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転生箱道中 ~ダンジョン異世界で僕はミミックでした~  作者: 和尚
第4章 王国と帝国という名のエリア
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第65話 現れた男

遅くなり申し訳ないです……

今日から新章なので、構成とか色々考えて、何度か直して……


予約投降してんのにストックとかないんで、こんな感じになりました。



ある日の昼下がり。

僕らは……緊張感漂う空気の中で、とある『客人』を前にしていた。


その顔合わせの場に出ているのは……レーネ、ビーチェ、レガートに加え、僕ら無機物トリオ。その後ろの方に、警戒する感じで他のメンバーもいるのに加え……一応今まで保護したまま連れてきていた、帝国軍の偵察兵である少女がいる。


そしてその少女の視線は……せわしなく動いているものの、主に、僕らが相対している青年に向けられていた。複雑な感情と共に。

恋慕とかそういうのはなくて……謝意とか、尊敬とか、罪悪感、自責の念とかだけど。


そして、その……僕らの正面にいる青年。

この人は、さっき僕らが昼食休憩を取ろうとして進むのを止めたタイミングで、『この集団の代表者に会いたいのだが』って言って接触してきたのだ。


遮るものの何もない平原で、隠れることもなく堂々とやってきた。数人のお供を連れて。


七~八頭身の長身で、イケメンと言って差し支えない精悍な顔つき。黒髪で、頭にはバンダナ。

引き締まったその体は、筋骨隆々というわけではないにしろ鍛え上げられているのが、服の上からでもわかる。


で、問題だったのは……この青年を含めた全員が、帝国軍の軍服を着ていたこと。


加えて、その姿を偶然目にした帝国兵の少女――動ける程度には回復したので、炊事とか手伝ってもらってた――が、こう叫んだことだ。




「か、か……閣下―――!?」




「さて、まずは自己紹介からすべきだろうな……私の名は、アルベルト・ジョワユーズ。ゲルゼリア帝国において公爵位にある者だ……一応、帝国の現皇帝の三男坊である。同時に……帝国軍の参謀室に所属、そこにいるアーニャ・ロゥ・ドラールの上司でもある……こんなところかな」


『閣下』に名前を呼ばれ、帝国軍の少女……アーニャがびくっと反応した。


……マジでか。帝国の皇帝の三男坊……第三皇子ってことか?

しかも、軍の参謀室とか……えらい大物が出て来たな。


しかし、何だってそんな要人が、少数の護衛だけでここに来るんだ?



★名 前:マイク・ムーラン

 種 族:人間

 レベル:34

 攻撃力:89  防御力:64

 敏捷性:89  魔法力:47

 能 力:通常能力『腕力強化』

     通常能力『流水魔法適正』



護衛の1人の能力値である。その他のも似たり寄ったりだ。


最近、ぶっ飛んだ強さの魔物を見ることが多いので感覚がマヒしがちだが……このレベルや能力値は、普通の人間とか軍人の中ではかなり高い部類に入る。用心の護衛としても、まあ、兵卒としてなら通用するだろう。


まあ、僕らを相手にするとなると……不足どころじゃないんだけども。


率直に言えば……彼ら全員をここで殺そうと思えば、可能だ。それこそ、僕1人でも。

そういう余裕があるからこそ、こうして話し合いの場を設けているわけでもあるんだけど。ちなみに、何を話し合うのかは、目の前の公爵さんから聞く予定だ。これから。


その公爵さんだが……こちらを前にして、最初から表情を一向に崩すことなく、穏やかにほほえみを浮かべている。

堂々としているというか……こちらの敵意、警戒心を気にもしていないように見える。


こちらを舐めている……っていう感じにも見えないんだよなあ。いざとなったら部下たちに僕らの相手をさせる気でいる、っていう類の余裕じゃないように見える。


そして何より、この人自身の鑑定結果が……とんでもないのだ。



★名 前:アルベルト・ジョワユーズ

 種 族:人間(混血獣人・兎)

 レベル:71

 攻撃力:169  防御力:58

 敏捷性:370  魔法力:73

 能 力:通常能力『脚力・中』

     通常能力『軽技』

     通常能力『俊足』

     希少能力『毒物耐性』

     希少能力『超再生』

     希少能力『暗殺術』

     固有能力『神算鬼謀』

     固有能力『完全記憶能力』

     特殊能力『鑑定眼』

     特殊能力『地獄耳』

     特殊能力『千里眼』

     特殊能力『戦略魔法・智』



一見してわかる、その異質さ。コレ、護衛の人たちより強いだろ絶対。


能力値は、防御力や魔法力こそ、護衛たちと同程度だが……残る2つ、攻撃力と敏捷性が高い。完全に熟練レベルを通り越した位置に至っている。


ただ、それでも僕らよりは低いから対応は可能なんだけど……問題はスキルだ。

実に12個。派生や統合を考えなければ……僕らよりも多い。その上、ヤバそうなのやよくわからないのがいくつも混じっている。


間違いなく……只者じゃない。


どうも純粋な人間じゃないらしく、よく見ると……頭の横に、垂れた耳が見える。

ウサギの獣人……ウサギ……たしか、ロップイヤー種とかは、たれ耳だったな。


野郎のウサ耳に何も心動かされるようなことはないんだけども……さて、意識を、これから始まろうとしている話し合いに戻そうか。

一体、この人はここに、どういうつもりで、どういう話を持ち込んできたのかな……?


「そちらの代表者は……黒髪のお嬢さんということでよろしいのかな?」


と、アルベルト。それに答えるのは、ビーチェ。


「ええ、構いません。……ご用向きをお伺いしても?」


これについては、事前に話して決めてある。この集団の代表者を誰にするかってんで……話し合いの結果、ビーチェになった。主に消去法で。


部下枠に入る、非戦闘員、男衆、エルフの戦士たちをまず除外。

次に、魔物ってことで僕ら無機物トリオを除外。

レガートは、『私は2人についていく立場だ』って除外。


で、残ったのはレーネとビーチェだったんだけど……リーダーシップや戦術眼、駆け引きの上手さを持っているのはビーチェの方だってことで、こうなった。

レーネはどっちかっていうと、動く方が向いてるっていう指摘もあったし。


そんなわけで、この集団のリーダーであるビーチェが、アルベルトに相対している。


「まずは、礼を言わせてもらいたい。私の部下を保護し、今まで守ってくれて……感謝する」


そう言って、ペコリ、と頭を下げる。


その行為に、アルベルト以外全員が驚く。

当然だろう。皇族が、何のためらいもなく……平民に頭を下げたんだから。普通、権威やら何やらあるので、そんなことはしない……って聞いた。


元貴族であるビーチェや、そこに仕えていたレガートたちはそれをよく知っているので、特に驚いている様子。

あと、話題に上がった部下の少女……アーニャがパニック寸前って感じになっとる。


そんな視線を、またしても一切気にすることなく……アルベルトは頭を上げると、


「もしよければ、ここで彼女を引き取らせていただこうかと考えている。無論、相応の礼をさせてもらった上でな」


そう言われ、ビーチェはちらっとアーニャに視線をやると、それに気づいたアーニャが『で、できれば……』って感じの表情に。

素早く僕らと『念話』で話し合って、


「それについては構いませんよ? 彼女も、もうそろそろ傷も癒えてきている頃ですし……故郷に帰れるのなら、その方がいいでしょう」


アーニャには……特に、ばれたらまずいこととかは何も見せてないし、聞かせてない。

こないだの決意表明の時は……1人だけ、ちょっと一服盛って寝かせてあったし。鎮痛剤を兼ねて投与した睡眠薬(レーネ謹製)のおかげで、脱出中は終始寝っぱなしだったから、道中の戦いについてもほとんど覚えていないはず。


だから、不都合はない。むしろ荷物が減る分ありがたくすらある。


「それはありがたい! では……」


アーニャをアルベルトに引き渡し、アルベルトから『お礼』を受け取った。

片手で持てるくらいの大きさの袋で……中身は、宝石だった。鑑定の結果、何も特に罠とかそういうのはない、普通の宝石。売れば、結構な値段になるだろう。


アーニャは無事に『閣下アルベルト』のところに戻り、ぺこぺこと謝っていた。

そしてなんかこう……『気にするな、無事でよかった』的なことを声かけられていた。割と寛容な上司らしいな。よかったじゃん。


これで用事は終わりかな、と思っていたんだけど……


「さて……ところでどうだろう、ベアトリーチェ殿? ちょうど昼時でもあるし……ここはひとつ、親睦を深めるために、昼食の席を共にするというのはいかがかな?」


アルベルトから、そんな唐突な提案が。

思わず、といった感じで、怪訝そうな表情になるビーチェ。レーネやレガートも同じ感じ。


意図を測りかねる僕らに構わず、アルベルトは続ける。


「もちろん……まあ、食べるものはこちらで持たせていただこう。行軍用の粗末な糧食ではあるが、それなりにラインナップはそろっているゆえ、意外と楽しめるぞ?」


「……いえ、折角ですが遠慮いたします」


と、ビーチェ。


「お誘いは光栄ですが……私たちは私たちで、きちんと旅の間の糧食を持っていますので、お気遣いなく。それに……」


「それに?」


「……失礼を承知で申し上げますけれど……我々とあなた方は、本来、あまりこのように親し気に話すような関係ではないかと思うのですが?」


と、とげのある感じの答えを返すビーチェ。


けど、それも当然というか、正論である。何せ僕らは……帝国と王国の戦争によって、今までいた場所を奪われた集団なわけだし。

当然、帝国軍に属している彼もまた、敵である。


そう、暗に指摘したビーチェのセリフを受けて……アルベルトは、それまで浮かべていた笑みをわずかに崩し、少しだけ神妙そうな雰囲気をまとう。が、


「それは承知しているとも、仮にも当事者だからな。だが……だからこそ私は、あなた方と交流を深めたいと思っている」


「…………?」


「わけのわからんことを言う男だと思うだろう。それどころか、祖国に仇なす憎き敵国の手先だと思っておられるだろう……それでも、それをまげて私は話を聞いてもらいたい」


そう繰り返すアルベルト。


その返答に、少し不機嫌になりつつも……同時に、こいつは何を考えているのか、という疑念が僕らの頭をよぎっている。

それを、ポーカーフェイスなのであろう微笑から読み取ることは、できない。


……と、その時だった。



――ぴこーん!

『キークエストが発生しました』



と、アナウンス。おいおい、こんな時に…………ん?


頭の中に、あの電子音声じみた声が聞こえた、その瞬間……

アルベルトの目が……わずかに、見開かれたように見えた。


……ほんの一瞬のことで、次の瞬間には引っ込んでしまったけど……偶然、か? 今の。


「……我々を恨むのは筋にかなっていることだし、敵たる我々からの申し出など、聞くもおぞましいことかもしれない。だが、そこを押して頼みたい。願わくば……」


言いながら、アルベルトは……なぜか、空中に何かを掲げるように手をかざすと、次の瞬間……何もないところから、その手に何かを取り出した。


「「「……っ!!?」」」


恐らくは、空間収納系の能力でしまっていたのを取り出したのであろう、それが何かを認識して……僕らは、驚愕した。


「……願わくば、互いの目的のため……ほんの一時であってもいい、我らが……同じ方向を向くことができれば、と思っている」


それには、僕ら全員見覚えがあった。というか、昨日も、一昨日も見たばかりだ。

さらに、常日頃から使っているものでもある。間違えようはずがない。


何せ……つい数秒前にも、それの持つ効能である『天の声』を聞いたばかりだ。


こちらに表紙を向け、見せつけるようにアルベルトが持っているあれは、間違いなく……



(『黙示録』……! それも、僕のと同じ……銀の……!)



――ぴこーん!

『キークエスト『反逆の皇子と逆襲の少女たち』が発生しました』

『特殊クエスト『邂逅せし2つの黙示録』が発生しました』

『特殊クエスト『大戦への道標』が発生しました』



何、なんだ……!? 一体今、何が起こってる!?





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