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赤き日  作者: 溶接作業
2/25

仲間との再会

 話し声や鉄と鉄がぶつかる音などの久しぶりの生活音が聞こえる。

 それに誘われるようにニッケランは意識を取り戻した。


「ん……」


 かすれた声を出しながらやけに重たい瞼をこじ開ける。

 すると光が飛び込んできて、瞬間、世界が白に支配された。しかし、徐々に目が慣れてくることで現在の状態を確認することができた。


「は?」


 森の木々ではなく木製の屋根が飛び込んできて思わず声が漏れる。


 ここはどこなのか?

 自分は生きているのか?

 自力でここまで来たのか?


 様々な理解できていないことが一気に押し寄せ、胸が冷える感覚がする。しかし不思議と恐怖心はなかった。


「入るよ!」


 急にドアの向こうから声を掛けられ心臓が飛び跳ねる。

 しかし声をかけてきた人物の姿が見えたことで心臓は落ち着きを取り戻した。

 背の低い男が嬉々とした顔で話す。

「ニッケラン! 目が覚めたんだ!」

「オキタル…ここは?」


 オキタルは仲間の一人で斥候だ。

 小柄なのは十三歳の子供だからだ。運動神経が良く、俊敏に動けるため、索敵役として仲間になったのだった。

 

「ま、まさか…ここはあの世か⁉」

「え?」


 オキタルは驚いたように眉を上げている。


「お前…その年で…」

「ちゃんと生きてるよ!」

「へ?」


 驚くほどの間抜けな声。そんな声を聞いてか彼は、眉を寄せていた。


「ここはヘールズ駐屯所。つまり中立地帯に立てた軍基地だよ」

「……」

 

 顔が熱くなり、変に汗ばんでしまう。


「はぁ…状況、理解してくれた?」


 ニッケランは無言でうなずくと、慌てて質問をし始める。


「お前はいつ、この基地にたどり着いたんだ?」

「えーと、二日前だね」

「ずいぶん早いな!」

「そりゃぁ、伊達に二年間傭兵やってないんで」

 

 煽りも含まれていそうな言葉に温かみを感じる。

 この普段通りの態度がより生きている実感を湧かせてくれた。


「ふふっ」


 不満そうな顔をしたオキタルが聞いてくる。


「何笑ってんだよ、おっさん」

「いやな? いつもと変りなくて嬉しいんだよ」


 久しぶりに笑えたことで精神状態は普段と変わらない状態にまで戻っていた。

 気持ち落ち着くと、確認したいことが山ほど出てくるが、気持ちをぐっと抑え、重要なものだけ掻い摘んで質問をする。


「そんなことよりも聞きたいことがあるんだ」


 彼が片方の眉を挙げたのを確認し、ニッケランは話始める。


「まず、一つ目に俺はどんな感じでこの基地にやってきた?」

「詳しくは知らないけど、かなり混乱していたって聞いてるよ」

「そうか…どうりで記憶がないわけだ」

「いや、たぶんそれは関係ないと思うよ?」

「え? 混乱してたんだろ、俺?」

 

 話の流れが理解できず、思わず声を荒げてしまう。


「なんで関係ないと言えるんだ?」


 子供に声を荒げてしまった行為が恥ずかしくてたまらない。それを繕うように優しい口調に変えた。 


「ニッケラン、熱で二日間寝込んでたし」

「…え?」

 

 目が飛び出すかと思った。

 確かに、逃亡生活で体調はかなり悪くなっていただろう。しかし、二日間も倒れていたというのは信じられなかった。


「…本当にか?」

「本当」

 

 ニッケランは大きくため息をつき、腰を曲げた。

 

 たかが逃亡生活でここまで自分が追い込まれることになるとは信じられない。しかし、風邪が治った時のスッキリとした感覚がある。

 

 すると、オキタルがニヤニヤしながら言ってきた。


「もう三十歳なんだから無理すんなよ」


「子供には分からねぇよ…年を取ったことを実感する大人の気持ちは」

 

 そう言うと、急に彼は睨んできた。

 しかし、なぜそんな顔をするのか理解できなかった。むしろ、自分の事をもっと心配してくれていてもいいはずだ。


「で、次の質問は?」


 明らかに機嫌が悪い。 しかし、ニッケランには理由が思い当たらない。

 これ以上機嫌が悪くなるのを避けるため、当たり障りの無さそうな言葉で質問をする。


「他の仲間はどうなったんだ?」

 

 つまらなさそうにオキタルは口を尖らせる。


「あぁ…それ。全員無事だよ」


 その言葉を聞いてニッケランは非常にうれしくなった。自分が生きていて、仲間が死んでいたらやるせない。


「ここに呼んで来てくれないか?」

「別にいいよ、ニッケランみたいに倒れたの居ないし」


 やけに攻撃的な言葉に反射的に反応しそうになった。

 しかし、もしかすると自分が機嫌を損ねたと思うとそれは出来なかった。


「じゃ、呼んでくるから」

 

 そう言い残すと、オキタルは逃げるように部屋から出ていった。心なしかドアを閉める音が部屋に入ってきたときよりも大きく感じた。


「…子心は難しいなぁ」


 ニッケランは無精ひげをさすりながら自分の幼少期を思い出していた。


最後までお付き合いいただき感謝いたします。

評価やコメントをいただけると、物語をより良くしていく大きなヒントになります。

ぜひ皆さまの声をお聞かせください!

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