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赤き日  作者: 溶接作業
一章

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44/55

ややこしい状況

「でもどこにいるんだろ?」

「知らない」


 オキタルは即答されて、呆れた様子でそっぽを向いてしまった。

 ニッケランはとりあえず、天幕の一番近くにいた兵士に声を掛ける。


「そこのアンタ。ちょっといいか?」

「え?」


 男は間抜けな声を上げ、ゆっくりと振り向いた。


「なんだお前ら。そこの天幕は将軍様たちの会議の場だぞ?」


 男の顔は不穏な空気を帯び、疑うような目を見せた。

 ニッケランは慌てて説明する。


「ルート将軍に呼ばれて会議に参加していたんだ」

「お前みたいな傭兵がか?」


 余計に怪しい結果になってしまったのか、兵士の顔は余計に曇っていく。


「コイツ、魔操志倒したんだよ」


 横で見ていたオキタルが付け加えてくれた。

 すると、兵士の顔が一気に明るくなり、ニッケランへ羨望の眼差しを向ける。


「アンタか! 魔操志を討ち取った英雄は!」

「え? 英雄…?」


 ニッケランは口をあんぐりとさせ、兵士の顔を観察した。

 その顔は晴れきっており、嘘をついているようには見えない。


「英雄って俺が?」

「そうだよ! アンタの活躍が無かったらここにいる奴ら全員死んでたんだぜ? そりゃ、俺たちにとったら英雄にもなるぜ」


 兵士はおもむろにニッケランに握手を求めた。

 それに、まんざらでもなさそうにニッケランは応じる。


「それで、俺に何をしてほしかったんだ? 英雄の言うことなら、全部こなして見せるぜ」


 ニッケランは威厳を装うように、芝居がかった頷きを見せた。


「うむ。反帝国軍の者がいる場所を教えてほしいのだ」


 兵士は驚いた顔を一瞬見せ、困ったように頭を掻きむしった。


「案内するのは良いのですが……英雄様を連れていくような場所じゃないですぜ?」

「なぜだ? 肥溜めとは言うまい」


 オキタルがクサイ台詞を吐くなという目で見ている。

 しかし、ニッケランはもう少し、この状況に酔っていたかった。


「気にしないから案内してくれ」


 兵士はニッケランに頼まれたのが嬉しかったのか、葛藤した表情を見せるも案内をしてくれることになった。


 ニッケランたちは案内役の後ろ姿を見ながら周囲を見渡す。


 ルートの天幕の周囲は同じように高位の者が集まっていたようで、立派なものが多かった。しかし、少し歩いていくと大型の簡素な天幕が見え始めた。


 ニッケランが案内役に質問を飛ばす。


「一気に雰囲気が変わったが、先ほどの場所と何が違うんだ?」


 案内役は歩を緩め、二人の横についた。


「ここは王国兵や傭兵たちが集まっている場所ですよ。ほら、外にいる兵士たちについている腕章、見覚えがあるでしょう?」


 ニッケランは兵士たちが付けている腕章に視線を移した。

 腕章には王国の国旗が描かれており、王国所属であることを主張していた。


「なんで分けられているの?」


 オキタルが案内役に質問をした。


「当然ですよ。どこに伏兵が隠れているかもわからない兵士たちと上の人達を一緒に寝かせる訳にはいかないでしょう?」


 オキタルは「たしかに」と納得した様子を見せ、案内役は満足そうに胸を張っている。

 すると、遠くの方にやけに騒がしい天幕が見えた。


「あの奥の方で人が忙しく動いている天幕はなんだ?」

「治療をする場所ですよ。今回の戦、一日で終わりましたけどね、負傷者と死傷者の数がとてつもないんですよ」

「具体的な人数は?」

「そうですね…一五万人中の六万人は負傷しているらしいです。死傷者は二万人だそうですけど、もっと増えるでしょうね」


 案内役は淡々としていたが、表情は固まり、目は虚空を見つめていた。


 ニッケランは戦の前に出会った壊れた兵士を思い出し、別の話題を咄嗟に振った。


「それで、目的地はどれぐらい先だ?」

「それほど遠くはないですよ」


 ニッケランは「そうか」と小さく呟くと、黙々と歩いた。


 案内役は心ここにあらずといった感じで、うつむきながら目的地へと進んでいく。


 すると、オキタルが小さく呟いた。


「もしかして、あれ?」


 オキタルの目線の先を追ったニッケランは驚いた。

 小さなテントを十人以上はいる兵士たちが囲んでいた。


「ええ、そうですとも」


 案内役はそう言うと突如立ち止まり、振り向いた。


「これ以上は私は進めませんので、お許しください」

「一緒に行けないのはなぜだ?」


 兵士はテントの方を一瞬見た。しかし、すぐに目線をこちらへ戻し、説明し始める。


「帝国人と接触する人数を出来るだけ減らしたいと個人的には考えております。しかし、理由は特に説明

されていません」


 機械的な返事にニッケランは違和感を覚えた。しかし、先ほどの会話で嫌な気分にさせてしまったかも

しれないと思うと、何も言えなかった。


 ニッケランたちは感謝を伝えたのち、テントに向かって歩き始めた。


「ねぇ、魔操志に聞きたいことって何なの?」

「魔操志の打った魔法に違和感を覚えたんだ。ルート将軍が持っていた本を覚えているか?」


 オキタルはうなずいた。


「魔法について本に解説が載っていただろう? 魔法を打たれた経験考察すると、魔法にはまだルールが存在するように思ったんだ。」

「それじゃぁ、僕も質問しようかな?」


 ニッケランは疑問を含んだ表情をオキタルに向けた。


「魔操志が最後に燃え上がったでしょ? 燃え上がった理由も聞きたいけど、首を自分で切り飛ばしたのも気になるんだよね」

「たしかにな…」

 

 ニッケランの脳裏に魔操志の最後が浮かび、実際に現れたように目に映った。

 

 狂気に満ちた顔で魔法に巻かれ、焦げた匂いを漂わせる魔操志の姿。最後には首を跳ね飛ばし、ニッケランの足元に転がってくる光景。それが目の前で繰り返される。


 ニッケランはこのままでは正気を保てない気がして考えることをやめ、テントとの距離を確認する。


 驚いたことに、テントとの距離はほとんどなく、兵士たちがニッケランたちの方へ集まり始めている所だった。


最後までお付き合いいただき感謝いたします。

評価やコメントをいただけると、物語をより良くしていく大きなヒントになります。

ぜひ皆さまの声をお聞かせください!

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