表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
赤き日  作者: 溶接作業
二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

56/72

上戸の森

 死地の旅団になって一週間が経ち、その日が来た。

 ジョンが完治し、同時に将軍に頼んでおいた物が届いたからだ。


「いつになったら、その例の村ってのにつくんだ?」


 ニッケランはミャアドに問う。


「そろそろのハズなんだが…」


 彼はキョロキョロと周囲を見渡し、森の中を見分けようと必死になっている。


 ここは帝国の端、上戸の森。

 ミャアドの話によれば、この森の中に反帝国思想の人間が集まっている村があるという。反乱軍はそこに拠点を構え、ゲリラをしているらしい。


 しかし、前哨基地を出発して三日は森の中だ。まさかとは思うが、ミャアドは道に迷ってしまったのか。それとも、反乱軍の話は嘘で、我々をはめようとしているのではなかろうか。そんなよこしまな考えが脳裏にちらついて仕方がない。


 仲間も同じ考えなようで、三人とも度々ミャアドの顔を窺がっている。しかし、こう考えてしまうのは仕方がないことでもあった。


 道中で巡回中の帝国兵に見つかりそうになったこともあったし、野生動物に襲われたこともあった。しかも、長くても三日で着くと将軍に彼は説明したため、すでに食料が底を尽いてしまった。残っているのは少量の飲み水だけだ。しかも、すでに夕方で夜はすぐ目の前だ。


「おい、ミャアドまだなのか?」

「さっき聞いたばかりだろ!」


 声を荒げられ、ニッケランは苛立った。しかし、ここで口論になり、帝国兵にでも見つかってしまえば作戦は全部水の泡だ。感情を必死に押し殺し、耐える。もう少しで目的地だと自分に言い聞かせながら。


 突然、前方の茂みが音を立てた。


 五人は一斉に散らばり、近くの遮蔽物に身を寄せる。

 ニッケランはゆっくりと顔を木の影から覗かせ、様子を窺がった。


「ん?」


 野生動物か、帝国兵の姿が見えると思っていたが、実際にそこに現れたのは、ぼろきれを着た男だ。


「おい! そこのお前。ヤクトンか?」


 突然、ミャアドが叫んだ。とうとう、精神に異常をきたしたのだろうか。

 ヤクトンと呼ばれた男は声のする方を振り返り、驚いた顔を見せた。


「その声…ミャアドか!」


 男は嬉しそうな顔を見せ、一直線に走り込んできた。


(罠か?)


 背中に背負っているロングソードを握り、いつでも切り込めるように身をかがめる。しかし、その必要はなかったようだ。


 ミャアドが男に姿を見せ、握手を交わし始めた。その姿に、男が敵ではないことを悟った。


「紹介するよ。四人とも出てきてくれ」


 呼ばれたニッケランたちは顔を見せる。それを認識したヤクトンは顔を強張らせた。


「なんだこいつらは! まさか、帝国の?」

「違う違う! 王国から来た助っ人さ」


 ヤクトンは懐疑的な顔を見せたが、一応は理解してくれたらしい。ニッケランたちに握手を求めてきた。


「俺の名前はヤクトン。反乱軍に所属しているモンだ」

「よろしく、俺はニッケラン。で、こいつらが…」


 ヤクトンに自分と仲間を紹介し終えると、気になっていたことを質問する。


「その…反乱軍のアンタがここにいるってことは、拠点はすぐ近くか?」

「あぁ、そうだが…まさか、迷ってたのか?」


 聞くやいなや、彼はミャアド方を振り向いた。


「お前、あれほど道は覚えろと!」

「悪かったって! 正直、王国軍が勝つなんて思ってなかっただろ!」


 彼はミャアドの言い分に鼻を鳴らすと、顔をこちらに向けた。


「まぁ、疲れているだろうし、案内するよ。村ここから三十分ほどさ」


 ニッケランたちは顔を見合わせ、勢いよくうなずいた。これ以上、この森の中をさまようなんて考えたくもなかった。


 ヤクトンの案内で、歩いて行くと、人の話し声が聞こえてきた。求めていた生活音が聞こえ、心が安らいでゆく。


 すると、いきなり開いた場所に出た。


「おぉ、思っていたよりも…」


 ジョンが口を開いた。その意味をニッケランも理解していた。


最後までお付き合いいただき感謝いたします。

評価やコメントをいただけると、物語をより良くしていく大きなヒントになります。

ぜひ皆さまの声をお聞かせください!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ