ってもらえるのは嬉しいんですが、おれにそこまでの自信はないと言うか……」
「……確かに、そうやって視線や意識が逸れるのは良いとは言い難いな」
「……! す、すいません。でも、これは不可抗力と言うか……」
言葉の通り、おれの視線や意識はアイシスの胸にいってしまっていた。だって、しょうがないじゃん! こんなに柔らかくて大きな胸を押し付けられてるのに、それを気にせず会話するとか無理だよ!
「まあ、それも君らしいし構わないよ。それより、レイン、一ついいか?」
「はい、なんですか?」
アイシスはすぐに返事をせず、しばしの逡巡を見せた。その後、頬を赤くしてうかがうように声を発する。
「……君は私のことを、……その、女性として、そして恋人としてどう思っている?」
「……? どうって、大好きですけど」
「……その言葉は嬉しいが、そうではなくて……」
まるで、すねるような視線でアイシスはおれを見る。そうではないってどういうことだろう? 再度、アイシスのほうを見ると、なにも言わず期待を込めた瞳でおれの言葉を待っている。
おれの言葉と言えば、おれにはアイシスに言わないといけない大切な言葉があるんだった。…………ん? あ、もしかして、そういうことか! アイシスの望みに気付いたおれは真剣な表情でアイシス、つまりおれの人生の三人目のメインヒロインを見る。
「アイシス。おれはアイシスのことを心から愛している。だから、おれと結婚してください」
「っ!! ………………うん、私もレインのことを心から愛している。だから、よろしくお願いします」
そのまま、おれ達は顔を近づけ誓いの口づけを交わす。……まではいいのだが、その後おれはアイシスをベッドに押し倒してしまった。……うん、なんかこうなるような気はしていた。
「……あの、なんというか、すいません」
「そうだな。なんというか、君らしいな」
「……あと、すいませんと言えば、心から愛しているって言ってプロポーズしたのに、おれの残りの人生の三分の一しかあげられなくてすいません」
「……いや、構わないよ。研究都市フォルンで君に助けてもらえなければ、私の人生は十七歳で終わっていたからな。そう考えると私がもらいすぎなくらいだし、その分は返さないといけないな」
そう言って、アイシスは両手を伸ばしおれの頭を掴むと、それを自分の身体へと引き寄せた。
「ちょ、なにを!?」
「……君が最も喜ぶのはこうだと思ったのだが違うのか?」
「い、いえ、違いませんが……」
アイシスによって引き寄せられたおれの頭は今、柔らかくて大きな胸にうずまっている。さらに、アイシスが両手を放さずおれの頭を抱き寄せるため、より密着してすごく気持ちが良い。気持ちが良いが色々とヤバい。
「ち、違わないんですが、こんなことをされるとその……、それ以上のこともしたくなってしまうというか」
「………………構わない」
「か、構わないって……」
「本当に構わない。婚約をした以上、もう私の身も心も君の物だからな。だから――」
おれがどうにかして視線をアイシスのほうに向けると、アイシスの真っ赤な顔と潤んだ瞳が見える。
「私の身体も君の物だから好きにして良い」




