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4・女のプライド

マズイ。

非常にマズイ。

トイレに行きたい。


この部屋にはトレイはない。当然ながら部屋の外におそらくある。

さっきドアを少し開けてしまっただけで心臓が飛び出しそうになったあのドアを、

よりにもよって開けてその先へトイレを探しに行かねばならないなんて。

しかも建物的には窓から見る限り二階建ての家。

二階にトイレがなかったら一階まで降りて探すわけで、住人なり誰かと出会う確率は物凄く高い。

膀胱はなかなかどうしてギリギリだ。

今出会ったら失神どころか失禁するんじゃなかろうか。


・・・・・・・

女としてそれだけは避けたい。

というか、今までよくしなかったよね。

よく漫画とかで恐怖で失禁とか定番な気がするけど・・・なんだろう、何かそれとは違うのかな。


いや、そろそろ考えるのはよそう。

ただでさえ異世界?に来て早々何度も白目むいてるんだ。

もう女子力とか蚊の鼻毛くらいに落ちてるに違いない。

蚊に鼻毛があるのか知らないけど。


「よし、行くか!」


現実逃避していたらいよいよトイレが近くなったので、腹をくくって部屋のドアを開けた。

左右を確認。誰もいない。

足音を立てないよう忍び足で部屋を出ながらトイレのようなドアがないか周囲を見回す。

二階には短い間隔で並んだドアが3つ、結構な間隔を開けてドアが1つあった。

一番狭そうな3つ並んだドアの真ん中が怪しい。


結論から言って、3つ並んだドアの中にトイレはなかった。

残るはあの中が広そうなドアだけだけど、なんか音がするし、トイレとは考えにくいので却下。

となると、下に降りねばならない。

「神様仏様お願いしますかなり限界。」

手を合わせつつありったけ何かに願いつつ階段を降りる。


階段はくの字になっていて、慎重に左右を見回しながら降りていくと、降りてすぐの左手にドアがあった。

ここだけ離れているし、もしやと思ってドアに聞き耳を立て、音がしないことを確認して素早くドアを少しだけ開ける。


ビンゴオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!


ガッツポーズをしながら素早くトイレに入ると、フックの鍵が閉めれる事を確認して鍵を閉めた。

トイレ行くだけで大冒険だな、これ。なんてカッコ悪いんだろう。

でもいいんだ、女としてのプライドは保てたから。


トイレ文化が異世界にもあってほっとしたのもあるけど、

ほら、人ってトイレをした後ってなんか気が抜けない?

トイレから出た後、習慣で手を洗ってタオルで拭いて普通にドアを開けて出てしまって気付いた。

ここが異世界で見知らぬ家だった事に。


ドアを開けたら、目の前にエルフもどきさんが居た。


バッチリ目があってしまい、私はまた意識がフェードアウトしていった。

必死に瞼を閉じようとしたけど果たして閉じれたのかは定かではない。

でもいいんだ、女としてのプライドは保てたはずだから・・・。









**********


次に目が覚めた時、外はもう真っ暗だった。

さずがに1日中寝ていた(?)からか、朝までは眠れなかったらしい。

部屋の明かりも消えている。

辺りはしんと静まり返っていて、窓の外から虫の声のような音が聞こえた。

この世界にも虫が居るんだなーなんて思いながら、私はこっそり部屋を出た。

トイレに行った時よりも緊張は少ない。

だって深夜だもの、寝てるよね?

物音しないし。


今のうちにここを出ようと思い立って部屋を出たものの、

一階に降りて玄関らしきドアの前に来た頃には、外に出るか迷っていた。


エルフもどきさん・・・いや、いい加減この呼び方も酷いとは思うけどさ、

ともかくも、彼には助けてもらってるのにとは思うのだけど、それでも怖い。

もう昨日今日だけで何度気絶したか。気絶する直前、毎回恐怖を感じている。

だから、とにかくこの家を出て彼から離れたかった。

頭では助けてもらった恩人と思っていても、

度重なる恐怖で身体はすっかり、彼を「危険」と判断していた。

でも、はたと思う。

彼だけが赤眼なのか?と。

今日の昼間、他の人間も来ていた時があった。あのときどうだった?

全員、赤眼だったよね?

全員に恐怖したよね?

つまり、最悪、ここを出ても街の人はみんな赤い眼なのかもしれない。

もしそうだったら、そして赤い眼の人全てに気絶するほどの恐怖心を抱いたら・・・?


そこまで考えてしまい、ドアの外も恐ろしい気がして迷ってしまった。

あと、靴が見あたらないのもある。

裸足で外に出たら足が痛いよなぁと。

来た時は靴を履いていたと思うんだけど、玄関には見あたらない。

ん?そういや、この家って靴を脱いで上がるんだね。

ファンタジーといえば欧米風で靴のまま家に上がるイメージだったよ。

などとどうでもいい事を考えながら、一旦部屋まで戻ろうと振り返ったら彼がいた。


「ぎゃああああああああああ!!!!!!!」


ごめんなさいもうしませんゆるしてみのがしてええええええ?!?!?

怖い怖い怖い怖い怖い怖い

目が光ってる。赤眼が光ってるよ?!

こわいよおおおおおおおおおお!!!



その後の事はよく覚えていない。

確かそのまま裸足で玄関から飛び出して、山っぽい木の密集地に突っ込んでいったのは覚えてる。

それで何か踏んで物凄く痛くて走れなくてしゃがみ込んだ時に、

『おい!』ってエルフもどきさんに肩掴まれて振り向かされて眼を合わせさせられて、そこまでかな。

というか、そこでまた気絶したのだろう。


目が覚めて一番に思った。

これ絶対、あの眼に何かある。

エルフもどきさんも、いい加減眼を合わせようとするのやめてくれないかな。

そのせいだって分かんないのかな。

八つ当たりなのは分かっているけど、目を合わせさせられると私にはどうにもできないのだ。

あちらさんに配慮して欲しいと思ってしまう。


あの眼、思い出すだけで身震いするほど怖くなる。

できれば二度と会いたくないくらい怖い。

特に夜、眼が光ってたのが最高潮に怖い。

ホラー系ゲームに出てくるじゃん目が赤く光ってる怖いやつ。あんな感じ。

まぁそんなの関係なく怖いんだけど、

不思議なのは、頭では怖くないって事。

怖いと感じている時間が短いのもあるかもしれない。

身体は洞穴に顔突っ込んでガタガタ震えてるくらい怖がってるのに、

頭ではなんで怖いのかいまだに分からない。

おそらくカギはあの眼だろう。


さてどうするか。

どうにもならない。

何が何でも目を極力合わせないようにするしかない。

じゃなきゃいつまでたってもベッドから出られない。


あと気のせいかもしれないけど、

気絶してから目が覚めるまでの間隔が狭くなってきてるような?

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