雑魚狩り?
「貴様ら、あの乱戦には参加しなくていいのか?」
敵兵が突然話しかけてきた。
「お前こそ魔法使い殿を守らなくていいのか?」
ザザンはそれに負けない煽りを敵にお見舞いする。
敵は苛立ったのか、剣を勢いよく抜いた。
ザザンはさらに話を続けた。
「おい。一人で俺たちとやり合うのか?」
その言葉に敵は不気味な笑みをこぼした、
「あぁ、余裕だね。むしろお前らはもっと人を寄こした方がいいんじゃないか?」
その言葉にニッケランは少し苛立った。
しかし、昔冷静さを欠いたために深手を負った戦いがあったことを思い出し、頭を冷やす。
ザザンは特に気にして無いようで鼻で笑っていた。
敵は期待外れの態度だったのか、鼻を鳴らしながらこちらを睨み、突然叫んだ。
「お前たち! 出てこい!」
突然、敵兵の横の地面が四角形で切り抜かれた。
ニッケランは魔法だと予感し防御に入る。ザザンも盾を前に構えた。
しかし、地面から簡易的な屋根のようなものが出てきたことを確認し、構えを変える。
「敵は地面に穴を掘って隠れていたのか…」
深さ一メートルほどの四角形の穴の上に、小さい丸太を縄で縛ったお粗末な屋根を取り付け、上に軽く土をかぶせた基地を作っていたらしい。
「何が余裕だよ」
ニッケランの言葉に、敵は大声で笑い始める。
「ハハハ! 確かに俺は臆病者だろう! しかし、今日でお前らは死ぬ! この戦いを語る者は誰一人と
していなくなるわけだ」
ニッケランは敵への期待感が萎んでいく感覚がした。
「一人で堂々と立ってたから、強敵だと思ったのに」
ザザンも同じ考えのようで、深くため息をついていた。
すると、ゾロゾロと敵兵が穴から顔を出してきた。
(一人…二人…いや四人…)
敵は穴から気怠そうに出てくると、武器を構え始めた。
(珍しいな、斧を装備しているのは…)
外で待機していた敵兵はハーフソードなのに対し他の四人は斧を両手で構え、そのうちの一人は楽しそうに、斧の背面を掌にリズムよく落としこちらの様子を凝視している。
「おいニッケラン…この戦い俺に任せろ」
「え?」
やけにドスの聞いた低い声で話してきたことに驚いた。
今までにこんな声を発したことがザザンにあっただろうか。
「なんでだよ? それじゃぁ五対一だぜ?」
勢いよく振り返って、目を凝視してきた。
「許せんのだ! 軽々しく勇敢さを語り自己を誇示する奴が!」
「お、お前なんだよその話し方…」
怖かった。
こんな目をギラつかせて気味悪く笑っている所を見たことがない。
(よし、素直に従おう)
今のザザンを下手に刺激するのは良くない気がした。
するとザザンは気持ちを察してくれたのか今度は敵の方を勢いよく向き、グラディウスの先端を向ける。
「お前ら、殺すからな?」
一人の敵が肩を揺らしながら言う。
「一人で何ができる。その妙な武器を振り回すだけで俺たちに勝てると思うなよ?」
次の瞬間、ザザンは敵の元へと駆け出した。
重厚な装備に守られている反面、その重みを感じさせる動きと音をザザンが動くたびに感じさせる。
ニッケランは言いつけを守り、後方で観戦することにした。
(もし、やられそうになったら加勢するか)
しかし、特に心配はしていなかった。
むしろ敵の方が心配で仕方がなかった。
(あいつの武器、治ったけどまた元に戻っちまうんだろうなぁ…)
すると、敵の一人が斧を思い切り振り上げながら駆け出した。
「うぉぉぉぉぉ!」
叫びながら突撃してくる様を見ても、ザザンの後ろ姿には特に動揺の色は無い。
それを見ている敵兵たちも特に変わった様子は無かった。
とうとう、敵兵、ザザン共に射程圏内へと侵入する。
ニッケランは息をするのを忘れ、どう動くのか見入っていた。
するとザザンは地面を思い切り蹴り込み、加速する。
その重厚で無機質な鎧を着ているようには思えない速度に敵は口を大きく開けた。
敵は斧を振り下ろすタイミングが予定よりも早まったからか、慌てて目的を果そうとする。
しかし、ザザンの方が早かった。
ニッケランは、ザザンが敵を突き刺すものだと予測していた。しかし、実際には、剣と盾を密着させ、肩を突き出し、そのまま突進したのだ。
「え?」
敵は間抜けな声を出し、次の瞬間、他の四人のところへ吹き飛ぶ。吹き飛んだと同時に固いものが折れるような音が聞こえた。
その勢いのまま顔から地面に落ち、引きずられ、血が絵具を伸ばしたように広がっている。残った敵は呆気にとられていた。
次には、お互いを見つめ合い仲間を助けなかった責任を押し付け合っている様子だ。
「たまらねぇなありゃ…」
敵の悲惨さにザザンと仲間であることを感謝した。同時に、頼もしい仲間が居ることに胸を高鳴らせる。
すると、ザザンは突然止まり、敵に吠えた。
「その程度か? とっとと全員で来んかい!」
敵は一瞬眉を震わせると、四人同時に走り出した。
ザザンは盾を前方に押し出し、グラディウスを隠すように構える。
すると、一番乗りの敵がザザンの頭に向けて斧を振り下ろした。
「死ねやぁ!」
ザザンは盾を斜めにし、中央にある鉄製の丸い球体に斧をぶつける。
すると、敵は氷に足を滑らすように、斧の勢いにつられて倒れ込んでいく。
敵はニッケランから見ても焦ったような顔になっていた。
それをザザンは逃がさない。
倒れ込むことを予想していたかのように、グラディウスの先端は敵の首を狙っていた。
もちろんそれを逃すはずもなく、グラディウスは敵の首めがけて飛んでゆく。
敵はそれをガードしようと手で首を覆う。それにザザンの腕力が唸った。
敵の手もろとも、首を貫通してしまったのだ。
敵の首の側面からは鋭利な物が覗いており、敵の口からは赤い泡と共に、黒い粘性に富んだ液体が溢れ出ている。
ザザンはその光景に満足したようにグラディウスを引っこ抜いた。同時に敵は地面に倒れ込み、動かなくなる。
ザザンは残り者に睨みを利かせる。
「次に死にたいやつは誰だ?」
最後までお付き合いいただき感謝いたします。
評価やコメントをいただけると、物語をより良くしていく大きなヒントになります。
ぜひ皆さまの声をお聞かせください!




