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赤き日  作者: 溶接作業
一章

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戦の展望

「王国につく話に戻るけど、これからどうやって戦うのさ?」

「まず、初っ端から前線で戦うのはやめる」とジョン。

「地位の高い騎士とかは初っ端から突っ込んでくるのにか?」とザザン。


 ジョンはザザンの言葉に反応し、目で「早まるな」と静かに訴えかけてきた。


「今のところ、魔法は開戦してすぐ使われるからだ」

「味方と魔法使いを先に戦わせて、様子を見るってことか?」とザザン。彼は「…なんか、少し狡いな…」と言った。

「そうも言ってられんだろ? 今のところ打開策は見つかってないんだからよ」


 剣十字が重たく感じる。勇敢に戦わない作戦を彼は好まない。


 釈然としない思いが残った。しかし、ジョンの言葉には理があった。無理やり納得するしかない。


「魔法に弱点ってあるのかな?」とオキタル

「あったとしても、戦うとなったら死闘だろうな」とジョンは苦笑した。


 寒気を感じる。首が地面に落ちる音が耳にこびりついて離れない。

 音をかき消すように大きな声で「遠距離で戦うのはどうなんだ?」


「近づきたくないのは分かるが、弓が効果的だとは思えないな。なにせアイツら、頑丈な鎧を身にまとって歩兵に紛れてるからな」


 ジョンはため息をつくと続けた。


「結局俺たちはいつも通り、近づいて殺すしかないのさ」


 人の首を抵抗もなく切り落とすような攻撃を掻い潜る自信は彼にはない。


(命がいくつあっても足りないな…)


 ふと、オキタルの方を見ると、腕を組み考え込んでいる様子だ。


「何をそんなに考え込んでいるんだ?」

「…え? いや、なんでもないよ」


 視線が左右に揺れ、まるで、逃げ場を探しているようだ。


「やけに焦ってるな。 なんか悪いことでもしたのか?」

「ち、違うよ! 次の戦をどう戦い抜こうか考えてたんだ!」

「ん? 戦い抜くってのは、敵に見つからないようにってことか?」


 答え方に違和感を感じて思わず聞いてしまった。

 彼の目はさらに動く。まさに泳いでいるようだ。

 

 すると、ジョンが低い声を出した。


「…まさかお前敵兵と戦う気か?」

「そんな訳ないよ!」


 するとジョンはため息を吐き出しながらオキタルを見、呆れたように静かに言葉をこぼした


「まぁ、俺はとやかく言わないけどな? でもニッケランはどう思うんだろうなぁ…?」


 オキタルは口ごもった。まるで無理やり口を塞がれたようだ。


「俺たちは兵士じゃない。追いたいものを追うのが役目だ。ニッケランに見つかったらそう説明すればいい」とザザン。このままではあまりにもオキタルが可哀そうだ。


「さすがザザン! 分かってる!」


 すると優しい表情で笑っていたジョンが「となると、武器の手入れをしないとな!」と言った。


 するとジョンは勢いよく立ち上がり、武器を立てかけてあるところに歩き始めた。

 

 彼はレイピア風の短剣を腰に掛け、ダガー二本と傷だらけの剣と盾を抱えて戻り、座っていた場所の前にそれらをドサッと置いた。

 

 オキタルは笑顔でジョンの方を向く。


「ありがとう」

「ついでだよ、ついで」


 ザザンはそれを横目に使いこまれた剣を持ち上げた。


「ありがとうな、リーダー。 しかし、俺の剣…もうダメかもなぁ…」

「たしかに傷とか凹みとかあるけど、別に切る剣じゃないんでしょ? それ」とオキタル。

「なんでこれが斬撃用の武器じゃないって知ってるんだよ」

「なぜってお前。よく自慢してるじゃねぇか、それ」とジョン。

「…そうかぁ?」


 オキタルもつられて笑い始めた。

 ムズムズとする感覚がするがそれを無視して続ける。


「なんとなく、覚えているような気がするが…まぁいい。」


 ザザンは勢いのまま話を続ける。

「こいつは、グラディウスって言う武器でな。もちろん斬撃にも使えるがメインは…」

「まった!」

 両の手を突き出したオキタルは続ける。

「斬撃も使えて刺突にも使える万能な武器って言いたいんでしょ?」

「これも話したことあったか?」


 その言葉にオキタルもジョンも深くうなずいた。


「……でだ、ここまでボロボロだと、次の戦で折れちまいそうだな」

「新しい剣を軍からもらったらどうだ?」とジョン。


 ザザンは苦虫を噛んだような顔をした。


「うーん。軍の奴ら、俺が盾持ちだってのにロングソードとか渡してくるからな。」

「ロングソードってニッケランと同じやつ?」とオキタル。

「あんな長いの片手で振り回せると思うかぁ?」


 オキタルもジョンも首を横に振っていた。


「次の戦で似た剣を持ってる奴から奪うかぁ…?」


 ジョンが訝しそうに聞いてきた。


「敵の剣って…手になじむのか?」

「まぁ、慣れってやつだ」


 ザザンは再び手元に目線を落すと、剣先と剣元を持ち上げ、剣元から刀身、剣先を舐めるように見る。


「思ってたよりひどいなぁこりゃ。」


 胸が締め付けられる感覚がした。兵士時代から戦で握り続けたこれは、相棒と言ってもいいほどだ。

 ザザンの顔はみるみる影を落としていく。


「その剣、愛着あるんだろ? 実は王国軍のお抱え鍛冶師知ってんだよ」とジョン。


 言葉に顔の影が薄れる。しかし、「お抱え」というフレーズが頭を何度もよぎり、顔に落ちた影の濃さが元に戻ってしまった。


 ザザンは唇を尖らせながら「お抱えって…高いんだろ?」

「まぁ普通に考えるとな?」


 なぜかジョンはニヤついている。やけに悪い顔だ。


「なにか意味ありげな言い方だな?」

「その鍛冶師てのが訳ありなんだよ」

「どういう意味だよ?」


 オキタルも不思議そうに耳を傾けている。


「それは言えないな。言わない約束なんだ」

「安くなるんだったらなんでもいいよ」


 ザザンは先ほどとは打って変わって明らかに気分が良くなっている。

 

 彼の剣の身の部分をなぞる指の動きが先ほどよりも軽やかになっていた。


最後までお付き合いいただき感謝いたします。

評価やコメントをいただけると、物語をより良くしていく大きなヒントになります。

ぜひ皆さまの声をお聞かせください!

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