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赤き日  作者: 溶接作業
二章

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作戦の概要

「モヤト。今回の…Cって言えばいいのかな? 簡単か?」とニッケラン。

「一番難しいかもしれない」


 この家のどこが難しいのだろうか。Cは一日中起きているとでも言うのか。不死身とでも言うのか。


「Cの家に拳狼様も住んでるんだ…」


 一気にこの家の外観が変ったように感じる。先ほどまではごく一般的な家に見えた外観が、拳狼という言葉を聞いた途端、難攻不落の城に変わってしまった。


 拳狼を実際に見た訳ではない。噂は脚色されるものだとしても、その内容は異様な者ばかり。もしかすると、下手な魔操志よりも圧倒的に強い相手かもしれない。


 そう考えると、この家は難攻不落の城に様変わりしてしまうのだ。


「Cを殺すこと自体は簡単か?」とザザン。

「どうだろう…拳狼様がどの部屋で寝ているのか、さっぱりだが…C自体は大したことは無い。しかし、物音で拳狼様が起きでもすれば、どうなる事やら…」

「仮にCを殺せたとしても、いきなり拳狼と一騎打ちか…生き残れるか怪しいな」とニッケラン。


 C単独で行動する時間はないだろうか。拳狼と一騎討だけは避けたいどころだ。

 ニッケランがCについて質問をする。


「Cが一人でいる時間帯は?」

「夜中に外出することは無いだろう。何時命を狙われるのか分からない状況だしな」

「そもそも、なんで拳狼と一緒に住んでるんだ? 拳狼は嫌じゃないのか?」とザザン。

「うーん…拳狼様は何を考えて居るのかいまいち……少なくともCの手下とかそんなんじゃないのは確かだ」


 拳狼にバレないように家に侵入し、Cを始末する。そして、バレないように家から出る。こんな作戦しか立てられなさそうだ。モヤトの顔にも苦笑いが浮かんでおり、これと言った作戦は無いようだった。


「ちなみに、BとCの家の扉はどう開けるの?」とオキタル。


 彼の言う通り、その点について失念していた。大きく音を立てるわけにもいかないので、扉を蹴り破るなんてのはもってのほかだ。


「Bに関しては、火事を起こすんだ。騒音が鳴っても分かりゃしねぇさ」モヤトはCの家の方を向き「Cに関しては扉は空きっぱなしだから問題ねぇ」とも言った。

「拳狼か?」とザザン。

「そうだ。彼に勝てる想像が出来る奴はこの町には居ないからな。最大の難所さ」


 最早ぶっつけ本番しかないようだ。ニッケランたちは家の外観を確認すると、そそくさと拠点へと戻っていった。戻るころにはすっかり夜の帳がおり、星空がニッケランたちを見下ろしている。


 ニッケランは星を眺めながら、言葉を発する。


「細かな調整に入らないとな。あの鍵の爺は二日って言ってたがそれは今日から二日か?」

「そうだ」とモヤト。

「じゃぁ、明後日の夜に決行か」とザザン。彼は静かにうなずいた。


「持ち場を決めないとね」とオキタル。すると、モヤトはすでに作戦の詳細を考えついていたのか、すぐに語りだした。


「番兵とBについては俺に任せてくれ。仲間を募るのも俺だし、その方が作戦も円滑に進むだろ?」

 ニッケランたちは同意した。家を燃やす仲間も番兵を救う仲間もどちらともモヤトが集める者たちで構成されている。そんな彼らと円滑に作戦を進めるにはモヤトが適任だ。


「でAだが…オキタルはどうだ?」とモヤト。


「個人的に適任は僕だと思うね。隠密には長けてるし」とオキタルが言う。しかし、ニッケランは心配でならない。彼の言い分は正しいが、実戦経験の少なさが彼の理論の土台を揺さぶっている。


 しかし、この作戦ではオキタル以外、適任な者はいなかった。


「――あぁ。俺もオキタルが適任だと思うね」


 ニッケランが同意するとは思っていなかったのだろう。オキタルは驚いた顔を一瞬見せたが、それ以上に嬉しい表情を浮かべた。


 ザザンもニッケランの表情を窺がっている。まさか、オキタルに単独行動させるとは思っても居なかったようだ。しかし、そんなザザンも「同意だ」と言い、作戦の大まかな全容は決定した。


 A暗殺にはオキタル・番兵が参加。余裕があればモヤトも参加するようだ。

 Bの暗殺にはモヤトとその仲間たち。円滑に燃料を運べるか、そして警備兵に悟られないかがカギだ。

 C暗殺にはニッケラン・ザザンが担当することになる。実践豊富なことと、この中で一番武闘派だからであった。


 次に細かな微調整に入ってゆく。


「殺す順番とかあるのか?」とザザン。モヤト素早く「一つだけなら」と反応する。彼は続ける。

「Bは真っ先に殺したいところだね。A暗殺作戦と深く関わっているからな」

「AとCに勘ぐられるとまずいからか?」


 ニッケランの質問に彼は大きく頷いた。


「まぁ、作戦決行は明後日だが、燃料を運び出すことに関しては明日の夜から進める予定だ」

「そうか…俺たちに出来ることはあるか? モヤト」とザザン。


 彼は少しの間考え込み、何度も唸った。そして、とうとう作戦が完成する。


「そうだな…オキタルは鍵を受け取ってくれ、ついでに頼めたらで良いんだが…住民の誰かに反乱軍への伝達を頼みたい」

「え? 住民に? なにを?」


 ニッケランも同じことを思っていた。反乱軍を巻き込むとは思っても居なかった。何より、反乱軍を巻き込んでしまえば、町全体に今回の作戦の事がばれてしまうのではないだろうか。


「Bを殺す際に町を燃やすだろ? それを合図に町を包囲してくれと伝えてほしいんだ」

「包囲?」とザザンが言った。彼はザザンに「そうだ」と言う。


 作戦に参加させるわけでも、町に紛れ込ませるわけでもない包囲と言う作戦。この作戦になんの意味があるのだろうか。ニッケランは深く考え込む。


「――他の町への伝達の阻止か!」


 彼の発言にモヤトは笑みを浮かべた。どうやら彼の予想は的中したようだ。


 町を奪還された、もしくは、奪還されるかもしれないと知れば、魔操志派の兵士たちが駆けつけてくるかもしれない。そうなると勝率は薄くなってしまう。


 それを阻止するための包囲と言う訳だ。


「俺たちにはないのか?」とザザン。

「武器の手入れだな。念入りに頼む」


 何もすることがないと知り、少し焦るような気持ちが溢れたが、拳狼を討つため集中する時間を得たと思えば落ち着いた。


 するとモヤトが「そろそろ寝よう」と言い、彼のテントから三人分の獣の皮で作られた寝具を一式取り出した。


「なんで、三人分も?」とニッケラン。

「予備だよ。戦は何があるか分からないからな」


 彼はニッケランたちに寝具を渡すと「さっさと寝て英気を養ってくれ」と言い、テントの中に入って行った。


 彼の厚意に甘え、三人は地面に寝具を広げた。羊の皮で作られた一般的な寝具だ。地面に雑魚寝すると思っていた彼らには嬉しい誤算だった。


 ニッケランは体を寝具に滑りこませると、星空を眺めながら、作戦を脳内で再現する。


 Cの家に侵入し、拳狼を起こさぬよう始末する。そしてあわよくば拳狼も寝込みを襲いたいところだ。

 まるで実戦のようなレベルの想像。手には敵を突き刺すリアルな感触が伝わる。


(力に屈してたまるか。負けてたまるか。しぶとく生き残ってやる)


 いつもの言葉を心で唱える。そしてニッケランは目を閉じた。絶対に作戦を成功させようと意気込みながら。


最後までお付き合いいただき感謝いたします。

評価やコメントをいただけると、物語をより良くしていく大きなヒントになります。

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