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赤き日  作者: 溶接作業
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ミャアドの記憶

「本来であれば、都市の管理者である長は住民の投票によって決まります。しかし、魔操志たちはそれを無視し、長を殺害、または、どこかへ幽閉してしまいました。」


「ここまでは良かったのです」と噛みしめるように言うと続けた。


「正直に言って、長が変わったとしても、都市の内情は今まで特段変わったということはありませんでした。なので、魔操志たちが長になったとしても、今まで通りの生活できると誰もが考えていました。しかし、魔操志たちは、長になった途端に税金を大幅に引き上げ、大半の商売の利権を奪い、市民の生活のすべてを操る独裁政治へと切り替えてしまったのです。」


 ルートが突然、話を遮った。


「その結果、反乱軍が生まれ、帝国内部で暴れだしたと?」


 彼は首を横に振り、再度説明する。


「いえ、それだけではございません。もちろん、最終的にはそれに行きつくのですが、まだ過程がございます」


 将軍は「過程?」と疑問を漏らした。


「もちろん、魔操志たちの暴政を、我々市民はただ黙っていたという訳ではございません。生活が一気に困窮した結果、各地で暴動や行進が起こり、魔操志を都市の長から失脚させようと大規模な運動が起こり

ました」


 気が付くとルートたちは仏頂面になっている。ここから先、ミャアドが何を話すのかを分かっている様だった。


「魔操志は籠城し、ほとぼりが冷めるまで顔を出さないだろうと我々は考えていました。その結果が暴動なのですが、魔操志は予想外にも簡単に顔を出したのです。そして、我々に対し、都市の大広間に集まり、話を聞いてほしいと言ってきたのです。」


 ミャアドは恐怖に顔を強張らせ、落ち着きなく目を動かし始めた。


「我々は、指示通りに大広間に集まりました。それに対し、魔操志は群衆の前に設置された高台の上に立ち、演説をするような立ち振る舞いを始め…しかし、それは魔操志にとって就任記念のようなものだったのかもしれません」


 ニッケランは次の展開を想像し、耳を塞ぎたくなった。


 しかし、話はとめどなく耳に届き続ける。


「私は後方の方に居ました。突然、前方の方から冷気のようなものが足元に流れ始め、空気が目に見えて白くなっていったのです。その後は、怒涛の勢いで進んでいきました。前方の群衆から悲鳴が上がったと思うと、目の前に大きな氷の柱が現れたのです。氷の柱は所々、黒いものが混ざっており、私は目を凝らし、中に何が入っているのかを確認しました。…中には…」


 彼が何かが引っかかったように口ごもり始めると、ルートは手を軽く上げ、「もう、話さなくて良い」と気分の悪そうな顔で言った。


 将軍は流れのまま話を続けた。


「魔操志が都市の群衆を虐殺した結果、反帝国軍が生まれたと?」


 ミャアドは力なくうなずいた。その顔は、この天幕の中で一番青白い顔になっていた。


「しかし、それとどうして我々に助けを求めることが繋がるのだ。正直言って帝国内部で仲間を募った方が効率的だろう?」


 ミャアドゆっくりと目線をルートへ動かす。顔はより青ざめ、死人のような雰囲気すら感じさせる。


「……それは無理です。無理なのです。帝国の大半の民は魔操志の力に恐れひれ伏し、抗う気力も、体力ももう残されてはおりません。」


 短くはない間、天幕の中は静まり返っていた。皆、それぞれが何かを考えている様で、時折、ミャアドの顔を窺がっては、目を伏せる。


 その中でニッケランは、話を聞いて、気になる点が出てきた。この空気に耐えられないこともあり、ルートに質者を飛ばす。


「ルート様、気になる事がございます。その手元にある本は何が書かれているのですか?」


 ルートは腕を組んだまま、それに答えた。


「これは、その男が我々と接触した際に持っていたものだ。内容は、帝国の内情や軍隊の内訳、さらには魔法についても書かれている」


 将軍は眉にしわを寄せて、本を疑うような目で見ている。


 しかし、疑わない方が難しいだろう。帝国と王国は犬猿の仲で、その帝国の反乱軍と名乗る者が突然、帝国の生命線となる魔法の情報が載っている本を渡してきたのだから。


「正直、この本に書かれている内容はすべて嘘だと考えていた。しかし、ニッケランが魔操志と戦った内容とまったく同じ解説があったことで、私の確信は、疑いへと変貌したのだ」


「疑い?」


 口から言葉がこぼれてしまった。


「本には魔法について、このように記されている部分がある」


最後までお付き合いいただき感謝いたします。

評価やコメントをいただけると、物語をより良くしていく大きなヒントになります。

ぜひ皆さまの声をお聞かせください!

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