雑魚狩り?
「貴様ら、あの乱戦には参加しなくていいのか?」と敵兵。
「お前こそ魔法使い殿を守らなくていいのか?」
「ふん、貴様らに何が分かる!」
すると、男は苛立ったのか剣を勢いよく抜き去る。
「おい。一人で俺たちとやり合うのか?」とザザン。
「あぁ、余裕だね。むしろお前らはもっと人を寄こした方がいいんじゃないか?」
(妙に余裕だな……別に強い雰囲気もないが、油断するわけにはいかないな)とニッケラン。
ザザンは特に気にして無いようで鼻で笑っていた。
敵は不満そうに二人を睨み、少し後ずさりをした。
「お前たち! 出てこい!」
突然、奴の横の地面が四角形で切り抜かれた。
魔法だと予感し防御に入る。ザザンも盾を前に構えた。
しかし、地面から簡易的な屋根のようなものが出てきたことを確認し、構えを変える。
「地面に穴を掘って隠れていたのか…」とザザン
深さ一メートルほどの四角形の穴の上に、小さい丸太を縄で縛ったお粗末な屋根を取り付け、上に軽く土をかぶせた基地を作っていたらしい。
「何が余裕だよ」
ニッケランの言葉に、敵は大声で笑い始める。
「ハハハ! 確かに俺は臆病者だろう! しかし、今日でお前らは死ぬ! この戦いを語る者は誰一人と
していなくなるわけだ」
「一人で堂々と立ってたから、強敵だと思ったのに」とザザン。
「魔法使いに動きがあるまで動かないとは言ったものの、サボってるみたいになっちまうな」とニッケラン。
すると、ゾロゾロと敵兵が穴から這い出てきた。
(一人…二人…いや四人…)
敵は穴から気怠そうに出てくると、武器を構え始めた。
(珍しいな、斧を装備しているのは…)
外で待機していた敵兵はハーフソードなのに対し他の四人は斧を両手で構え、そのうちの一人は楽しそうに、斧の背面を掌にリズムよく落としこちらの様子を凝視している。
「おいニッケラン…この戦い俺に任せろ」
「え?」
やけにドスの聞いた低い声で話してきたことに驚いた。
今までにこんな声を発したことが彼にあっただろうか。
「なんでだよ? それじゃぁ五対一だぜ?」
すると、ザザンは飛び出すように首を振り凝視する。
「許せんのだ! 軽々しく勇敢さを語り自己を誇示する奴が!」
「お、お前なんだよその話し方…」
怖かった。
こんな目をギラつかせて気味悪く笑っている所を見たことがない。
(よし、素直に従おう)
今の彼を下手に刺激するのは良くない。
すると今度は敵の方を勢いよく向き、グラディウスの先端を向ける。
「お前ら、殺すからな?」
敵の一人が肩を揺らしながら言う。
「一人で何ができる。その妙な武器を振り回すだけで俺たちに勝てると思うなよ?」
次の瞬間、ザザンは敵の元へと駆け出した。重厚な装備に守られている反面、鎧の重みを感じられる足取りだ。
(もし、やられそうになったら加勢するか)
しかし、特に心配はしていなかった。
むしろ敵の方が心配で仕方がなかった。
(あいつの武器、治ったけどまた元に戻っちまうんだろうなぁ…)
すると、敵の一人が斧を思い切り振り上げながら駆け出した。
「うぉぉぉぉぉ!」
叫びながら突撃してくる様を見ても、ザザンの後ろ姿には特に動揺の色は無い。
それを見ている敵兵たちも特に変わった様子は無かった。
とうとう、敵兵、ザザン共に射程圏内へと侵入する。
するとザザンは地面を思い切り蹴り込み、加速する。
その重厚で無機質な鎧を着ているようには思えない速度に敵は口を大きく開けた。
敵は斧を振り下ろすタイミングが予定よりも早まったからか、慌てて目的を果そうとする。
しかし、彼の方が早かった。
「え?」
まさか、彼が体ごと突撃するとは予想してなかったのだろう。目の前に迫りくる巨体に変な声が出ている。
「うわぁ…」とニッケラン。
次の瞬間、敵は他の四人のところへ吹き飛ぶ。吹き飛んだと同時に固いものが折れるような音が聞こえた。
その勢いのまま顔から地面に落ち、引きずられ、血が絵具を伸ばしたように広がっている。残った敵は呆気にとられていた。
次には、お互いを見つめ合い仲間を助けなかった責任を押し付け合っている様子だ。
「たまらねぇなありゃ…」
敵の悲惨さにザザンと仲間であることを感謝した。同時に、頼もしい仲間が居ることに胸を高鳴らせる。
すると、ザザンは突然止まり、吠えた。
「その程度か? とっとと全員で来んかい!」
敵は一瞬眉を震わせると、四人同時に走り出した。
ザザンは盾を前方に押し出し、グラディウスを隠すように構える。
すると、一番乗りの敵がザザンの頭に向けて斧を振り下ろした。
「死ねやぁ!」
彼は盾を斜めにし、中央にある鉄製の丸い球体に斧をぶつける。
すると、敵は氷に足を滑らすように、斧の勢いにつられて倒れ込んでいく。
敵はニッケランから見ても焦ったような顔になっていた。
彼はそれを逃しはしない。
倒れ込むことを予想していたかのように、グラディウスの先端は敵の首を狙っている。そして、剣先は予定調和のように首めがけて飛んでゆく。
敵はガードしようと手で首を覆う。それにザザンの腕力が唸った。
敵の手もろとも、首を貫通してしまったのだ。
敵の首の側面からは鋭利な物が覗いており、敵の口からは赤い泡と共に、黒い粘性に富んだ液体が溢れ出ている。
ザザンはその光景に満足したようにグラディウスを引っこ抜いた。そして、彼は残り者に睨みを利かせ言った。
「次に死にたいやつは誰だ?」
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