表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
赤き日  作者: 溶接作業
11/32

死地

 気が付くと、森の出口へ差し掛かっていた。


「この先が戦場だ」


 その言葉を聞き、ニッケランは気を引きしめた。


「死んでたまるか」


 この先は戦場。生き死にを掛けて戦う場所。


 力に屈してたまるか。

 負けてたまるか。

 しぶとく生き残ってやる。


 いつも戦が始まる前はこの言葉を心の中で唱える。今回の戦も例外ではない。


 心の中で唱え終わると、ちょうど森の外へと出た。


 空は晴天で、太陽がニッケランたちを歓迎してくれている。しかし、温かいはずの光が今回ばかりは冷たく心を冷やした。


 ここはカリメット平野。


 広大で様々な生物が住み着き、世界でも有数の美しい場所とされている。


 しかし、目の前に広がるのは帝国軍の海。

 前方から騎馬、歩兵、弓兵と列を作っていた。


「なんか多くないか?」


 ザザンが呟いた。

 その言葉にニッケランは強く共感していた。


 カリメット平野に進軍した王国軍の兵士の総数は十五万。帝国軍は五万。常識で考えれば圧倒的に王国軍が優位に感じるだろう。しかし現実は違う。


 まず、王国軍は大半の者が即席で集められた武器の扱い方も知らない農民だ。言ってしまえば付け焼刃。しかも、前回の戦で大半の猛者や職業軍人たちが死んでしまった。


 それに対し、帝国軍は五万人全員が職業軍人で、人の殺し方を熟知している者だ。しかもその中には魔法使いも混ざっているのだから救えない。


 その光景に、まるで魔法でもかけられたかのように、高ぶっていた気持ちが一気に冷めていくのを感じた。


 (逃げようか…)


 心の中でふと呟いてしまった。


 自分は傭兵であり、兵士ではない。逃げれば王国軍の兵士に敵前逃亡として追い回されるが逃げ切る自信はある。


 そんな事を頭の中で必死に考えていると隣で帝国軍を眺めていたジョンがニッケランの肩を叩いた。


「お前、逃げたいと思ってるだろ?」


 ニッケランは驚きジョンの顔を見上げた。


 彼も恐怖に満ちた顔をしている。しかし、それに似合わない笑みも浮かべていた。

 目の前のストレスに押しつぶされてしまったのだろうか。


 ニッケランは「逃げよう」と提案しようと、口を開こうとする。


 しかし、ジョンの方が早かった。


「怖いよなぁ…あの数。これは王国は全滅するかもなぁ…。でも、逃げねぇよ。俺は」


 理解できなかった。傭兵なんだから逃げてしまえばいいのにと思った。

 ジョンは話を続ける。


「王国が負ければ国内の女、子供は奴隷にされるだろうな」


 その言葉を聞き、ニッケランは息をのんだ。


「お前…そんなことまで考えていたのか?」


 ニッケランは震えていた。それは恐怖から来るものではなかった。


 感動しているのだ。


 傭兵と言えば、社会に適さず、軍人にもなれない半端者がなる職業だ。ニッケラン自身もそう思っていた。しかし、ジョンは違った。


「俺、お前と仲間になれて嬉しいよ。ジョン」


 横でジョンとの会話を聞いていたザザンが今生際の言葉のようなものを呟いた。


「ワハハハハ!」


 三人が繰り広げている光景を見ていたオキタルが突然笑ってきた。


「こんな、地獄みたいなところで俺たち過去最高に盛り上がってるね」

「やってやるさ!」


 ニッケランは少し笑いながら大きく叫んだ。

 その言葉に他の三人も笑いながら叫んだ。


「おお!」


 士気は十分。


 やれる。


 そんな気分で心を満たしていた時に、軍旗を持っていた騎士が叫んだ。


「配置に着くぞ!」


 その言葉に王国軍全体が答える。


 カリメット平野は王国軍の声で満たされ、そして、各々が担当の配置へと移動していった。


短いのでもう一話投稿します。


最後までお付き合いいただき感謝いたします。

評価やコメントをいただけると、物語をより良くしていく大きなヒントになります。

ぜひ皆さまの声をお聞かせください!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ