救世主登場
呼ばれた男は、鼻にしわを寄せ、声を出している主の方を向いた。
「オキタル⁉」
想定外の人物が現れ、頭は混乱に包まれた。しかし、命の灯火が消えかかっていた状況を思い出し、慌てて立ち上がる。
すると、オキタルは太陽の光に反射する何かを足元へと投げてきた。
「ハーフソード…」
ニッケランはそれを呆然と眺めた。色々な記憶が湧き上がり、浮足立ったような気がする。子供の頃の壮絶な記憶が体に鎖を巻き付け、暗闇へと引きずり込もうとする。
「なにボーとしてんだよ! ニッケラン!」
子供の甲高い声にニッケランは現実に引き戻され、咄嗟にハーフソードを拾い上げた。
同時に魔操志を見ると、オキタルの投げた粉にもがき苦しみ続けている。
「助かったぞ! オキタル!」
またも刃走りのように前のめりになると、剣先を魔操志へと向けた。
まだ魔操志は、目に侵入した何かを掻きだそうと必死に擦っている。
(終わりだ…)
鮮血が流れ続ける手で剣を強く握ると、全力で大地を蹴り飛ばす。蹴った場所には砂煙が立ち上がり、遅れてニッケランの進む方へ吸い寄せられていく。
ロングソードよりも軽く扱いやすいハーフソードは、刃走りよりも早い速度でニッケランを引っ張ってゆく。
魔操志は粉のあまりの痛さに上半身を振り回しながら取り乱し続けている。これでは急所を上手く狙えない。
ニッケランは胴体の真ん中を狙って確実に当てようと、剣先を向けた。そして、とうとう剣が魔操志の体を貫いた。
しかし、剣は鎧に遮られ、致命傷には至っていないようだった。魔操志は充血した真っ赤な目を見開いて、ニッケランを凝視した。
「ぐふううぅぅ」
痛みに耐えるような声と共に、魔操志は突然、手に持っていた剣を捨て、両手でニッケランの腕をつかんだ。
同時に血を口から吐き出しながら、またもよくわからない言葉を吐き出し始める。
「ラウザルク・ナーマニ・シュルヌヴァントゥ・ママ・カーマム・プラーナナ・サハ・ジャータム・タパス・アグニム…」
突然、周囲の土がプスプスと音を立て始め、空気が熱を帯び始めた。
(おいおい、冗談じゃねぇ)
ニッケランは今までの展開から魔法のルールを大まかながらも予測していた。
魔法には詠唱が必要で、何らかの方法でそれを無視することも出来そうだが、基本はルールに従うものだと。その証拠に、剣が炎をまとった時も、炎の矢を打った時も詠唱をしていた。そして詠唱をして初めて、魔法が効力を持って現れたのだ。
しかし、この魔法はどうだ。まだ、詠唱が済んでいないにも関わらず効力を持ち始めてきている。つまりそれだけ強力な魔法を打ちだしているに違いないのだ。
最後のあがきって言うのかな? さぁ、ニッケランはどのように乗り越えるのか!乞うご期待!




