エピローグ④〜続編〜
あれから数ヶ月。私は今日、高校三年生になった。
一年前は何者でもなかった私がこうして皆と肩を並べて通学できるなんて、まるで奇跡のような幸運だと思う。
いや。運とか言ったら失礼だよね。
これは皆が未来を切り拓き、書き換え、私のために掴み取ってくれた結末だ。
諦。
あの頃の私は流されるまま生きていた。自己犠牲なんて綺麗な言葉で着飾って、本当の望みと向き合うことから逃げて。ただ、変に期待をした挙句自分が傷付くのが怖かっただけなのに。
そんな私を皆が救ってくれた。神に拒絶され、読者に拒絶され、世界全てに拒絶された私に皆は手を差し伸べ、居場所を与えてくれた。全員が幸せになれる最高のハッピーエンドという甘い夢を見せ、強い意志があればどんな過酷な運命だって変えられるのだと、身をもって教えてくれた。
だけど今はまだ私の望んだ物語じゃない。
だって、皆の中にあなたが含まれていないから。あなたがいなければ皆も、私も、心の底から幸せになんてなれない。
あなたがしたのは馬鹿だった昔の私と同じ、自分勝手な自己犠牲。そんなもの、あなた以外誰も望んじゃいないのよ。
だからもう逃げない。今度は私があなたを助け出して、最高のハッピーエンドにしてみせる。方法なんてわからない。あなたが今どこにいて、何をしているのかも。何も。だけどこんなガバガバな世界、いくらだって設定を後付けできる。
黒を白に塗り潰すことだって、きっとできるから。
だから。
……なーんてことを考えつつ、私は目の前でたわむれる新入生と思しき二本のうまい棒を、ボーッと眺めている。
あっちの棒が攻め……と見せかけてヘタレ攻め。もう一本が受けかな。いや、でもリバもアリ寄りのアリですわ。腐腐腐……
(おい、男のこと棒って呼ぶのやめなよ。さすがに引く)
突然、目の前の景色が静止し、動けなくなった。時間が止まった世界で、頭の中に隣を歩いていた女からのテレパシーが響く。
驚いたが、返事の仕方はなぜか感覚でわかった。
(菅ヶ田さん!? どうして……というか、心の声聞かないでよ……)
(ごめんごめん。でもこれが、理の側としての私の、あのー、アレだから)
(アレ?)
(男女関係なくオタクに優しくするのが、本当のオタクに優しいギャルってもんでしょ? ね、腐女子の轟瑛子さん?)
(ぐっ……一体何が目的なの?)
(まぁまぁ、そんなに警戒しないで。股の力抜けよ)
(肩だよ)
(私はただアンタをサポートするため……まぁ簡単に言えば、お助けキャラみたいなもんよ。だからアンタの本心からの望みを言ってみな。今度こそ、絶対力になってやるから)
私の望み。そんなの、最初から決まっている。
(私の望みは、――)
これから始まるのは、かつてモブキャラAだった私が全てを取り戻して最高のハッピーエンドを目指す、ありふれたつまらない物語――。
―了―




