表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
赤き日  作者: 溶接作業
22/25

魔法使い

「くそっ!」

 

 ロングソードを引き抜くと、その勢いのまま目の前の敵を切り捨てる。

 しかし、敵はすぐに補充される。


 ニッケランは剣を強く握ると、目の前に現れる敵兵を一瞬で始末する。まるで、枯れ木をなぎ倒すように。


「なぜだ? なぜこんなにも弱い?」


 幾度となく戦ってきた帝国兵はこんなにも弱かっただろうか。記憶の中の敵は少なくとも一つや二つの攻防は見せてくれた。


 それに表情もいつものそれではなかった。

 職業軍人なだけあって、帝国兵は冷静に剣を振るう。しかし、今はどうだ。


 焦りに満ちた顔で剣を振るい、その軌道も規則性がない。まるで徴集された兵ではないか。


 妙な不安を覚え、嵐の前の静けさのようなものを感じ取る。


 しかし、今更乱戦から脱出し、様子をうかがうには遅すぎた。


 最早、魔法使いを討つしか道はない。ジョンのように奇策を立てる脳みそもなければ、ザザンやオキタルのように突出した何かがあるわけでもない。


 頼るのは経験からくる記憶、そして勘だけだ。


 ニッケランは次々に現れる帝国兵の首を飛ばし、腕を切り落とし、蹴り飛ばしていく。

 少しずつ。少しずつだが目的地へと迫っていく。


「隙を見て、後ろから頭を割ってやる」


 目の前にまた敵が現れる。剣を強く握り守りの構えを取った。


 敵がニッケランに切りかかろうと動いた瞬間、剣に今までにない衝撃が走った。


 ロングソードの背面が頭に当たり、体を包み込むようにして熱風、そして衝撃が伝わった。


 ニッケランは空へと吹き飛ばされたと思った。実際には、後ろに吹き飛ばされただけなのだが、熱風とあまりの衝撃に目を開けられない。


 とても長い時間に感じた、空中浮遊の旅は突如終わりを迎え、背中に鈍痛が響き、地面を跳ねながら転がった。


 勢いが止まり、地面に伏せたまま目を開ける。


 耳鳴りにしては大きすぎる金属音のようなものが脳みそを震わせ、体の力を奪っていく。


 起き上がろうと、地面に手を付けたとき気が付いた。手に何かが刺さっている。

 白く、固い何か。


「欠けた骨…か?」


 ニッケランは初め、己の骨が折れ、飛び出しているのかと思った。


 しかし、手に刺さっているそれを引き抜くと分かった。自分の骨ではない。

 では、誰のものなのか。


 どうにか顔を動かし、辺りを見渡す。


 先ほどまで立っていた場所に、小さな穴が出来上がっている。

 それを認識した途端、全身に悪寒が走った。


 目の前に立ちはだかった敵が爆散し、骨が矢のごとく飛び散ったのだ。


 慌てて立ち上がろうと腕に力を入れるが、足が言うことを聞かない。もしかすると、足が無くなっているのではないかと思い、恐る恐る確認する。


 手と同じように骨が刺さっているが、特に歩けなくなる様子でもなさそうだった。


 ニッケランに突然、記憶がよみがえる。


「脳震盪か…?」


 昔、町の酒場で喧嘩を目撃したことがあった。偶然かどうかわからないが、顎に一撃食らった男が一瞬にして倒れる。その様子を見ていた一人の男が脳震盪と呟いた記憶。


 今、自分にはそれと同じことが起こっているのではないだろうか。


 すると、前方からガシャガシャと音が聞こえた。顔を上げ、絶妙に焦点が合わない目で前を向くと紫色のマントが見える。


「くそ…今はないだろ…」


 ニッケランは必死に顔を動かし、剣を探す。


 少し後ろの方に自分の剣が見えた。


 紫色との距離を確認すると、まだ少し猶予がある。


 慌てたように体を引きずりながら、剣へと近づいていく。


 脳裏に浮かぶ吹き飛ばされた記憶が、汗を噴き出させる。


(また、あれを食らったらお終いだ!)


 後ろからあざ笑うような声が聞こえる。すると聞いたことのある声がした。


「そこの這いつくばっているお前。よく生き残ったもんだ! あの爆発で!」


 笑い交じりの声を発しているがよく覚えている声。砂嵐を止め、最初の大穴を開けたあの魔法使いの声だ。

 

 そのまま魔法使いは話を続ける。


「お前は俺を楽しませてくれそうだ! 待ってやる。とっととその剣を拾ってかかってこい」


最後までお付き合いいただき感謝いたします。

評価やコメントをいただけると、物語をより良くしていく大きなヒントになります。

ぜひ皆さまの声をお聞かせください!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ