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第三十七話 「急成長」

 私は月神の前に立っていた。月神は冷たい顔でこちらを見ていた。


「どうした?もう終わりか?」

「うっ……ハァッ…ハァ…ハァ…もう魔力が保ちません…」


 私は月神と「雷帝」の強化に勤しんでいた。しかし、開始約5分で魔力切れが起きてこの状況である。もう笑うしかない。


「魔力切れか。うん、やはり少ないがまだいける筈だ」

「はぅっ!?うぅぅ……?」


 なんかゾクゾクする。なんか身体に全く別の物が混入してくるような感覚。あれ?私なんかされた?


「どうだ?」

「え?あの…何ですこれ?」

「本来人体に入れるものではなく、武器や防具などに付呪する為の特殊魔力をお前に流し込んだ。これでそうそうに魔力が切れる事は無いだろう。常に増幅していくからな」

「おぉ」


 なんと。また私は別の魔力が手に入ったってことか?それに何?常に増幅していくから、魔力切れを起こさない?ええやん。


「さて、これからは外でやらないとな…」

「え?どうして?」

「その特殊魔力の性質上、開放した場合、お前の「雷帝」などの攻撃魔術に破壊特性が付くからだ」

「成る程。なら試していいですか?」

「え?あ、あぁ…」


 彼は少したじろぐと、そこに真っ黒い塊を精製し置いた。そして手でこれでしてくれ、と施された。よし、やってみよう。魔力切れを起こしている筈なのに、体の疲労は吹き飛び、再び魔力行使を行える気がした。


「「雷槍」。おお、展開出来た」

「この塊はただの打撃では壊れない。それを分かって…」

「えいっ。あっ」


 月神の言葉を遮り、塊をちょっと突いたら、塊が一瞬にしてパンっと弾けた。本当に一瞬である。あれ?出来ないと思ってたけど…。


「(一瞬で特殊魔力を開放、会得しただと…!?)」

「ふぅー…。ん?どうしました?」

「お前、実はもう「霹靂(レブダント)」を習得しているのではないか?」

「無いですよ。「雷槍」を展開するので結構負担が来たんですよ。「霹靂」はまだ習得していない筈です」

「お前は鍛え甲斐のある子供だな…面白い…」


 彼はそう言ってひとりでにニヤけていた。私はどうやら新しい魔力に馴染むのは早く、既に習得した魔力の強化にはとても時間がかかるタイプだそう。これはちゃんと続けていかないとな。


「今日の「雷帝」の強化はここまでだ。次はレイシュとクレスの剣をいなしてもらう」

「はい」


 月神が別の部屋へと向かったので私もそれについて行った。休憩なしかよ…。


 ____________________


 長い廊下を歩いている間、私は一つ考え事をしていた。あまり時間の経たぬ内に体が限界を迎える。これが戦い慣れしていない者の末路かねぇ。しかし、別にこんな私を強化する為にこんな場所に送り込む事は無かったのではなかろうか?後々に何が起こるのかなんて全く分からないけど、例え何かが起きたとしても、別にそんな事、他の降臨者にやらせればいいんじゃないか?そんなマイナスな考えを持っていると違う方の神が話しかけて来た。


『んん?何かお悩み事でも?』

「(別に…ていうか人格が変わったね?)」

『たまにはあっちの方も休ませてあげないといけませんしねぇ。ははは…。人格を多数持つ者は疲れますよ本当に…』

「(そっちの貴方なら、まだ話が出来そうだね。一ついいかな?)」

『はい?何でしょうか?』

「(私をこの場所に送り込んだ理由は何?ただ強くさせる為、って訳でもなさそうだけど)」


 私がそう念じると、神は押し黙った。しばらく沈黙が続き、ようやく神が語り出した。


『私が貴方を此処へ送り込んだ理由は、将来迎えるであろう《怒りの日》に向けて根元から成長してもらう為です…』

「(《怒りの日》?それってあれじゃん…えっと…)」

『貴方の世界ではキリスト教が定めた終末理論でしたっけ?またはレクイエムとしても有名ですねぇ。だが、此方の世界線では違う。突然、それが訪れる。私達が定めた英雄と呼ばれる者が世界各地で再び顕現する。されど、それは救世の英雄にあらず。破壊の限りを尽くす、化生なり。…まぁざっとこんなもんでしょうか…。正確に起こる日が分からないのが怖いものです』

「(そんな事が本当に起きるの?)」

『えぇ。少なくともこの10年の内に』

「(そんな…)」


 神が定めた古き英雄が顕現する。それだとしたら、神を殺せば良いのでは無かろうか?そうすればそれが顕現する事が無くなるのでは…。


『やれるものなら。貴方の身が消し飛んでも良いのであればどうぞそれを』

「(うっ…ちょっとした頭の悪い推測だよ…。私だって生きたいし。それは絶対にしない)」

『ですよねぇ。さぁ、貴方は今目の前の事に集中を、もう目的地に着いていますよ』

「うっ…?あっ」

「どうした?酷い顔をしていたが」

「あっいえ。ただちょっと嫌な話が耳に入って来たので」

「またあの神か…。愁傷だな」


 気付けば私は広い庭の様な場所に出ていた。奥には剣聖とクレスも居る。考え事をしている内に凄い時が過ぎていた気がした。あの話がたったの数分だったなんて…。そうだ月神に聞いてみよう。


「あの、月神様」

「何だ?」

「《怒りの日》って本当に起きるのですか?」

「………そんなもの、起きるかどうかすら分からない。そんなことは良いから始めるぞ!」

「そうですね」


 私は月神を守る様にして構える。しかし、剣聖とクレスは全くもって動かない。どうしたのだろうと思ってよく見てみると、二人ともきょとんとしていた。そして、剣聖が言う。


「あの、『救世』?」

「何?」

「その…いきなりどうしたんですか?身長とかが二回りぐらい大きくなってますけど」

「えっ」


 知ってはいた。いやだって、月神に言われたじゃん。『強大な魔力に身体が対応しようとするから、身体が一気に成長する』って。でも、でもこんな早く成長するなんて思わないよ!


「ちょっと月神様早すぎじゃないですか!?さっき私に何を入れたんですか!?」

「終末定理「殲滅(アポカリプス)」の魔力だ。強大過ぎてあの姿のままでは耐えられなかったんじゃないか?」

「そんなドーピング聞いてないよぉ!?もっとジワジワやってくと思ったんですけど!いきなりこんな!」


 私が喚いてる理由は終末定理に入ってる「殲滅」をねじ込められた事じゃなく、もっと単純な事だ。いや寧ろ「殲滅」を入れられたお陰で魔力量が増えた気がするけど…。


「胸キッツ…」

「胸が痛いぐらいで済んで良かったじゃないか。本来「殲滅」なんて取り込んだら真っ先に破裂するぞ」

「そういう痛みじゃない!大きくてキツイの!服も小さいしさ!」

「あっ…。うん…もう少し考えるべきだったか?」


 成長に伴い、胸だって大きくなる。成長する毎に服も小さくなって行く。つまり私は今、そういう状況にいるのだ。あの神は今この状況をどう見てるだろうか。笑い転げてるかな?まあどうでも良いか。


 というわけで一気に高校生ぐらいの身長になった。何だか懐かしい高さだ。んじゃあもう3、4歳って言わず、19歳とか20歳とか言っても大丈夫だな!

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