第150話 魔術師の最高峰①
美少女三人のファッションショーが終わった後、アイシス先輩と師匠がなにかを話している。
「ディーバ殿、一つお願いがあるのですがよろしいでしょうか?」
「ん、なんだい?」
「ご迷惑でなければ、一度手合わせ願えないでしょうか? ディーバ殿のお力をこの目で拝見したいので」
その言葉に師匠が返事をする前に、近くで話を聞いていたリミアとサフィアが口を開いた。
「わたしも見てみたいです」
「あたしも見たいわ」
「そうかい。そういうことなら、もっといい方法があるね」
「というと?」
「アンタ達三人とアタシが試合をするのさ」
「……我々三人同時に……ですか?」
戸惑うアイシス先輩とは対照的に、師匠は大胆不敵に言い放つ。
「そうさ。三人まとめて相手をして、魔術師の最高峰である九星魔術師の実力を見せてあげるよ」
*****
試合のため、レイン達は魔の森の近くにある開けた荒野に来ていた。
「じゃあ、ルールは降参を宣言するか、または土魔法で作ったこのプレートが割られたら敗北ということで」
レインの言葉に、リミア・サフィア・アイシス・ディーバの四人は頷きながら左胸にプレートを付ける。その後、ディーバは余裕綽々と言った様子で手招きする。
「ほら、遠慮はいらないよ。どこからでも好きにかかっておいで」
「では、私からいかせてもらいます。<絶零氷柱槍>!」
「ふむ……。<氷柱槍>」
アイシスが放った極大の氷柱とディーバの放った極小の氷柱がぶつかり合う。その威力は互角であり、二つの氷柱は相手に届くことなくその場で砕け散った。
「な……!? 私の上級攻撃魔法を下級攻撃魔法で……!?」
「これって、レインさんが前に見せてくれたのと同じ――」
「魔力出力を最大限まで威力に振った<氷柱槍>……!」
その姿を見たディーバは不敵な笑みを浮かべながら口を開く。
「どうしたんだい? まさか、この程度で戦意喪失とか言わないよねえ?」
「……! ならば、複数同時攻撃だ! 二人とも頼む」
「分かりました。<輝閃光矢>!」
「神……、<灼熱火炎弾>!」
リミアとサフィアに続き、アイシスも<剛塊岩石砲>、<絶零氷柱槍>、<灼熱火炎弾>、<旋嵐疾風刃>、地水火風の上級攻撃魔法を同時に放った。
その六発の攻撃魔法を、ディーバはまるで目には目を歯には歯をと言わんばかりに、それぞれに対応する下級攻撃魔法で難なく相殺する。ただし、ディーバは光魔法を使えないため、<輝閃光矢>だけは<岩石砲>で相殺していたが。
「これでも通じないのか……」
「あの威力の魔法を六発同時に放つなんて……」
「想像以上の化け物ね……」
試合が始まってからわずか数分で圧倒的な実力差を見せつけられ、アイシス達からは冷や汗が流れ始める。
「……魔法戦だけでは勝ち目がないな。私が体術戦を仕掛けるから二人は援護を頼む」
アイシスは身体強化を発動しディーバに高速で接近する。それを迎え撃つため身体強化を発動したディーバは、アイシスの放つ拳や蹴りを造作もなくいなしていく。しかも、それだけではない。
「<輝閃光矢>!」
「<灼熱火炎弾>!」
「<岩石砲>、<火炎弾>」
ディーバはアイシスの猛攻をいなしつつ、リミアとサフィアが放った魔法を一瞥もせずに下級攻撃魔法で相殺していく。サフィアが空中から魔法を放ったり、<光体>を発動したリミアが光速移動で攪乱して魔法を放っても結果は同じだ。
これはアイシスが魔法大会のリミア戦で見せた、魔力感知を発動した状態での戦闘と同じ。いや、それをアイシスよりもはるかに高いレベルで、ディーバは実践して見せていた。
「ならば、<氷結領域>!!」
アイシスは自分ごとディーバを凍らせる覚悟で<氷結領域>を発動し、二人の足元が青白く光り輝く。だが――
「甘いね、<氷結領域>」
「なっ……!?」
ディーバはアイシスの<氷結領域>の上から自分の<氷結領域>を発動し凍らせることで、アイシスのそれを力づくで抑え込んだ。それは絶大な魔力量を活かした、実力差を見せつける防御と言えるだろう。
「そうやって、呆けたままでいいのかい? このまま、プレートを割ってしまうよ」
「くっ!」
ディーバがアイシスのプレートに指を軽く当ててそう言うと、正気に戻ったアイシスは後ろに大きく飛びのけた。その様子を見て、リミアとサフィアもアイシスのすぐ近くに戻る。
「アイシスさん、大丈夫ですか?」
「……ああ、大丈夫だ」
「あたし達三人の攻撃を軽々としのぐなんて、本当に恐ろしい相手ね」
「しかも、それだけではない。ディーバ殿はこの試合が始まってから、あの場を一歩も動いていないからな」
「え……!?」
「そ、そんなことが……!?」
「おや、よく気付いたね。その通りだよ」
リミアとサフィアが驚いたその事実をディーバは肯定してみせた。その後、ディーバは自分の足元に残った氷を<火炎弾>で溶かし、地面に人一人分の円を描く。
「気付いたご褒美だ。アタシをこの円の外に出せた場合でも、アンタ達の勝ちにしてあげるよ」




