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第3話 最強への布石は大切。

「魔王の仕事は一時休止だ!その間魔王城を頼んたぞ!」

俺はしっかり者のローズに頼む。

ローズは吸血鬼であり、戦闘力が非常に高い。この城を任せるのにも申し分ないと言えるだろう。

「お任せください!ヒカル様!!!」

ん〜、いいねーこの響き。これ言われるだけで魔王になった価値あるわ。

「よし、じゃあ。大学に戻って教授を探るんで。じゃ!」

神野ヒカルはそう言い残すと陰に消えていく。

1人残されたローズは、すぐさま箒と雑巾を準備して、エプロンへと着替えた。

「ほんと…ヒカル様は魔王城をもう少し手入れしてほしいものですね。この前の戦闘で床にも穴を開けて。しかも全階層!」

ローズは愚痴を叩きながらもせっせと掃除を済ませていく。前魔王は大雑把であり、戦闘以外本当に興味がなかった。勇者が来るまで寝て、起きて葬る。ただそれだけだ。

「ほんと…ヒカル様になってくれて良かった…。」

あまりにも広い魔王城にため息を吐きながらも、今日もローズは鼻歌でも歌いながら仕事をしてくれている。


「ルヒカくん!昨日は本当に凄かったですね!」

「いや、あんなのまぐれみたいなところあるし…ね?」

「あー!それでも見てみたかったな!憎いぜ熱!!!」

3人でいつも通り話しながら廊下を歩いていると、正面からファボ教授が歩いてくる。

「お二人とも。少しルヒカ殿を借りていいかな?」

俺から出向こうかと思ってたけど、向こうから来てくれるなら好都合だ。

「2人ともすまんな。」

俺は少し謝罪をして、ファボ教授と別の部屋へと入る。

「なんか…ルヒカってすげぇやつだな。」

「あぁ、誇らしいぜ!」

少し聞こえてきた会話だけで、やっぱり2人はいいやつだとわかった。



「すまないなルヒカくん、少しだけ話がしたくてね。」

ファボは部屋の椅子にもたれ、俺の方を向く。

「えぇ、お時間もらえて光栄です。」

俺が返すとファボは大きく笑った。

「やはり君は逸材だ。この会話している今も、魔力を制御し、無駄に流してしまわないように努力している。」

魔力は基本垂れ流されていくものだ。無駄に魔力を消費し続けていたら、急な戦闘が不利になる。魔王の俺は特に心掛けている。


「君はとても才能がある。これは私が証明だ。前回の模擬試合で周りもわかったことだ。」

「ありがとうございます。そんで、何が本題ですか?」

俺が問いかけるとファボ教授はまた大きく笑う。

「やはり君は逸材だね。君をある遠征隊の指導役として推薦したい。」

「遠征隊の…指導役?」

「あぁ、君の実力は私からのお墨付きだ。この前の立ち会いだけで、魔力操作・日々の鍛錬。そして、高度な魔法が見てとれた。」

「恐縮です。」

「そこでだ。新しく出来た遠征隊の指導者として、私と共についてほしい。相手はみな騎士団員や上級ランクの物ばかりだ。」

えー、ファボ教授とやり合いたかったのに…変な方向に話が進み出したぁ〜。

「いやぁ…俺にそんな資格ないって言うか」

「これは学園側からの命令だ。」

「あ、はい。」

そうして俺は指導役に選ばれた。

……最強への道はまだ遠い。



俺はファボ教授と共に噴水広場に来た。着いた頃には既に大勢の人だかりが出来ており、有名な面々ばかりだ。

「みんな、注目ー!!!」

ファボ教授が叫ぶとみんなが教授を見た後に、俺のことを凝視する。

いやいやいや、俺は別に教師やりたいわけでは無いんだよ…静かに最強目指させてくれぇ。

ただ、学園命令を逆らったら退学も保証できないので引き受けるしかない。

「おいおいファボさん。こんなガキが俺たちの指導役かい?えぇ?」

1人の赤髪の男が前に出てくる。他のみんなも笑う。

「おい、ガキ。お前なんて言うんだよ。」

「ルヒカ。ルヒカ・マージョだ。今日からあなた達の指導役をさせてもらう。」

ここは強気に出ないと嘗められる。

「ほぉ…お前が指導役ねぇ。」

確かに俺は身長では170センチ届かないし、外見の筋肉もない。嘗められて当然か。

「ファボさん…俺達は疑っている。いくらあんたの推薦だろうがなんだろうが、俺たちの指導役になるほどの実力があるのかどうか。」

そして、男は息を吸い、大声で叫ぶ。

「こんな雑魚に資格があるのかってなぁ!!!」

ファボ教授は腕を組みながら不敵に笑う。

「ふふふ、そんなに言うならやってみなさい。すぐにわかりますよ。」

「模擬試合成立だな。」

えぇ、なんか勝手に決まってるし…たのむ!帰らせてくれぇーーー!!!


…間違っている!こんな急に現れたガキがファボさんの推薦枠?しかも俺たちの指導役?嘗めるなよ!

俺…炎童ホムラはあの名誉高き戦闘騎士団【竜王(ドラゴン・キング)】の団員だ。周りとは明らかに才能が違った。俺がこんなガキに負けるわけねぇ!

「降参するなら今のうちだぜぇ?ルヒカ君。」

「それはお互い様だよ、炎童さん。」

2人は距離を置き、木刀を構える。

「攻撃魔法使用は禁止!サポートや強化魔法のみとする!危険な行為をした場合はやめとする!以上、構えてー。」

2人は互いに構える。両者睨み合う緊迫した状況。

「はじめぇ!!!」

俺は始まった瞬間。一気に間合いを詰め、まず縦に一振りする。カンッと音が響き、互いの木刀がぶつかり合う。

体制を整え、俺は怯んだルヒカを追撃する。

カンッ、カンッ、カンッと音が鳴り合う。向こうは防御のみで一向に攻めてこない。いや、攻めれないのか。

「ハッ!やはり蓋を開ければこの程度!」

しかし、俺は次第に違和感に気づく。捌ききれないほどの圧倒的俺の技を、ルヒカは難なく防いでいる。なんなら、それに反撃(カウンター)を入れ始めた。

俺が頭を狙う。防いで弾いたと同時に、勢いよく手首を返し、反撃を入れてくる。

やりにくいな…魔法を使うか。


【永炎の灯火】


炎童が唱えると同時に、全身から炎が現れる。その炎は次第に木刀へおび、渦が舞う。

「悪いな、お前が俺を指導するのが100年早いことを教えてやるよ。」

俺は突きの構えをとり、一瞬で終わらせに行く。

「それが君の本気か。」

目の前のルヒカが呟く。

「いい精度だ。魔法が分散しておらず、必要な能力のみが伸びている。」

「さっきから上から目線で…うるせぇんだよ。」

俺は余裕そうなルヒカに強気に言い返す。癪に障るこの態度。なんでこんなガキが俺の指導?ふざけるなよ。

「俺は【竜王(ドラゴン・キング)】の団員!!!炎童ホムラだ!!!」

俺が全力で胸部を突きにかかる。その時、ルヒカは笑っていた。

「1%だ。魅せてやるよ。」

その瞬間だった。ルヒカの周囲に光と闇の混ざった魔力が渦のように巻く。


「いざ、尋常に。」


そこからは何も覚えちゃいない。






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