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5.マリー、綺麗な星空を見る。

マリーの家の風呂がいつまで経っても治らなかったのだが、修理屋は、「ああだ。こうだ」と理屈を述べては帰って行ってしまうのであった。しかし、最後の時がやって来た。

「治りました」

多額の金を支払い、頭を下げて、厄介払いした。マリーは疲れ切った。風呂を入れて見た 。半分程度しか炊けてない。直政が帰って来た。 口論・議論になった。領収書に出張費がわんさか付いていた。直政は丁寧に日本の文化を説いて聞かせた。ここは喧嘩するのは得策ではない。鶴見というのは口やかましい所、悪い評判がすぐ広まる。ましてや近所のおばはんの親戚、どないな目にあわされるか知れたもんではない。ああでもない、こうでもない、困ったもんだ、と言った。後日、サービス・センターに連絡することになった。

『ぬくぬく温泉』は休日に入った。それと行き違いに、本当に小学校近くの銭湯は再開を始めた。二人にとっては初めて入る湯である。

ガラッと開けると、番台で男と主人(男)が揉め事をやっている。

「なっ、ええやん、一度だけ。一遍でええ、只でお風呂入らせて〜な」

「あかん!只でお風呂、入らせろなんて、聞いたことない」

「そこんところを何とか。今日だけ。今回一回だけ。なあ~、頼むわ~」

「 あかん!」

「そう言わんと、頼む」

「 何処の世界に、只で入らせる、な~んて、聞いたこともない」

何をやっているのだろうか、マリーは思った。近所の男だろう。一度入らせて癖になったのだろう。仏の顔も一度までとはよく言ったものだ。大胆と言えば大胆。快挙と言えば快挙である。

湯殿を開ければふわ~っと湯気が顔にかかる。これが当たり前な風呂のリアクションである。自分のうちの冷えた風呂と大違いである。

さて、小僧がいた。マリーだと分かると飛んで来た。

「まーまおばちゃん!まーまおばちゃんや。おかあちゃん、まーまーおばちゃんやで!まーまーおばちゃん、きたん」

「ああ、来たよ。良秋くん、元気してた?風邪ひいてない?」

「かぜひいてないよ。げんきしてたよ。おかあちゃん、ほら、ほら、まーまーのおばちゃんやで」

「あーほんま、ママー・おばちゃんや~ 」

「こちらに来られたんですね」

「『ぬくぬく温泉』が工事に入ったから遠いけど、二人を連れて」

大人達が話すと、良秋は中断していた遊びを再開した。いつもの「電車ごっこ」。しかし、いつもと違って感じが出ない。何やら見られてるようで落ち着かない。見知らぬ客が多くて怒られそうな気がするのだ。それと椅子が低い。これでは上手く電車が繋がらない。

「・・・・・・。おかあちゃん、おしっこ」

「そこでしとき」

指さす先に「排水溝」。「つー」っと、出している。

「おかあちゃん、みず、のどかわいた」

「そこの水道の、飲んだらあかんで」

里子は良秋を連れて急いで浴室を出て行く。着替え場の水道場で、良秋の脇を抱えて「高い、高い」をやって水を飲ましている。子供の面倒は大変だ。マリーは感心している。自分は勉強している方が気が楽だと思った。

直政とマリーが外に出る頃には、星が一杯出ていた。1970年代当時、この頃、「光化学スモッグ」が大有名で、大阪では、星は余り見れないとされていた。しかし、今晩のように、こんなに星が見える日は珍しい。二人はそのことを話しあった。

次の日、「サービス・センター」がやって来て、瞬く間に治して、去って行った。矢張り、本物は違う。最初からこうすればよかったのである。次回からはそうすることにした。マリーは大声で話し、直政は「うんうん」と頷いていた。





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