草原
「ルート様に護衛するように頼まれました。以後お見知りおきを」
右側の兵士はそういうと、小さく頭を下げた。
「そうか…よろしく頼む」とニッケラン。護衛されるというむず痒さを感じ、逃げるように天幕へと入ろうとする。
すると背後で「なにこの人たち」とオキタル。
「俺たちの護衛だとさ」
オキタルは驚いていたが、すこし嬉しそうな顔を見せた。貴族にでもなった気分なのだろう。
「お前たちはルート将軍の元へ案内してくれるのか?」とニッケラン。
「お任せください」と左側。
「そうか…分かった」と彼はすぐさま寝具へ飛びこもうとする。
「お待ちください、ニッケラン様」と左側の兵士。
疲労から来る余裕のなさから怒りが湧き上がってくる。
(落ち着け俺……コイツらも仕事で護衛をしているだけだからな…)と喉元までせり上がって来たものを抑え込む。
「ルート様に用があると言っていましたが、よろしければ私どもで要件をお伝えしますよ?」
「明日。明日にしよう」
それだけを言うとニッケランは寝具に体を滑り込ませ、一つ息を吐いた。
ザザンとオキタルも同じ考えなようで、ベッドへ移動し、体を寝具へ沈めている。
一連の流れに兵士は特に何も言わず、一度頭を下げると、持ち場へと戻っていった。
兵士が天幕の外へ移動すると、中は暗闇に包まれる。そして瞼の裏側を見つめ、物思いにふける。
「…なんだ?」
どうしてか目の前から光が溢れ出てきている。いや、目の前なのだろうか。だんだんと近づいてくる光。頬を撫でる爽やかな風。豊かな大地の香りが鼻をくすぐった。
(兵士が入り口を開けたか?)とニッケラン。顔に光が当たっていては眠ろうにも眠れない。
「―――眩しいな…」
あまりの眩しさにゆっくりと目を開ける彼。白い光の中に色が付き始めると目の前の光景に瞠目する。
目の前には見渡す限りの草原が広がっていた。
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