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2.3-16 ブレスベルゲンの探検13

 冒険者事務局に入ってきたのは、3人の冒険者だった。見るからにガラの悪い3人組だ。ブレスベルゲンを拠点に活動している冒険者ではない。ブレスベルゲンの冒険者は、皆、冒険者事務局では大人しいからだ。


 実際、彼らの最初の発言はこうだ。


「ここが冒険者()()()かぁ?」


 "冒険者ギルド"とは、ブレスベルゲンに商工会議所が出来る前の冒険者事務局の呼び名。今のブレスベルゲンには存在しない名前である。


 ブレスベルゲンを拠点に活動している冒険者たちは、全員、冒険者ギルドの名前が変わったことを知っていた。今でも名残として、事務局のことを"ギルド"と呼ぶ者は少なくないが、事務局の中まで入ってきて、わざわざ"ギルドか?"と確認する者は最早いない。


 ゆえに、3人の素性を何となく察したカトリーヌは、内心で同情しつつも、警戒を顔には出さず、普段通りに対応する。まぁ、乱暴に訪問してきた者たちに対応することを、"普段通り"と表現できるかは微妙なところだが。


「ここは冒険者ギルドではなく冒険者事務局です。ですが、営業内容は同じですから、普段皆さんがお使いの冒険者ギルドと同じようにご利用いただけます」


「内容が同じなら、ギルドって名前で良いじゃねえか。馬鹿か?お前らは」


 という罵りを受けても、カトリーヌが顔に張り付けた表情は崩壊しない。ニコニコと営業スマイルを浮かべているままだ。


 ちなみに、彼女の内心はどうだったのか、というと——、


「(あぁ、愚かな人たち。このブレスベルゲンで、暴言や乱暴な振る舞いをするとどうなるのか、知らないのね……)」


——と、やはり怒ってはおらず、ただただ同情していたようだ。


 そんなカトリーヌの表情と対応が気に入らなかったのか、3人の男たちは受付に居た彼女の所へと歩み寄ろうとした。その際、サヨは、3人の男たちの進路上にいたわけだが——、


「おい!どけ!餓鬼!」


——と乱暴に突き飛ばされそうになる。


 それも仕方のない事だと言えた。ブレスベルゲン以外の町では、獣人は虐げられる存在。奴隷にされるのはまだ良い方で、いきなり斬り殺されたとしても罪には問われないという扱いを受けているのである。


「(っ!)」


 このままでは突き飛ばされる……。そう考えたサヨが、獣らしい反応速度で、男の手を避け()、その瞬間——、


「ぶへっ?!」ズドンッ!ゴシャッ!


——という音が聞こえたかと思うと、サヨのことを突き飛ばそうとしていた男が消える。


 残された2人の男たちが、我に返るまで、5秒ほど掛かった。その間、仲間がどこに消えたのか、彼らには理解出来なかったのだ。当然、原因については、我に返っても分からない。


 彼らに分かった事はただ一つ。


「うぅ……」


「「えっ……」」


 部屋の壁のところで、仲間が横たわっていたのだ。一瞬で突き飛ばされて、壁にぶつかり、昏倒したらしい。


「いったい……」

「何が……」


 残った2人が、吹き飛んだ仲間とは逆の方へと視線を向ける。するとそこには、1人の獣人の少女が立っていた。ただし、サヨではない。


「グルルル……」


 犬歯をむき出しに威嚇しているのは、狼娘のブラウだった。どうやら彼女が、冒険者の1人を突き飛ばした——いや吹き飛ばしたらしい。


 彼女のその獰猛な表情に、残る2人は後ずさる。


「お、おい!獣人ごときが、こんなことをして、ただで済むと思っているのか?!」

「う、受付嬢!こいつをどうにかしろ!」


 普通の町では、獣人が人間に手を上げるなど御法度。文字通り、法律がそうなっているからだ。


 しかし、ブレスベルゲンでは違った。特にブラウの場合は例外中の例外。


「あぁ、その子は騎士団所属ですから、当事務局に()()()()()を抑える権限はありません」


 ブラウは、保護者であるグラウベルが率いるブレスベルゲン騎士団所属の狼。現代日本に例えるなら、警察犬のような存在である。


 そんな彼女が、冒険者3人組に対して、明確に敵意を示したのだ。たとえ、異議や苦情を申し立てても、騎士団が動くのは確定事項。


 冒険者事務局も、すべての事情を知っているので、激怒するブラウを無理矢理抑え込むようなことはしない。


「ブラウちゃんを怒らせたのですから、騎士団を呼びます。最低でも事情聴取は覚悟して下さい」


 そう口にしつつも笑顔を絶やさなかったカトリーヌを前に、男たちはたじろぐ。2人とも顔面蒼白だ。今更になって、ブレスベルゲンという町の恐ろしさを垣間見たらしい。


 サヨもまた、顔を引き攣らせながら後ずさった。


「(この町って、こんな人たちばかりにゃの?怖いにゃぁ……)」ブルッ


 小枝だけでなく、町の人々にも気を遣わなければならないのか……。サヨは、背筋に薄ら寒い感覚を覚えて、小さく震えるのであった。


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― 新着の感想 ―
[良い点] お久しぶりです……あっ [気になる点] 警察呼ばれちゃた [一言] チーン
2024/06/27 09:04 退会済み
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