第三十八話 「剣聖と剣鬼」
急いで剣聖が大きめの服を着せてくれた。あの軍服である。ふーむ…。人間族の服を着るのはちょっとやだけど今はしょうがない。サイズのあう服が無いからね。でも少しは隠させてくれて良いじゃ無いですか…。なんでみんなの前で着替えにゃならんのだ。
「さぁ!やりましょーう!」
「妙にやる気だな…あいつ…」
「多分さっきの恥ずかしさで何かが切れたんでしょう…公開しながら着替えたんですからね…」
ヒソヒソと何かが聞こえてくる。知らないし、だって私こっちでは3歳だもん!成長したって年齢は3歳だ!恥ずかしくなんかない!いや本当は恥ずかしいけど…。だってこっちのと合わせたら20歳だもん…。
「さ、アクシデントがあったが、始めるとしよう。ルールは分かっているな?」
「ルール?」
「あぁ、ラルダには言ってなかったか。では改めて、制限時間は10分。レイシュとクレスは俺を狙ってくる。10分間でレイシュとクレスの剣撃を一回も俺に当てずに守り切れば我らの勝ちでもうこの訓練はしなくて良いだろう。一発でも当たれば我らの敗北で次の日もう一度同じものを繰り返す。分かったな?」
「はい」
一発でも当てられたらやり直し。キツいな。ましてやあちらは剣の天才の剣聖。そしてその実力が未知数のクレス…。キツすぎない?
「せめて5回当たったらにしませんか?」
「5回も0回も変わらん」
「まあ確かに…」
相手があれだもんな…。守りきれるはずないと思ってるのか。まあその通りなんだけど。
「じゃあ、初めて良いか?」
「大丈夫ですよ」
「おう」
「それでは、始め」
軽い合図と共に、クレスが走り出した。いや、速い速い。めっちゃ速い。あんなの受け止めれるかな?あっさりとクレスが間近に来る。私は「障壁」を展開した。
「「壁守」」
「ふっ!」
ガキンという金属音が鳴り響く。その後に障壁が揺れた。何事かと思い、見るとクレスが障壁を地面として着地していた。おぉう…。そんな強い勢いで来なくても。しかし、剣聖はどこへ行ったんでしょう。そう思い、キョロキョロと周りを見渡しても、剣聖は居なかった。
「何処だ…?」
「それでは一本取らせていただきますね」
「えっ?」
突如剣聖の声が聞こえたと思ったら、障壁が砕けた。まるでガラスのように。魔力障壁は魔力を切らさなければ砕けない。私はまだ魔力が切れていないのに。トスっという音が後ろからした。おそらく月神が当てられたんだろう。
「一本。ありがとうございました」
「むぅ…。何されたか分かんないんだけど…」
「ちょっと裂いただけですよ」
そう言って人差し指を立てて言ってきた。なんかお姉ちゃんみたいだなあ。この人何歳なんだろ?
「おい何だ?もう終わりか?」
「私の一本勝ちです!」
「おーすげー。次は俺に取らせろよ?」
「分かってますよぉ〜」
剣聖が凄い喜んでる…。なんかあんなに喜んでるならまあ、良いかなぁ…。と思っていたら、肩を叩かれた。
「当てられたから分かっているな?」
「はい。また明日もよろしくお願いします」
「あぁ」
月神は私の放った言葉にそう返事をして、去っていった。それに私も吊られるように、
「よし、また明日も頑張るか!」
そう言って立ち上がり、私は神殿の中に入った。
__________
その後、私は直ぐに眠ったのだけど、剣聖とクレスはまだ庭に残っていたようだ。
「さっきの障壁破りは見事な物だったぞ」
「そうですか?ありがとうございます」
二人は庭先で座って星を見ながら話していた。さっきの戦い(果たして戦いと呼べるのか)の事で話していた。
「そういえば、貴方はどうして先に向かって行ったんですか?」
「奴が障壁を展開するより先に叩けば良かったんだが…まあ間に合わなかったんだが」
「ははは。まあ貴方のおかげで私は障壁を破れた訳ですし、感謝ですよ」
「はっ、いらん感謝だな」
そう言って彼は立ち上がり神殿へと戻って行った。何処へ行ったのかと剣聖は思ったが直ぐに戻って来たので安心した。そして、彼の手元には二つの杯と酒が握られていた。
「お酒ですかぁ?明日の訓練に響きません?」
「大丈夫だ。酔わない程度に呑めばバレないだろう、それに」
言いながら酒を注いでいく。透明に輝く液体が注がれていく。自然と剣聖の視線は酒に行く。それをクレスはニヤニヤしながらそれを見ていた。
「お前だって疲れてるはずだろう?ここで一つ、酒でも呑んで少しでも疲れを癒したらどうだ?」
そう言って剣聖に杯を渡す。酒が輝く杯を。剣聖は喉をゴクリと鳴らして、
「本当に良いんですかね…。バレたら貴方の所為ですからね!」
そう言って酒を流し込んでいった。彼女は酒のおいしさに声を出さずにはいられなかった。
「あふぅ…。美味しいですねこのお酒ぇ…」
「美味いだろう?もう一杯行こう」
剣聖の空になった杯に酒を注いでいく。それを剣聖はこくりこくりと飲み進めて行った。
数時間が経過し剣聖も顔が真っ赤になって出来上がり、へべれけな表情になっていた。そして次第に愚痴も漏らすようになり、
「はぁー…本当に『戦殺』にはうんざりですよ。人の服が脱がされていくのを笑って見てるなんて!」
「そうかそうか。お前も大変だったんだなぁ!ははは!」
クレスもそれを笑いながら対応していた。二人とも既に出来上がっているのだ。二人とも元の状態とはかけ離れていた。
そのまま酒に没頭した二人は眠ってしまい、月神に見つかってこっぴどく怒られるのだがそれはまた別の話。




