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赤き日  作者: 溶接作業
17/32

結末

 瞬きすら許されない刹那。ニッケランが動いた。


 刃走りは横一線に剣を振り回し一刀両断する作戦だと思っていたのだろう。先ほどよりも低い姿勢で下から剣を突き立てようとしてきた。


 しかし、次の瞬間ニッケランは体を前に曲げ、無理やり剣を振り落とした。

 刃走りは驚きの声を上げ、振り上げた剣を見上げている。


 それを無視しニッケランは剣を力一杯振り下ろす。


 剣が脳天に向かって一直線に進んでいく。もし、この戦いを観戦している者が居たとすれば、その者はニッケランの勝利を確信しただろう。


 しかし、刃走りは体をさらに前のめりにし、地面を蹴る。蹴った場所に馬が通った様な砂煙が舞い、ニッケランの横へと移動した。


 刃走りは勝利を確信したのか、ほくそ笑み、最後の蹴りを地面へとぶつける。

 すると、体が浮き、エストックがニッケランの瞳孔を狙って突き進む。


 同時に地面とロングソードがぶつかるけたたましい金属音が響いた。


「終わりだ!」


 刃走りが叫び、エストックが目を突き刺すかに思えた瞬間、ニッケランが消え、刃走りの笑みは崩れ去った。


「は?」


 刃走りは、細い目をかっぴらき、全力でニッケランを探す。すると地面に影があることに気が付いた。


 上を向き、太陽を見上げた瞬間、そこに剣を振り下ろそうとしている影が一つ。


「なに?」


 次の瞬間、全体重を乗せたニッケランの剣が刃走りの首めがけて振り落とされる。


 重苦しい風を切る音と共に、太陽に照らされ妖艶な光を放つ剣の残像が刃走りの首を捉えた。


 刃走りは武器を投げ捨て、手で大地を掴むようにして転がるように飛んだ。


 しかし、すでに事は済んだ後だった。


「ぐあああ」


 声にならないようなものと共に、勢いよく、血が噴き出すのが見えた。

 上手く地面に着地すると、ゆっくりと、しかし確実に歩みを進めた。


「ぐるな! ぐるなぁ!」


 先ほどまでの威勢はなくなり、ニッケランの目にはただの哀れな男に映っていた。


 ニッケランは剣を逆さに持ち、トドメを刺そうとする。憐れみを含んだ目で刃走りを見た。


「ほんの少しでもお前が早かったら倒れていたのは俺だっただろう」


 しかし、そんなこと今の刃走りにはどうでもよかったようで、必死に命乞いをするように手をニッケランの方へ向けてきた。


 その瞬間、魔法が頭をよぎり反射的に飛び退こうとしたが、留まった。


「するならもうしてるか…」


 ニッケランはもう一度逆さに剣を持ち、今度こそ息の根を止めようと、剣を高く持ち上げる。


 そして、慣れたように勢いよく、かつ正確に首を狙って振り下ろした。


「まっで…」


 何か聞こえたように感じたが、すでにニッケランの手には、剣から伝わる生命のうごめきに満ちていた。


 皮を破り、肉を割き、骨を砕く感覚。まだ生きたいと懇願するようにビクビクと蠢く肉塊。

 そんな何度も体験した慣れ切った感覚がニッケランの手には満ちていた。


「どんなに強い奴も結局は人間だよな」


 ふと口ずさんだ次の瞬間、ニッケランの体の力が抜け、地面にしりもちをついてしまった。


「俺はここまで追い込まれていたんだな…まったく、嫌になっちまうぜ」


 今までにないほどの極限状態からの解放。これは想像以上に精神に来る。


 ニッケランは小刻みに震える手で剣を握り、地面に突き立てる。


 足の力が抜け、立ちにくくて仕方がないが、何が起こるか分からない戦場で座り込むわけにはいかない。


 ふと先ほど殺した刃走りの方を向くと痙攣も収まり、細い目で太陽の方を向いていた。


 妙に安らかな顔をしている。


「セイレムって本当にあるのかねぇ?」


 こんな安らかな顔をしているのだからあるに違いないとニッケランは思った。

 そんな戦場に似合わない事を考えながら、ニッケランは気合を入れなおす。


「うおぉぉぉぉぉ! 刃走りを倒したぞぉぉぉ!」


 次の瞬間、爆音と妙に熱い暴風と共に砂嵐が収まった。


 ニッケランの目の前には昔戦場で見た、隕石の跡のような穴が広がっていた。


話のストックが少なくなってきたので2日に一回に切り替えます。節目の良い話に入ったら毎日投稿に切り替えます。


最後までお付き合いいただき感謝いたします。

評価やコメントをいただけると、物語をより良くしていく大きなヒントになります。

ぜひ皆さまの声をお聞かせください!

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