乱戦
剣がニッケランの首を切り裂こうとするが、届かない。裂かれた空気が砂嵐と一体となって頬をなぞった。
彼はよろめきながらも、剣を構えなおし、反撃に出た。
「ごらぁ!」
気合の入った声を出しながら相手の脳天めがけて剣を振り落とす。
敵は剣を横に構え、防御する。しかし、あまりの威力に耐えきれず、剣ごと頭にめり込んでしまった。
噴水のように血が噴き出し、より強い血の匂いが漂うが、戦場はすでに異臭で満たされており、それを感じることは出来なかった。
剣に付着した血と油を肉塊と化した敵兵の服でふき取る。
「くそっ!」
度重なる乱戦で仲間とはぐれてしまった。
しかも、乱戦が激しく、カリメット平野が砂を巻き上げやすいこともあり、辺り一面が砂煙に覆われてしまっていた。
周囲を見渡すが、味方と敵が激しく争っている影しか見えず、どこに進めばいいのか分からない。
「うおおおおお!」
いきなり背後から兵士が突撃してきた。
咄嗟にニッケランは横に飛び込み、転がりながら体勢を整え、剣先を兵士へと向ける。
腕の腕章が見え、唖然としてしまった。
今突撃してきた兵士は王国軍の者ではないか。
「お前、よく確認せず突っ込んできただろ!」
怒りと焦りが押し寄せ、言葉が喉元にせり上がってくる。
相手の兵士の顔を見ると、なぜか安堵に歪んでいる。
「すまねぇ、焦ってて!」
その言い訳がましい言葉と姿に怒りが余計込み上げてきた。
しかし、周囲の物騒な音が頭に響き、ここが戦場であることを思い出した。
「次から気をつけろ!」
戦場は砂の海に溶け、敵も味方も影のようにうごめいている。
区別がついたころには互いに殺し合える距離。
もはや武器を事前に構え、戦うことは出来なくなっていた。
おまけに、錯乱した味方の刃が命を刈り取ろうとしてくる。
「過去にここまでひどい状況があったか?」
ニッケランは変に冷たい汗を拭いながら、周囲を見渡す。
争っている影ばかりが見え、他には砂に覆われた太陽しか見えなかった。
「万策尽きたか…」
最早、乱戦に飛び込み続けるしかない。
いつかは砂嵐も晴れ、状況が分かるだろうと思考を放棄した。
すると背後から声が聞こえた。
剣を強く握り、振り返ると、先ほど突撃してきた兵士だった。
「なぁ、旦那さん。どこかに行くなら一緒に行かせてくださいよ…」
兵士の顔は打って変わって不安に押しつぶされそうな顔をしている。歯を鳴らし、目が少しでも砂の海を見通そうとギョロギョロと動いている。
ニッケランは小さく息を吐いた。
こんな事をしている間にも敵は近づいてきているかもしれない。
ジョンならどうするだろうかと考えた。しかし、何も思いつきそうになかった。
「まぁ、そうだな。人数は多い方が…」
兵士に「ついて来い」と言おうとした瞬間、砂に紛れて血潮が目に飛び込んできた。
明けましておめでとうございます!今年もよろしくお願いいたします!
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