非情な現実
目が覚めると、耳元で大声を出しているオキタルと目が合った。
「なんだ?」とニッケラン。
彼はかすれた声を出している。オキタルはそれを気にする余裕がないのか、慌てた様子で話を続けた。
「早く起きてよ! ルート将軍がお呼びだよ!」
「はぁ⁉」
ニッケランの頭の中は、爆発的な衝撃にさいなまれ、眠気がどこかへと吹き飛んでしまった。
体を起こすと、すぐに顔を洗おうと外へと向かっていく。
入り口を飛び出すと、案内役の従者と目が合った。彼は勢いよく頭を下げると「申し訳ございません! すぐに顔を洗ってきますので少々お待ちを…」
「いえ、急ぐ必要はございません。ルート様から『ニッケランは、まだ疲れているだろうからゆっくり参らせろ』という伝言を承っておりますので、どうぞ、ごゆっくりご準備ください」
ニッケランは少し安堵した。もし、ルートの機嫌を損ねたらどうなってしまうのか、恐ろしくてたまらなかった。
しかし、急いで支度をすることには変わりない。
近くの川で顔を洗い、新しい服へと着替えると、従者と共にルートが待っている天幕へと移動していく。
体力はほとんど回復しており、昨日の足取りと比べたら何倍もの速度で天幕へたどり着くことが出来た。ジョンが見つかったのではないかという期待も大きかった。
「やっぱり、慣れないな……この天幕は」とザザン。
三人は入り口に見えない壁があるように足踏みした。
「どうされたんですか?」と垂れ幕で顔半分になった従者。
「いえ………入るぞお前ら」とニッケラン。
急な段差を上るように足に力を入れ、固い足取りで進む。
「ん……」と目を細めるニッケラン。
外と比べると少し暗い天幕の中に目が慣れない。しかし、だんだん慣れてくると机の向こう側に、昨日と同じ順番でルートとその従者たちが椅子に腰を下ろしているのが見えた。
「おぉ、ニッケランよ。すまないな、急に呼び出してしまって。まぁ、座ってくれ、話はそれから始めよう」
三人は素早く椅子に座り込むと、背をただした。
「話したいこととは何でしょうか? 昨日の今日で、また何かが起こりましたか?」とニッケラン。
ルートは質問を待っていたかのように笑みを浮かべ、嬉々として話始めた。
「喜べニッケランよ。お前たちの仲間であるジョンが見つかったぞ」
「本当ですか!」
心の底から力が湧き出るように感じ、思わず言葉が出てしまった。
嬉しさが内側から溢れ出てきて質問が止まらない。
「ジョンは今どこに?」
「尋問官の所だ」
耳を疑った。
打って変わって真剣な顔をしたルートが吐いた、この場に似合わない尋問官というフレーズ。これが脳みそを氷漬けにした。
「尋問官と言うのは、あの帝国兵に対して拷問まがいの事を行うという…?」とザザン。彼の額には大粒の汗が流れており、事態の深刻さを物語っている。
するとルートは静かに頷き「その通りだザザンよ」
「なぜですか! ジョンは王国の者ではございませんか!」
ザザンは怒り、立ち上がる。あまりの勢いに椅子は大きな音を立てながら後ずさり、従者たちの目には警戒の色が浮かんだ。
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