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第12話 ご指名を頂きました。


 前世でプレイしていたゲーム「オリヴィリア」の世界に転生して二ヶ月。

 サルビアの町に来てから気づけばあっという間に三週間が経っていた。


 今日も今日とて依頼をこなす為に冒険者ギルドに来てみれば、依頼の達成数などを確認できる魔道具の前にジークがいた。隣にはリオンもいる。二人は何やら話をしていた。

 イケメン二人が並んでいるのは絵になるし、何より目の保養だ。ありがたやと心の中で呟きながら拝んでいれば、ふいにジークと目が合った。


 み、見られた……!


 顔に熱が集まるのがわかる。

 私を見ていたジークは、フハッと笑った。


「何やってんの? それ?」

「いえ、お気になさらず……」


 ジークはおかしそうに笑っているが、リオンは「なんだこいつ……」みたいな冷めた目で見ている。そんな目で見られているというのに、傷つくこともなく喜んでいる私は、ただの変態だ。


 だって、ゲームでもリオンのあんな表情見た事ないんだもん! レアものなんだもん!


 でも、冷たく見られて喜んでいる様子なんて見せようもんなら、本格的に気持ち悪いものを見るような目で見られそうだ。さすがにそれは傷つくので、それを表に出さないように頑張って心の内に抑え込む。


 あの日の告白の誤解をジーク本人に解いて以降、ものすごく有難い事に彼からいろいろと話しかけてもらえるようになった。

 その過程でリオンやマリアとも知り合いになることが出来た。


 最初、リオンとマリアは私の事を警戒していた。

 何でも昔、私と同じようにジークに熱烈な告白をした女性がいたようで、彼女はかなり強引にジークに迫って来たそうだ。結構な迷惑行為をされたようで、あの日ジークに告白した私がその時の女性と重なり、またジークが嫌な目に遭うと思ったリオンとマリアは、私にきつく当たっていた。

 しかし、ジークがあの日の告白の誤解を解いてくれた事と、彼自身が私に友好的に接している様子を見て今はその態度は軟化している。

 ありがとう、ジーク。


 ……こんな風にジークたちと笑って話せる日が来るなんて、暴走車のせいでたった16歳で命を散らせた前世の私は夢にも思わなかっただろう。



「……ん?」



 そこまで考えて、私はとある重要な事に気づく。

 前世の私が亡くなった年齢が16、今世の私の年齢も16。

 えーっと……という事は、今の私は前世の年齢を足すと――。


 ……うん。考えるのはやめよう。

 今の考えは記憶から抹消しよう。


「フィリアは今日、どんな依頼を受けるんだ?」

「討伐の依頼を受けてみようかと。それなりに冒険者業に慣れてきたので」


 ジークにそう答えれば、隣にいたリオンの視線が鋭くなった。


「油断するなよ」

「はい!」


 大丈夫です。

 魔物との戦闘が危険な事は、十分理解してますから!


「初めて討伐依頼を受けるんだったら、スモールラットとかホーンラビット辺りがいいかもな。ちなみにフィリア、魔法は使えるか?」

「使えます」

「属性は?」


 ジークに尋ねられて、一瞬固まってしまった。


 はっきりと聞いたことはないが、全属性の魔法が使える人というのはほとんどいないのではないだろうかと私は考えている。

 ゲームの主人公は使えていたが、男主人公だった場合の恋愛攻略対象キャラの中で一人だけ魔導士の子がいたが、確かその子が使用していた魔法の属性は水と風の二つだけだった。他のキャラも魔法を使える者はいたが、属性の数は多くて二つ。ほとんどは一つの属性しか使えなかったと記憶している。

 だから魔法を使える者が扱える属性は基本的に一つか二つ。三つ以上は珍しい部類になると思われ、全属性なんてのはさらに珍しいものだと考えた。

 ここで素直に「全属性使えます!」なんて答えたら、なんだか面倒くさい事になりそうだ。

 ……実を言うと、私が全属性の魔法が使える事は両親にすら明かしていない。

 ここは前世の記憶を思い出す前の私がもともと覚えていた火属性と風属性だけ使えるという事にしておこう。


「火と風です」

「おっ、それじゃあスライムの討伐でも問題なさそうだな」


 スライム? スライムってあの見た目がぷにぷにしてるヤツ?

 スライムの討伐なら、別に魔法が使えなくても大丈夫じゃないのか?


 頭の上に疑問符が浮かぶ。

 それに気づいたジークが、補足説明をしてくれた。


「スライムには物理攻撃がほとんど効かないんだよ。見た目はグミみたいな感じだけど、粘液状に変化できるからな。スライムを倒すなら火属性の魔法で焼くのが一番なんだ」

「切ってもすぐに再生するからな」


 それからスライムの攻撃は体当たりと溶解性のある粘液だとジークは教えてくれた。

 体当たりの威力は高くないものの、溶解性のある粘液は何度も食らうと装備や武器が溶けてしまうという。実際に昔冒険者になりたてだったジークは剣でスライムに挑み、武器である剣と防具の一部を解かされてしまったらしい。


 ジークとリオンから話を聞いていた私は、戦慄していた。

 スライムは前世で遊んだことのあるゲームでは大抵序盤に登場する最弱な魔物で、剣などの武器で倒せていたのに。

 でも言われてみれば確かに、ドロドロとしたものに剣などの物理攻撃が効くとは思えない。


 スライム……実際はなんと凶悪な魔物だろうか!


「そうなんですね……。教えてくれてありがとうございます」


 ちょっとスライムと戦うのはやめておこう。溶かされるとか普通に怖い。

 討伐依頼を受けるなら、スモールラットの討伐依頼あたりにしよう。


「どういたしまして。他にもわからない事があれば遠慮なく聞いてくれ」

「はい! ありがとうございます」


 それじゃあまたな、と言ってジークはリオンを連れてギルドをあとにした。


 私はそっと自分の胸を押さえた。

 まだドキドキと脈打っている。推しキャラと……イケメン二人と長いことお喋りしてしまった。

 にやけそうになる口元を必死に手で押さえていると、突然背後から声がした。


「仲睦まじいですねぇ」


 驚いて振り返って見れば、そこにはギルド職員のラナさんがにやにやと笑いながら立っていた。

 いつの間に後ろにいたのか!?


「もう一度告白すればジークさんと付き合えちゃうんじゃないですか?」


 このラナさんというギルドの職員は、私がジークと喋っているのを見ると、ことあるごとにそんな事を言ってくるから困っている。

 ジークの事は好きだけど付き合いたいとは思っていない、と何度言ってもこの人は聞き入れてくれない。


「何のご用ですか?」

「あっ! そうでした! フィリアさんにお伝えしたいことがあるんです~」


 先ほどのラナさんの言葉を無視して、何か用事があるのかと尋ねてみれば、彼女は気にせずにそう返してきた。

 ラナさんはパッと目の前に一枚の依頼書を見せてきた。



「じ・つ・は! フィリアさんにご指名が入ったんです~!」




ブックマークや評価をして頂きありがとうございます。

本当に嬉しいです! 励みになります!

これからもどうぞ「モブに転生しました。」を宜しくお願い致します。

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