第149話 ファッションショー
おれと師匠、そしてアイシス先輩が師匠の家に戻ると、リミアとサフィアがなにかに見惚れている。二人の視線の先にはきれいな洋服や宝石が並んでいた。
「なんか、おれがいない間にまた数が増えましたね、師匠?」
「おや、そうかい?」
「いや、明らかに増えてますから」
「だとしても、それは自然の摂理ってもんだよ。この美しいアタシには自然と美しい物が引き寄せられるのさ」
「服や宝石が勝手に歩いて来たみたいなこと言わないでください。で、今度はいくら使ったんですか?」
「さて、どうだったか……。最近は年のせいか物忘れが激しくてねえ……」
そう言って、師匠は誤魔化すように口笛を吹き始めた。……つーか、師匠って口笛が上手いな。まあ、それは良いとして、おれが王都の行く前に財布に入れていたお金は、きっとあのコレクションのどれかに消えたのだろう。
本来であれば、おれはその件で師匠に文句の一つでも言う権利がある。だが、そのおかげでおれは美少女リミアと一緒に寝たりなど良い思いができたので、感謝はあれど文句などない。
「これは、見事な物だな……」
声がしたほうに目をやると、いつの間にかアイシス先輩まで師匠コレクションの鑑賞に加わっていた。女の子というのは基本的にああいう物が好きらしいからなあ。そんな三人の姿を満足そうに眺めていた師匠が、なにかを閃いたようで口を開いた。
「アンタ達、そんなに気に入ったんなら一度身に着けてみるかい?」
「え、いいんですか?」
「でも……」
「さすがに、それはご迷惑なのでは……?」
「なあに、気にすることはないよ。美しい物同士が合わされば、よりその輝きを増すからね。なんなら、美を極めたこのアタシがコーディネートしてあげよう」
師匠のその言葉に、三人は目を見合わせしばし逡巡した後コクリと頷いた。こうして、師匠の師匠による師匠のためかもしれないファッションショーが開幕した。
*****
女性陣が奥にある部屋に入ってから数十分後。
「ど、どうでしょうか?」
部屋のドアが開き、おめかしをしている一人の美少女が出てきた。
「…………………………」
「あの、レインさん?」
「……あっ、悪い悪い。あまりに美しかったから、つい見とれちゃって」
「そ、そうですか……。その、ありがとうございます……」
リミアは頬を赤くして、照れくさそうに微笑んだ。いやまったく、本当に美しい。思わず、女神様が降臨したかと思ったぞ。
まず、目を引いたのは煌びやかな黄色いドレスだ。胸元は大胆に開いているのにロングスカートで、セクシーさと清楚さを共存させている。頭はというと、長い髪をくるくるときれいにまとめていた。確か、こういう髪型を編み込みアップと言うはずだ。
さらに、そのまとめた髪に、赤・青・緑など様々な色の宝石を散りばめているのは一つの芸術品のようである。最後に、極めつけはその化粧だろう。ただでさえきれいな肌が普段以上にツヤツヤとしており、赤い口紅と相まって大人の女性を思わせる美しさだ。
結論――結婚したい。
*****
リミアが奥にある部屋に戻ってから数分後。
「次はあたしね。どうかしら?」
部屋のドアが開き、おめかしをした次なる美少女が出てきた。
「……そうだな。とても美しいぞ」
「そ、そう……。うん、ありがと……」
……危なかった。先ほどのリミアの美しさで耐性ができていなければ、また見とれてしまうところだった。かたやサフィアはというと、頬を赤くして恥ずかしそうに俯いている。いやまったく、本当に美しい。思わず、女王様が親臨したかと思ったぞ。
まず、目を引いたのは情熱的な赤いドレスだ。胸元は控えめだが切り込みの入ったスリットスカートで脚を出すことにより、スレンダーボディながらセクシーさを醸し出している。頭はというと、ツインテールをほどき長くなった髪を後ろに下ろしていた。
さらに、指輪やネックレス、ブレスレットなどをバランスよく身に着けることで、どこを見てもその姿が輝いて見える。化粧だってもちろんバッチリであり、知らない人が見れば大人の女性だと見間違える美しさだった。
結論――結婚しよ。
*****
サフィアが奥にある部屋に戻ってから数分後。
「ど、どうだろうか?」
部屋のドアが開き、おめかしをしたさらなる美少女が出てきた。
「……そうですね。非常に美しいです」
「そ、そうか……。ありがとう……」
アイシス先輩は頬を赤くして、顔を隠すように下を向いた。いやまったく、本当に美しい。思わず、お姫様が来臨したかと思ったぞ。
まず、目を引いたのは落ち着いた雰囲気のある青いドレスだ。胸元は完全に隠しスカートも長いが、それが逆にアイシス先輩の恵まれた身体を強調し引き立てている。頭はというと、短めの髪を上手に編み込んでハーフアップにしており可愛らしい。
さらに、ドレスのあちこちに宝石が散りばめられており、彼女のきれいな身体をいっそう際立たせている。先ほどの二人よりは大人びた顔立ちのためか化粧は控えめだが、生来の素材の良さもあり普段以上に大人びて見える美しさだった。
結論――もう結婚してるってことでいいんじゃないかな。
*****
その後、師匠の師匠による師匠のためかもしれないが、おれのためにもなったファッションショーは数時間ほど続いた。
しかし、師匠と他の三人では体形が全然違うのに、着れる服がこんなにたくさんあるとはな。見た目が気に入れば今の自分の姿では着れない服でも買うとはいえ、さすがに買いすぎじゃないですかね、師匠?




