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赤き日  作者: 溶接作業
12/26

戦の幕開け

 上官の指示でニッケランたちは第二陣の後列中央に着いた。


 ニッケランは周囲を見渡す。


 今回の徴兵で参加させられた兵士たちだろうか。落ち着きがない。


 武器を強く抱きしめるように握る者。

 周囲の仲間たちに何人殺すかを語っている者。

 剣十字を握り、ノマギア神へ祈りをささげている者。


「かわいそうに…」


 今回の戦で大半が死ぬことを確信していた。


 帝国軍の練度、魔法使いの有無、王国軍の構成員。何もかも帝国軍が有利だ。


 それを理解できない者たちが大勢参加させられている。


 帝国軍に弱いものを弄ぶのが好きな者がいれば、まさに宴であろう。


 すると突然、後方の方から太鼓の低い音が鳴った。

 それに合わせ前方の派手な騎兵が旗を掲げながら王国軍の前を横切っていく。


 太鼓の音はどんどん大きくなる。


 空気が震え、それに合わせて王国軍の兵士たちも声を出す。


「王国万歳! 王国軍万歳!」


 ニッケランは身を震わせ、拳に力を入れた。


「始まるんだな…とうとう」


 隣のザザンが盾を強く握りながら、帝国軍の海を眺めている。


 太鼓の音が鳴りやみ、王国の兵士たちも静まり返った。


 すると、位の高そうな騎士が一人前に駆け出した。王国軍の少し前に移動し止まると、こちらを振り向いた。


「我は王国軍将軍ルート=ファイである!」


 ニッケランは固唾を飲みこんだ。

 ありえないことが目の前で起こっている。


 今王国軍を率いている、大将が味方よりも前で檄を飛ばしているのだ。


 ニッケランは悟った。王国はこの戦にすべてをかけている事を。


 今までの戦でも将軍が檄をすることはよくあった。しかし、する場所と言えば後方か、味方に守られて安全が確保された場所だった。


 しかし、今回は違う。

 

 王国軍の大将自らが先陣を切ろうとしているのだ。

 横でジョンやザザンもあっけにとられている。


「諸君! 王国のためによく集まってくれた。私は二十年王国のために戦い続けたが


 今日ほど高揚した日は今までになかったぞ!」

 将軍の言葉に皆が息を飲み込んでいた。普段であればバカにしていたニッケランでさえ場の雰囲気に飲み込まれていた。


「お前たちは王国の窮地を救う英雄だと確信している! 今日で大多数が死ぬだろう。

 しかし、私は誇りたい! 王国には十五万人の勇敢な男たちが居たと。誇り高い戦士が居たと!」


 将軍は帝国軍の方に振り向き、剣を抜き去り、高らかに掲げた。

 剣が太陽の光を反射し、そこに太陽があるかのように輝いている。


 すると、将軍は帝国軍に向け剣を振り下ろし叫ぶ。


「行くぞ! 英雄たちよ!」


 その言葉に呼応するように王国軍の騎士たちは叫びはじめ、将軍が帝国軍へ向けて駆け出した。

 それに続いて騎士たちは雄叫びを上げながら続く。その後ろで歩兵たちも突撃し始める。


「将軍に続け!」


 兵士たちが叫び、突撃の足音が大地を揺らす。


 その光景をニッケランはぼんやりと眺めていた。


 将軍は檄を飛ばしているように見せていたが違うのだ。


 あれは懺悔。これから何も知らない哀れな兵士たちを死へと追いやる自らを許してほしいのだ。


 しかし、恨んでなどいなかった。むしろ将軍と同じように高揚していた。


 ジョンやザザンの顔を見ると、同じように胸を高鳴らせているようで、愛用している武器を強く握りしめている。


 しかし、ニッケランたちはまだ知らない。この戦いが運命を大きく左右することになるとは。


読んでいただきありがとうございます。コメント等をしていただけると、すごく嬉しいです。

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