表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
82/130

第八十二話 「全員生還」

 〈シリア視点〉


 目を覚ませば。視界一杯に青空が広がっていた。重い体を起こして辺りを見渡すと、ゴツゴツした岩肌に草木が全く生えていない地面。龍の郷に帰還していた。


「(そうだ。レイシュの『夢物語』で夢の世界に入って居たんだったな)」


 結局あの魂達はどうなったかは分からないが、全て夢幻の事だからきっとなんの解決にもなっていないだろう。そう思ってしまう(わたし)は夢がないな。という事を考えて、溜息を吐くと一つの影が私を覆った。


「(なんだ?)」

「シリア殿、お目覚めか?」


 あれ?この声…シグじゃないな。何処かで聞き覚えが。龍帝では無いしなぁ…。もう分からないので振り返るといつのまにか人間の姿に戻っていた炎帝の姿があった。


「炎帝…?魂が戻ってきたのか?」

「そうだな。意識が遠退いたと思えば、気付けばこの通りだ」

「フッ…。そうか。それは良かった。吾達の行動も無駄では無かったという事だ」

「なんだ。其方が何か施してくれたのか?」

「まぁ、少しな」


 夢の世界から侵入したわけだが、きっちりと実現されているわけか。彼女の『夢物語』、流石としか言えないな。炎帝の体に魂が戻っているという事は、皆の体にも魂がもう戻っているという事だ。多分。まぁ、それなら…この件は終了だな。


「次は、自分の事でも調べてみるか…」

「自分の事、ですかな?」

「あぁ。吾はどうも、シリアという存在とは違うらしい」

「なんと」

「吾もはっきりとは分からんが…『叡智』を名乗る奴が言ったんだ。きっとそういう事なんだろう」


 そう言うと、炎帝は隣でよく分からないと言う顔をしながら顎に手を当てていた。吾もよく分からない。


 ───────────────

 〈ラルダ〉視点


 気付けば目が覚めていた。倒れた時には生い茂っていた蒼い花が無い。九十二級は倒せたのか?とりあえず体を起こそう。


「んしょっと…あれ?」


 身を起こすと、皆も同じ様に身を起こしていた。あの戦いは終わったんだ。魂を抜かれた時はどうなるかと思ったけど…。


「目覚めました?」

「あっ、剣聖…っ!?」

「っ!大丈夫ですか?」

「え…。あぁ、うん、まぁね。ちょっと、頭痛がするだけ。大丈夫。気にしないで、直ぐに収ま、る筈だから」


 急に激しい頭痛に襲われた。そして、電波が悪いテレビみたいに途切れ途切れで何かの映像が流れる。誰かが何かから逃げてる…?いや、ダメだ…途切れ途切れでよく分からない。誰かが後ろを振り向くと、多くの男達がたむろしていた。その中央には耳の長い女性が……女性…が。


「っ…!」

「あの…本当に大丈夫ですか?」

「どうした?」

「あぁクレス…目覚めたんですね。ラルダの様子がおかしいんです」

「ん…?」


 頭を抑えないといけないぐらいに頭が痛い。そしてさっき見た映像…その中に写し出されてたあの女性…あの女性は…。


「…………お、お母…さん?」

「え?」

「ねぇ剣聖、クレス…。次に向かう場所はさ。人皇が居る国にしない?」

「は?いきなり何を言ってるんだ?」

「私は彼処に行かなきゃいけないの…。彼処に私の両親が…両親がいるの!」


 気付けば、私はクレスの服の裾を握り締めていた。なんでかは分からないけど、私はあの場所が人皇の国である事は理解出来た。私の顔が必死だったのか知らないけど二人は少し慄きながらこう言った。


「そうか…。分かった、次は其処へ行こう。だが、まずは全員がこうして生きている事に安堵するべきだろ?今回は死人が出たかもしれないんだ」

「そうですね。もう少し九十二級の判断が敏かったら、間に合わず全滅していた可能性もありますからね。取り敢えず一旦休憩しないといけません」

「…そっか。そうだね」


 馬鹿馬鹿しい。まだ仕事も有り余ってると言うのに最終目標を優先しようとするなんて。そうだ、私はあっさりと気絶したけど皆はそれなりに戦ったんだ。休息も必要だ。私は溜息を少し吐いて、落ち着きを取り戻そうとした。その時に、クレイさんの言葉が耳に入った。


「俺に関しちゃ腕を失ったけどよ、皆生き伸びた。結果オーライって奴だが、一つ忘れてねえか?」


 全員が「えっ?」という反応をする。そしてその後にすぐ、ハッと何かを思い出した。私も遅れて思い出す。


「八十八級と『覇道』の戦いはどうなったんだ?」


 その言葉と同時にドンっという音が響く。砂煙が舞い上がり、少しの間視界が悪くなる。


 砂煙が収まり、視界が戻った後。其処を確認すると、八十八級が倒れていた。そして、上空、というよりも崖の上から声がする。


「十七回目だ。もう後が無くなったなリンデル」

「…くっ」


『覇道』が血に濡れた大鉈を肩に乗せて見下ろしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ