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赤き日  作者: 溶接作業
二章

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B

 モヤトの言葉にオキタルが疑問を漏らす。


「なんで、難しいの? 寝てるところを刺せば…」

「結局はそこに行きつくんだが、あの家の構造が面倒なんだ」


 ニッケランは彼の話を聞き、家の外観を思い出す。

 確かに、堅牢な面持ちで侵入することに関しては難しそうだ。しかし、入ってしまえば、対して他の家と変わらないような気がする。


 彼は続ける。


「床がな、異常に鳴るんだ」

「鳴る?」とニッケラン。


「あぁ。歩くたびに木がきしむ嫌な音が響くんだ」

「なんでそんなこと知ってんだ?」とザザン。


「この町に来た時に一度だけ入ったことがあるんだ。価値のあるものを全部あそこに集めるためにな」

「それは魔操志の指示か?」とニッケラン。


「いや、奴が指示したことだ。町の住人が逃げられないように財産を確保するって名目だったが、実際は奴が欲しがっただけだろうな」


 モヤトは続ける。


「でだ。床の音で奴に侵入したことがバレちまう。これが厄介なんだ。」

「なんで床がそんなに鳴るの?」とオキタル。

「あの家は、この町の金庫みたいなもんだからな。本来は家の中に兵士が数人住んでて、町の遺産を守ってるのさ。泥棒が侵入したら音で分かるだろ? そのためさ」


 オキタルが適任だと思っていたが、彼でも難しそうな問題だ。何か解決策はないのだろうか。


「音を鳴らさないように進むことは可能なのか?」


 ニッケランの質問に彼は唸った。何か心当たりがあるようだ。


「実は一人だけ心当たりがあるんだが…気乗りしない作戦になっちまう」

「まだ、実行に移すわけじゃない。話すだけなら問題ないだろ?」とザザン。


「あの家を守っていた兵士を知ってるんだ」

「その兵士と今回の問題がどう関係してくるんだよ?」とニッケラン。


「あの家を守ってた兵士たちは、夜は交代で見張ってたわけだが、家の中を歩き回って、床を鳴らしまくったら意味がないだろ? 泥棒が侵入したのか侵入していないのか判断できなくなるし」と彼は言った。

「で、彼ら兵士はどうしてたのかと言うと、鳴らない板の場所を全部把握して、その上だけを歩くようにしていたわけだ」


 三人は顔を見合わせた。全員が何とも言えない、不満な表情を浮かべている。

 あの家に侵入し、奴を殺すことはこの中の誰一人出来なさそうだ。そうなると、彼の言っていた元番兵を仲間に迎え入れるべきだろう。


 そう思うと同時に、ニッケランは質問を飛ばす。


「番兵は今どこに?」


 モヤトが嫌な顔を見せた。気乗りしない理由はそこにありそうだ。


「仲間に迎え入れることに関しては簡単だと思うんだが…彼が居る場所が問題なんだよな…」

「その場所って?」とオキタル。

「あっちの方に、牢屋がある」と彼が指を指した方を向くが、壁に囲まれているので何もわからない。


 彼は続ける。

「奴にとっても番兵の彼は厄介な存在だからな。牢屋に閉じ込めて、誰にも協力できないようにしてるのさ」

「じゃぁ、なんで奴は殺さなかったんだ? 邪魔なら消してしまうのが最適解だろ?」とザザン。

「その通りだが、時期が悪かったのさ」


「時期? あぁ、あの反乱がおこったていう」とニッケラン。


 彼はうなずき「あの時は奴も肝が冷えただろうな。だが、今回はもっと肝が冷えてるかもしれない」と言った。


「と言うと?」とザザン。

「魔操志様が居なくなったからな。奴の後ろ盾はもういない」

「となると、反乱が起こる可能性が高まるな」


 ニッケランの質問に彼は「そうだ」と言った。


 つまり、奴にとって今は暗殺される可能性が一番高い時期で、奴にとっては一番邪魔者を消したい時期

なのだ。


「つまり、その番兵が殺される可能性が高いと?」とザザン。

「その通りだ」


 番兵が殺されてはまずい。作戦が頓挫してしまうのは目に見えていた。

 ニッケランは焦る気持ちと共に質問を飛ばす。


「その番兵はそもそも、どんな理由で捕まったんだ?」

「Aの私物を盗んだって理由だ。まあ、十中八九嘘だろうけどな」


 奴は余程、番兵を警戒しているようだ。番兵を救い出してしまえば、事はとんとん拍子に進むだろう。

 しかし、番兵を救い出すまでの過程がとんとん拍子には進まなそうだ。


 まず一つ目の問題として、番兵を救い出した時点で、こちらが反乱を起こそうとしていることがばれてしまうこと。二つ目に、そもそも牢屋を突破できるのかと言うこと。そして最後に、番兵を救い出したとしても、そもそも協力してくれるのかどうかわからないこと。


 この三つをクリアしない限り、この作戦は失敗に終わってしまう。

 そう考えると、番兵を救い出す作戦はかなり念入りに準備しないといけないとニッケランは予感した。


「番兵を救い出す作戦はあるのか?」


 ニッケランはすかさず質問する。一つでも失敗すれば、すべての計画が狂ってしまうような、繊細な作戦だ。気になる事があれば、すべて質問すべきだろう。


「あるにはある。だが、かなりリスキーだぞ?」とモヤト。

「とりあえず聞こう」


 ニッケランの返答にうなずくと、彼は語りだす。


「その名も、ごり押し作戦だ」

「ごり押し作戦?」とオキタル。

「あぁ、そうさ。奴を襲撃する日、同時に番兵も救い出す作戦だ」


 冗談じゃないとニッケランは思った。

 ターゲットは三人。バヒだけでも、かなり難しいというのに、同時に番兵まで救い出さなければならないとは、成功するようには感じなかった。


 しかし、まだ作戦の全容が見えていない以上、口出しするのは違うだろう。ニッケランは話を聞き続ける。


「今のところ、反乱を本格的に起こそうと思っている連中は俺たちだけだ。だがな? この町にいる兵士全員が不満を持って従軍してるんだ。実際、反乱を起こそうか迷ってる連中も山ほどいる。そういう奴らを利用しようと思てるんだ」


「どうやって?」とザザン。

「この町を奪還するには今は最高のタイミングだ。そうだろ?」


 三人はうなずいた。彼は続ける。

「俺たちが練ってる作戦は、かなり緻密な作戦なんだ。前回の勢い任せの反乱とは大違い。そう考えると賛同する連中はかなり多くなるはずだ」と彼は自信満々に言う。そして「ターゲット三人の暗殺作戦を立てられたら、俺は番兵を救出するメンバーを募る予定だ。もちろん、信用にたるメンバーだ。どうだ? この作戦、案外いいだろ?」と言った。


 ニッケランは彼の作戦を脳内で再現する。


 作戦が順序どおり進めば確かに、残るは拳狼のみになり、ニッケランたちの土俵に持ち込むことが出来る。


 しかし、強引すぎるように感じる。たとえ、彼の言う信用にたる仲間が優秀だとしても、不安要素が多

すぎて作戦を推そうとは思えない。


「その仲間てのは何人ぐらい集まりそうなんだ?」


 ニッケランの質問に彼は考え始めた。そして、手で人数を数え始める。


「うーんと…最低でも六人は参加してくれるだろう」

「六人か…その牢屋から番兵を救い出すには十分な人数なのか?」とニッケラン。

「あぁ。十分だ。牢屋って言ってもこんな小規模な町のなんてチンケなもんよ」


 そう言うと、彼は立ち上がり「見に行こう。別の目標もちょうどそっち側にいるしな」と言った。


 ニッケランたちも立ち上がり、彼の後ろをついてゆく。


 目的地までの道中、ニッケランは質問を飛ばず。


「その番兵は殺されるのか? そろそろ」

「多分な。罪状が罪状だし、奴が殺そうと思えば殺せるような状態だ。明日に処刑されてもおかしくない」


「なら、早くしないとな」


 ニッケランの言葉に彼はうなずいた。心なしか目的地までの歩調も速いように感じた。



 ――「ここだ」という彼の声に反応し、全員がモヤトの目線の先を見た。


 他の家と同じような見た目の家だが、規模が小さく、最低限の作りになていた。


 入り口には二人の門番が立っている。しかし、入り口に扉は無く、正面から簡単に中を覗けるような作りになているようだ。


「あれが番兵?」とザザン。


 ニッケランは目を凝らし、建物の中を窺がう。鉄格子の向こう側に力なく地面に座り込んでいる男が見えた。ろくな生活を送れていないようで、髭は無造作に伸び切り、目には絶望が浮かんでいるように感じた。


 次に建物の様子を窺がおうと、人ごみに紛れながら、外観を物色する。


 正面以外に入り口は無く、牢屋側に小さな鉄格子で作られた窓があるのみだ。番兵を助け出そうとするならば、正面しかなさそうだ。


 しかし、それ以外は何もなく、確かにお粗末な作りの牢屋だった。


「よし、ここは十分だろう。次の目標の所に行くぞ。今度はBの番だ」とモヤト。


 ニッケランはもう少し、牢屋の様子を窺がいたい気分だったが、彼がそういうのであれば仕方がない。彼の後ろを再び付いていった。


 牢屋から五分と立たないうちに、目的地へは到達した。


「ここが、目標Bの家さ」


最後までお付き合いいただき感謝いたします。

評価やコメントをいただけると、物語をより良くしていく大きなヒントになります。

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