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第64話 現況把握 黙示録



進化し、スキルの検証を終え……いつも通りに『箱庭セーフゾーン』を展開して野宿。

バリアだけは持続するように設定しつつ、見張りを男衆に任せて、僕ら無機物組も寝かせてもらうことになった。


……で、その就寝中に……


「ここに来るわけだ」


「おや、いらっしゃいませシャープさん。まあ、来ると思ってましたけど」


今日もまた、相変わらず軽い感じのほんの精霊……ミューズがお出迎え。

『黙示録』の中の精神世界である。


どうやら、僕が来るであろうことはわかっていたようだ。

まあ、ある意味当然だろう。僕がここに来たのは……まさに『黙示録』に起こった変化がその理由であり……彼女は、それに宿っている精霊なのだから。

この本に何が起こったか、知らないはずもない。


「そしておめでとうございます! 見事『黙示録』が進化しましたね!」


「そのことについて聞きに来たんだけどね……マジックアイテムって、進化するもんなの?」


「ええ、ごく一部ですが。使い手と一緒に成長して強くなる剣とか、使うごとに強力になっていく魔法書とかありますよ。まあ、そのどちらとも似て非なるものなんですけどねー、コレは」


言いながらミューズは、手元に『黙示録』を呼び出し、それを閉じたままで僕に見せてくる。


そこにある本は……今までの赤っぽい色の本ではなくなっていた。

この空間、背景丸ごと白いから若干わかりにくいけど……白っぽい装丁で、キラキラときらめいているように見える。まるで、そう……銀色。


この本の名前が『銀の黙示録』だから……まんまであるわけだ。


「以前にもちらっと言いましたけど……この『黙示録』は、使い手に合わせて成長します。記される困難なクエストをこなせばこなすほど、それによってダンジョンからもたらされる『力』を吸い上げて、それによって自分を強化する。そしてその一部を持ち主やその仲間にも注ぎ込むことで、より強くなるのを助け、より困難なクエストに挑戦する力を与える……って感じで」


「その『力』とやらが大量にたまると、進化するわけ?」


「その通りです。かなりの数、それも質の高いクエストこなしてましたからねー……『銅』が『銀』になるの、早かったなあ……っと、あれ、でも、その報酬をあんまり受け取ってないみたいですね? かなりたまってますよ?」


……ああ、ドタバタしてて忘れてたな。


クエストを達成したってことは、それに見合った報酬が発生しているってことになる。

あの、空中から突然物質が発生する不思議現象、ここんとこ起こしてなかったな。


「後で確認しといてくださいね? 結構なことになってるっぽいんで……っと、それじゃあ時間も限られてることですし、説明に移りますね? 主に『銀の黙示録』の使い方について」


☆☆☆


アイテム名『銀の黙示録』。


今までの姿だった『銅の黙示録』の1つ上のクラス。より困難で、しかしより豪華な報酬をもたらす『天啓試練オラクルクエスト』への挑戦が可能になる。

もちろん、今までと同じ『銅』の難易度のクエストも出るけど。


そして、これまで同様、ネタバレブックとしての性質もきちっと持っている上に……さらにできることが色々と増えているそうだ。


まず、踏破した区域の地図が見られるようになる。


これは、ただ単に通るだけでもその周辺の地理が自動的に記録され、さらに自動更新されていくというすぐれものだ。色々と条件を満たせば、その地域に関するもっと詳細な情報を見ることができたりするらしい。


さらに、なんと『魔物図鑑』なるものが見られるようになった。


読んで字のごとく、この図鑑は、魔物の種類を指定して、その情報を参照することができるらしい。こりゃまた便利なツールが解放されたな……有効活用するっきゃないだろう。

情報ってのは、武器であり宝だ。特に、未知の敵と戦うにあたって、その情報があるかないか……それだけで、状況は天と地ほども違ってきたりする。


さらに、自分たちのことを知る上でも、コレは役に立つ。

もうすでに、麒麟おじいちゃんに教えてもらった魔物情報が役に立たないところまできてるとこだし……これは、うん、マジでありがたい。


そして、今までもお世話になっていた各種能力が強化された。

経験値はさらにいっぱい入るようになり、ドロップアイテムも出やすくなり……その他もろもろ。レベルが上がり、進化するにしたがって、成長しづらくなっていく僕らには、かなりありがたい恩恵だと言える。強くてニューゲーム継続中。


で、最後に……これが一番大事だ。


実の所、僕が今回この精神世界に潜ってミューズに会った最大の目的がコレだったりする。

今後、みんなと一緒に……『目的』のために動いていくにあたっては、大きな武器になる……というか、必須と言ってもいいであろう能力だ。


「ミューズさ、前に……この世界は丸ごと全部が『ダンジョン』だから、エリアごとに攻略すれば、そこを自分の支配下にできる……ってなこと、言ってたよね?」


「おろ? 確かに言いましたけど……そこに興味がおありで?」


「うん、実は……」


かくかくしかじか。


「おおぉお……こ、これはまた、すんごいことを考えますね……」


僕が説明した、これからも僕たちの方針や、目指すところの最終目標を簡単に説明すると……ミューズ、軽く引いていた。まあ、無理もないけど。内容が内容だし……普通考え付かないし、考え付いてもやらないような、とんでもないものだから。


「そういうわけでさ……制圧したエリアについて色々融通が利くようになる、っていう話の、その機能を使いたいんだけど……できるかな? 色んな意味で。確認しときたいんだけど」


「いろんな意味、といいますと?」


「えっと、機能的にはもちろん……倫理的とか。ほら、自分で言っといて何だけど、やる内容が内容だし……」


「いやー、まあ、さすがにというか、確かに聞かされてびっくりはしましたけど……まあ、それもアリっていうか、仕方ないんじゃないですかねえ? だってほら、基本この世界は弱肉強食ですし……あなた方が主張する、『やられたらやり返す』っていうのだって、間違いじゃないですよ。ぶっ飛んで聞こえるのは、普通やろうと思ってもできないから、って部分もあるでしょうし」


「まあねー。こっちだって、何もよくわからんうちに巻き込まれたんだから……それをね、他人に迷惑がかかるとか、道徳上どうだからってんで、我慢して泣き寝入りしろって言われても、そんなつもりもうなくなっちゃってるしね」


「そうですね……まあ、やってることは完全に悪の組織がやりそうなそれではありますが……『黙示録』がもたらす権能の一部から、必然的に生じうる事象の一つなのも確かです。そこで何をなそうとも、我々の感知するところではない、か……」


何やらぶつぶつとつぶやいて、色々考えを巡らせているらしいミューズ。


しばらくそんな感じになっていたかと思うと、


「よし……わかりました。協力しましょう! それに必要な知識も開示いたします。どの道、『銀』に進化してできるようになった能力のいくつかに、おあつらえ向きのがありますからね……それに、シャープさんたちなら、その果てに何か致命的なアレをすることもないと信じます!」


「致命的なアレ……って、何?」


「まあ、よくあるこう……世界を滅ぼす、的な?」


「一気に話が壮大になったな……」


「壮大な物騒さですけどね。でも、別に的外れってわけではないですよ? あなた方がやろうとしていることのスケールは、とんでもない規模で世界をひっくり返そうとしているのには変わりないんですから」


それに、と続けるミューズ。


「それを成すのであれば……その先に、より激しい戦いの未来が待っていることだって考えられるんです。大国を1つ……じゃなかった、2つも落とすってのは、そういうことです」


「………………」


「シャープさんたちがそこに至るまでに通った経緯を、それを受けての心境を考えれば……皆さんの決心ももっともでしょう。私はそれを否定することはしません。ですがそこに至るには、とても大きな力が必要になりますし……しかしそれも、『黙示録コレ』をうまく使えば、もしかしたら手に入ってしまうかもしれない。だからこそ私は、力に溺れ、それを暴走させて、とんでもないことを起こさないように……祈るばかりです」


「……大丈夫だよ。僕ら、元々めんどくさいことなんて嫌いなんだから……そんな、物騒な上にいかにも疲れそうなことなんて、やるつもりないって。きちんと目標を達成したら……そこから先は、必要最小限をモットーにやっていくつもりだよ」


「だといいんですけどね……世の中、思い通りに物事が進むことなんて稀ですし、どうしても心配になりますよ」


「その時はその時、かな。まあ、身にかかる火の粉を振り払うくらいはするかも」


「……よし、暗い雰囲気になってても仕方ない! わかりました、私も腹をくくりましょう!」


ばしん! と、気合いを入れるように自分の両の頬を平手でたたくミューズ。

そして、引き締まった、しかし笑みも浮かんでいる器用な表情になって、


「乗り掛かった舟です、さっきも言いましたが全面的に協力します! 最初は、きちんと黙示録を起動してくれただけで御の字、これからささやかに活躍していってくれればいいなー、とか思ってた私ですが、まさかこんなビッグスケールなことをやろうとするご主人に恵まれるとは思ってませんでした……しかしこれも何かの縁! やったりましょうシャープさん、国家転覆!」


どうやらやる気になってくれたらしいミューズから、残る情報を引き出しつつ……制限時間いっぱいまで、その日は色々と話していた。


☆☆☆


で、翌朝。


夢の中――って言っていいんだろうかね? あの不思議空間――で、ミューズという名の本の精霊と話したこと、そこで明らかになったことを報告しつつ、

さらに、『黙示録こいつ』の機能についても説明しつつ、


新しく使えるようになった……『魔物図鑑』を試してみている。


まあ、内容は……予想通りとでもいうか、魔物の名前と、その特徴なんかが簡単に書かれている感じのものだった。


例えばそうだな……僕の進化系列、挙げてみようか。最初から。



人喰箱ミミック

主にダンジョンなどに生息する、宝箱に擬態した魔物。

無警戒に近づいてきた人間や動物などの獲物に噛みついて食い殺す。

攻撃力、防御力がかなり高く、不意打ちの一撃で命を落とすことも少なくない。

生存のための捕食を必要とするわけではないため、基本的に発生した場所から動かず、微動だにせずに獲物を待ち続ける。

倒すとため込んでいた財宝が手に入る、実入りのいい魔物でもある。



狩喰箱ハンターボックス

人喰箱ミミックの上位種族。人喰箱自体がそもそも進化することが少ない種族であるため、かなり珍しい魔物の1つであり、危険度の高いダンジョンなどで自然発生する。

高い攻防力に加え、見た目とは裏腹にかなり俊敏に動く難敵。

倒すとミミックよりも大量の財宝が手に入る。



変幻罠魔シェイプシフター

宝箱の姿をとった擬態型の魔物。戦闘能力が非常に高く、また知能もかなり高く狡猾。

ダンジョン内部において一か所に長期間とどまることはほぼなく、頻繁に移動し、擬態からの奇襲の他、能動的に動いたり、宝箱以外に擬態して襲い掛かることもある。

細かい習性や攻撃手段が個体によって違うため、共通して有効な攻略法というものに乏しい。



王宝牙棺キングギフト

主に霊廟型のダンジョンのボスモンスターとして出現する魔物。強力なマジックアイテムを封印した宝箱や、高名な魔術師を祀った棺などが、長い時を経て変質したものとされる。

巨大な宝箱型で、ドラゴン族に匹敵する攻撃力と鉄壁の防御力を誇る。擬態型ではあるが、その大きさと好戦的かつ能動的な性質ゆえに、奇襲から戦闘に突入することは少ない。

自身の戦闘能力もさることながら、配下・眷属の魔法生物系の魔物を従えて戦闘を行う場合が多い他、武器を操る能力や非常に高い知能を持ち、個体によっては魔法を使うこともある。

倒すことができれば、一生遊んで暮らせるほどの財宝を得ることができるとされる。



なるほど、詳細な解説だな。

……狩る側が狩られる側を、って感じの視点で書かれてるのは……まあ、仕方ないものと思おう。


自分が倒された場合の報酬について書かれてるのを見るのはちと微妙な気分になったものの、こういう風に魔物の情報を見ることができるってのはありがたい。

今後、積極的に活用させてもらおう。


ただコレ、実際に見たことがある相手でなければ、『自分よりも位階ランクが下の魔物の情報しか見られない』っていう制約があるようだ。

だから、もし僕がさらに今後進化するようなことがあれば何になるか……っていうのを知るのは不可能だった。残念。


ちなみに、今の僕の『位階』は『4』である。

位階っていうのは、その名の通り、魔物の種族としてのランクの高さを表したもので……1から5まであるとされている。


例えば、僕の最初の種族である『人喰箱ミミック』は位階1だ。

で、進化した後の『狩喰箱ハンターボックス』は2、『変幻罠魔シェイプシフター』は3である。進化するごとに位階は上がるわけだ。


まあ、最初から高い位階で生まれる魔物もいるそうだけど。


で、僕の位階が今『4』であるということは……次が僕の最後の進化ってことか。


……ただ、どうもそれを突破して強くなる例もあるらしい。

6番目の位階……かつて、魔王とかそれに等しいレベルの存在がそうだったらしいけど……ちょっと興味あるな。僕もそこまで進化できたりしないもんかね?


……まあいいや、今後考えよう。


それはそうと……せっかくなので、フォルテとリィラが進化した種族についても、ついでに調べてみた。



機械フルメタルドラゴン

全身が金属でできており、体の各部に戦闘用の兵装が仕込まれている龍型の魔法生物。

古代文明によって製造されたものが稀に遺跡で発見される極めて希少な存在。

強靭な金属の装甲に覆われているため、物理攻撃も魔法攻撃も効きづらい。

設計や武装等は個体によって異なるが、一様に高い戦闘能力を有している。個体によっては遠距離からの魔法攻撃を行ったり、眷属を使役したり、飛翔することも可能。



武装アーマード機傀モービル

仮初の命と魂を宿し、魔力によって動く人型の魔法生物。

古代文明によって製造されたものが稀に遺跡で発見される希少な存在。

魔法金属等による強固な装甲と、体の各部に搭載された様々な武装を持つ。

攻撃力、防御力、機動力のいずれにも優れている上、知能も高く、配下の統率すらこなす。

兵装は個体や作成した文明によって異なり、場合によっては戦闘能力にも大きな差が出る。



とまあ、こんな感じだ。


ちなみに『シェイアーガー』は載っていなかった。


まあ……鑑定結果が『NO DATA』だったしね……仕方ないか。


そして、夢の中でミューズに指摘された、クエストの報酬だけども……



≪挑戦可能クエスト一覧≫


(一部略)

・『帝国軍の夜襲』……CLEAR!(突破・主力撃破)

  報酬:金貨8枚 食料(内訳省略) 資材(内訳省略)

・『王都エイルヴェルを防衛せよ!』……FAILED

・『スラムの民達を助け出せ!』……FAILED

・『帝国軍を撃退せよ!』……CLEAR!

  報酬:金貨6枚 剣40本 鎧40着 盾40個

・『スラムを脱出せよ!』……CLEAR!

  報酬:小金貨7枚 水6樽 黒パン10斤 木製の車輪1ダース

・『帝国軍主力・魔物部隊を倒せ!』……CLEAR!

  報酬:金貨3枚 魔鉄鉱のインゴット20㎏

     黒曜石13個 銀のインゴット8㎏

・『帝国軍の襲撃部隊を殲滅せよ!』……FAILED

・『王都エイルヴェルへ進撃せよ!』……FAILED

・『王都エイルヴェルを制圧せよ!』……FAILED

・『勇者・長谷川裕を倒せ!』……CLEAR!

  報酬:金貨15枚 魔力結晶 英霊の魂魄 聖灰

     亜聖剣ジハード 祝福のマント・レプリカ

・『グレーターデーモンを倒せ!』……CLEAR!

  報酬:金貨9枚 素材各種 魔力結晶

・『魔将・バルバトスを倒せ!』……CLEAR!

  報酬:金貨15枚 素材各種 魔力結晶 呪炎晶石

     魔剣タールネイン 魔炎の火種 怨念血石



うん、大量大量。


けど……なんかよくわからんものも多いな。後で調べよう。





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