第24話 新たな事件
「全く……なんであんなに人が集まるんだか……」
時刻は8時。
俺はゴルムとの決闘の後、群がってきてしまったギャラリーから逃げるように決闘場所から逃げ、通りを一人で歩いているところだ。
「決闘を始めた時は完全に人気がなかったと思ったんだが……」
というより、そういう場所を選んで決闘を始めたのだ。
人が居なかったのは確かなはず。
……そういえば、ゴルムが建物を破壊したりしていたか。
あれで人が来ないほうがおかしいな。
ゴルムが決闘で見せた技の数々。
かなりの破壊力を持っていたが、あれらは恐らく初級スキルの合わせ技なのだろう。
自分のスキルの特徴を見極め、効率的に組み合わせて実用化する。
そうすることで、あれだけの技を編み出すことができるのだ。
俺も新しいスキルを手に入れることだけではなく、今あるスキルを鍛えることにも力を入れるべきだろう。
と、先ほどの決闘で得たことを振り返ったところで、今後の予定について思考を向ける。
ジュラス広原の先にあったあの村だが、昨日ボス討伐に成功した数人が既に攻略を始めているらしい。
ジュラス広原のように苦戦するようなことがないのならば、わざわざ行く必要もないだろう。
強いプレイヤーのひしめく最前線で狩りをしたところで、モンスターを取られて終わるだけだ。
余計なことをして目立つつもりは毛頭ない。
そういうのはあの大剣ぶんすか野郎に任せておけばいいだろう。
ということで俺が向かうべきエリアは西、北、南エリアのどれかだ。
北エリア――ゴルゴ山の攻略状況は芳しくないらしい。
幸い、レア過ぎるのかあれ以来橙大蛇は現れていないものの、モンスターのレベルが他のエリアよりも高めだ。
下層のヘビやトカゲは何とかなるが、中層に出るサルやシカ等が群れで数十匹単位で襲ってくるため、集団でも難しいらしい。
サルはサルでも、上位種は武装すらしているとか。
ゴルムによると西エリア――バグズフォレストにも魔法を使うアリが居たらしいし、武器魔法を扱えるのはプレイヤーだけではないということだろう。
そのバグズフォレストは、ほぼ攻略が行われていない。
ムシムシランドなのだから仕方ないとは言えるが、このまま放置しておくわけにもいかないだろう。
ある程度進むと巨大なアリ塚があり、そのアリの巣がダンジョンになっているそうだ。
奥にはボスが居ると考えられている。
少しずつ攻略が進んでいるものの、ボスまで辿り着くのは当分先になりそうだが。
何にせよ、俺は1m大の巨大アリがわらわらいるアリワールドには入りたくない。
南――キーア海岸というらしいが、ここが一番攻略が難航しているエリアだ。
砂浜には足を取られ、地中からの急襲有り。
更には水の中からも攻撃が飛んでくるという超アクティブフィールドだ。
水に入って戦うこともできるが、まだ水中で息をするアイテムなどは見つかっていないためむしろ危険。
一人、それ系のスキルを持ったプレイヤーがいるそうだが、無論一人だけで攻略をすることができるはずもなく。
とりあえず足場固めという感じで攻略しているそうだ。
ちなみにカルカの南に広がる海だが、そこまで大きくはない……らしい。
ほとんど喋らないNPCの言葉から推測できるというだけだから違う可能性もある、とはアドリアの言葉だ。
その向こうには新大陸が広がっているらしいが詳細は謎。
カルカの北、ヘルプト山脈を越えた先に何があるかも謎。
山を越えるのはともかく海を越えるにはそれなりの準備が要るだろう。
思った以上に広い世界だ。
ちなみに昨日のイノシシのドロップだが、これは特筆しておく必要があるだろう。
△△△△
取得アイテム
バーサークボアの肉×22
バーサークボアの毛皮×30
バーサークボアの牙×1
バーサークボアの鼻×1
暴獣の紅玉×1(FBボーナス)
ご存知、紅玉さんである。
素材のランクは6、橙大蛇と同級だ。
紅玉の横に書いてあるFBボーナスというのは、ファーストブレイクボーナス、つまり一番最初に倒した証ということだ。
案外大蛇の紅玉も、最初に橙大蛇を倒した成果だったのかもしれない。
昨日は聞く暇がなかったが、レイナにも持っているかどうか聞いてみる必要があるだろうか。
「――っと?」
のんびりと考えながら行く宛もなく歩いていると、視線の先、プライベートエリアの傍のベンチにそのレイナが腰掛けているのが目に入った。
「あれ?」
確かレイナは決闘の前にも同じ場所に居たはずだ。
誰かを待っているにしても長すぎはしないだろうか。
「おい、レイナ? どうしたんだ?」
近づいて声を掛けてみる。
俺の声が届いた瞬間、レイナは大げさなまでに驚いて立ち上がった。
「わ、わ、わ、リュウ? ど、どうしたって何が?」
振り向いて俺の姿を認めると、つっかえながら何とか質問を口にする。
レイナは冷静で落ち着いた性格をしているものだと思っていたのだが、違ったのだろうか。
「……誰か待ってたんじゃないのか?」
「い、いや、だれも待ってないわよ? 私もついさっきここに来ただけだし!」
興奮して少し声を大きくするレイナ。
俺とゴルムが決闘を始めたのは30分は前だ。
レイナにとっては30分など大した時の流れではないということか。
「そ、それで、あなたはどうしたのよ?」
「……いや、知ってる顔を見たから声を掛けただけだよ。これからどっか狩りにでも出掛けようと思ってたところだ」
「ふ、ふーん……? それ、私も一緒に行っていいかしら……?」
興味なさげに言った後、おずおずといった様子で切り出してくる。
「別に構わないけど……良いのか? 人を待ってたんじゃ……」
「べ、別にそういう訳じゃ……ああ、もういいわよ、めんどくさい。本当はね、あなたを待ってたの」
「俺を?」
「ほら、私、まだ知り合いもいないし、ゲーム初心者だから何すればいいか分からないし……それに……」
言葉に詰まり、みるみるうちにレイナの顔が赤くなっていく。
さては怒られるのかと身構える俺だったが、レイナは意を決したように目を瞑って言った。
「た、頼れって、言ってくれたでしょ? 私、一人だと心細くて……」
恥ずかしそうにそう言うレイナ。
ますます昨日のレイナとのギャップを感じるが、これが本来のレイナということなのだろう。
何にせよ、俺が自分で言ったことなのだから投げ出す訳にはいかない。
「……そっか。分かった。俺にできることなんて多くないだろうけど、俺で良いなら力になるよ」
どういうことなのかいまいち飲み込めてないものの、やることは単純。
ただ一緒に狩りに行くだけだ。
断る理由など何もない。
そう言うと、レイナは嬉しそうに笑った。
「ありがとう。じゃあ、これからよろしく頼むわね」
レイナにパーティー申請を送り、受諾してもらう。
疑問に思うところもあるが、たまにはペアで行動するのも悪くはないだろう。
そういうことで、俺とレイナが向かったのはゴルゴ山だ。
話を聞く限り南のキーア海岸には行く気になれないし、女性であるレイナが居る以上バグズフォレストは論外。
消去法で必然的にこの場所に来ることになったわけだ。
「んで、あれは何なんだろうな?」
「……何かしら。ちょっと深刻そうだけど……」
ゴルゴ山の麓、まだモンスターが出ない安全圏に、10人ほどのプレイヤーが集まっていた。
歪な輪を作りながら、真面目な様子で何やら話し込んでいる。
「おい、なんかあったのか?」
「ん?」
近づいて声を掛けると、話していた赤髪の刀戦士がこちらに訝しげな視線を送る。
ちらりと俺とレイナの顔を見た後に、その視線を俺の腰元に向けて更に訝しげに眉を潜める。
気持ちは分かるが、武器を持っていないことに関しては見逃してくれると嬉しい。
幸い、赤髪の彼はすぐに視線を戻し、俺達に向けて言葉を発する。
「ちょっと厄介なことになっててな。彼の話によると、プレイヤーが2人、ゴルゴ山から帰って来ていないそうだ」
そう言ってチラリと視線を他へ向ける。
その方向には、顔を不安そうに歪める緑の髪の青年が一人。
「あいつら、昨日の午前に山に入ったのにまだ戻ってきてねえんだ! メッセ送っても何も反応ねえし、なんかやべえことが起きてんだよ!」
興奮した様子でそうまくし立てる緑髪の青年。
「……詳しく聞かせてもらえるか?」
ひしひしと感じる嫌な予感に、俺はそう言わざるを得なかった。
曰く。
ゴルゴ山には滅多に出てこないレアなモンスターがいる。
そいつはどうやら雑魚を何匹も狩ることで出現するようだ。
3人でパーティを組んで雑魚を狩るも一向に出てこない。
嫌気がさした一人が二人に提案。
『もう飽きた。どうせ帰るんなら死んで帰らないか?』
ということでゴルゴ山の強行突破を決行した。
縄張りを荒らされたサルが襲い掛かって来ても無視し、追いかけて来てもひたすら逃げて上を目指す。
道中に他のプレイヤーが居たらどうするつもりだったんだと突っ込みたくなる話だが、幸か不幸か、今回はそのようなことにはならなかった。
プレイヤーの一人、ここに居る緑髪のプレイヤーは、中層でモンスターにやられてカルカへと死に戻り。
すぐに他の二人も帰ってくると思ったが一向にその気配はない。
結局音沙汰がないまま1日が経過し、今へと至る、ということだそうだ。
「確かにこりゃ、奇妙な話だな……」
率直な感想を漏らす。
強いモンスターにターゲットされても無視して目的地を目指す。
ゲームではそれなりにある話だ。
だが、モンスターに倒されて戻るにしろ目的を達成して戻るにしろ、1日も帰ってこないというのはおかしい。
道に迷った等の理由で戻ってこれなくなったとしても、メッセージくらいは送れるはずだ。
これは明らかに何らかのアクシデントに遭遇したという事だろう。
「特殊能力を持ったモンスターか、イベントに巻き込まれたか、理由としてはその辺だろうな」
集団の中心として話す、フウマという赤髪のプレイヤーはそう締め括った。
果たして本当にそうだろうか。
フウマの言葉を真剣に吟味する。
この事件に、魔神が。
突然ボスエリアに現れた魔神シルファリオンや女神ライラなどが関わっている可能性はないだろうか。
この中であいつらを知っているのは俺だけだろう。
しかし、情報が少なすぎて、現時点では何も言えない。
少なくとも、頭の片隅に入れておく必要はあるだろう。
「ここに集まっているプレイヤーで、二人のプレイヤーを探しつつ攻略をしようという話になっている。経験値やアイテムドロップよりも捜索と攻略が優先だな」
ボランティアみたいな物だろう。
協力してやりたいとは思うが、まだアクシデントに巻き込まれたと決まったわけでもない。
事態がそこまで深刻でない以上、積極的に関わることは避けたかった。
「悪い。俺たちは戦闘の方が目的だから捜索には付き合えない。何か手掛かりが見つかったら連絡する」
「そうか。こっちとしても無理強いをするつもりはない。もしかしたら何事もなく帰ってくるかもしれないしな」
俺はフウマにフレンド申請を送り、その場を後にした。
「なんで断ったのよ?」
フウマと話している間は黙っていたレイナが、若干不機嫌そうに問いかけてくる。
「実際、そこまで大事でもないだろ。それにあんだけ人数がいるんだ。俺達二人が加わったところで、そこまで効果があるとは思えないんだよ」
ここはゲームなのだからアクシデントと言えどたかが知れている、と付け加えようと思ったが止めておく。
もしかしたらこの事態には魔神が関わっている可能性もある。
そしてもし仮にあの存在が関わっているのだとしたら、どんな異常が起きたとしても俺は受け入れてしまえるだろう。
それ程の何かを、あの魔神からは感じた。
「ふぅん、まぁ私たちは私たちで探せばいいわよね」
レイナは一人で納得したようだった。
意外と、人助けの精神はあるらしい。
「ふんっ!」
ゴルゴ山の麓。
前回と同じく上から降ってくるヘビを潰しながら進む。
「……」
レイナはというと……俺の後ろに張り付いていた。
「なんでこんなにヘビが居るのよ! 気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い!」
「あのなぁ、そういうエリア何だから仕方ないだろうが。あとそんなに張り付くな、暑い、離れろ」
前かがみになりながら俺の腹に手を回し、頬を俺の背中に押し付けているレイナ。
本人はヘビへの恐怖から何とも思っていないのだろうが、俺は平常心ではいられない。
胸やらなんやらが当たって色々と意識してしまうし、レイナは紛れも無い超絶美人。
一高校生でありそういうことに全く耐性がない俺は、暴走しないように自制するだけで精一杯だ。
離れて欲しいが離れてほしくない。
そんな矛盾が俺の中でぐるぐると暴れまわっていた。
「なんでよ! 怖いの! 離れないでよね!」
ヘビを目に入れないようにしながら叫ぶレイナ。
そろそろ自制しきれなくなっていた俺は、名残惜しさを感じながらもこの天国から抜け出ることを決めた。
「あ、そうだ」
「……何よ」
「俺の服、ヘビの皮でできてるぞ」
「ひぃぃぃ!!」
叫びながら猛スピードで俺から離れ後退、そのまま木に頭をぶつけてふらつき、衝撃で落ちてきたヘビがレイナの頭の上に乗っかり――。
「いやーーーっ!」
バタバタと暴れてどこかへ走って行ってしまった。
「……なんて危険な奴なんだ」
色々な意味を込めてそう呟く。
その場で呆然と立ち尽くしていると、少ししてからレイナがバタバタと駆け戻ってくる。
――後ろにトカゲを従えて。
「リュウ! 助けて! 助けて!」
「ほんっとにうるさい奴だなお前は!」
[威圧]で動きを止めつつ拳を叩き込む。
3発程入れた辺りでトカゲは動かなくなった。
「気持ち悪いものは気持ち悪いのよ!」
「もう帰れよ……」
この調子でこれから保つとは思えないんだが。
「いいわよ。中層まで行けばヘビも居なくなるんでしょう?……そこまではお願い」
「……はぁ。分かったよ。でもあんまりしがみつかないでくれ」
「う……分かったわよ」
自分のしていたことを思い出したのか、少し頬を染めながら承諾するレイナ。
そういう反応をされると本当にどうしていいかわからなくなるのだが。
「にしても、手掛かりらしい手掛かりは見つからないよな」
「そ、そうね」
慌てて話題を変えると、これ幸いとレイナも乗っかってくる。
未だにプレイヤー二人が消えた件については、めぼしい情報は見つかっていない。
まぁそっちに関してはついでなのだし、見つからなくても構わないとは思っているが。
「下層だと敵も弱いし、とっとと上に上がるとするか」
「早く行きましょ。早く」
レイナが先行して手招きをしていると思ったら、上からヘビが落ちてきて慌てて俺の背中へと避難する。
そんな慌ただしい戦闘を繰り返しながら、俺たちは段々とゴルゴ山を登っていくのだった。
「……なんか雰囲気が変わったな」
ずっと聞こえていたヘビの移動音や鳥のさえずりが止み、周囲が少し静かになる。
聞こえるのはビュオオッという風の音だけだ。
「そうね。中層に入ったってことかしら」
答えるレイナは毅然とした態度で左手に剣を構えている。
寸前までビクビクしながら歩いていた人とは思えない毅然さだ。
「アドリアの情報によると出てくるモンスターはシカやサル……か。群れでの行動ってのは厄介だからな。しっかり協力しながらいかないと」
「ちゃんと私に合わせなさいよね」
「……ここにもヘビが出るかもなー」
「私も離れないようにするわよ!」
軽口を叩きあいながら歩を進める。
レイナはかなり強いし、俺もそこそこには強くなっていると思う。
だが初見のフィールドで油断していいはずもない。
しっかりと周囲を警戒しながら進む。
「そういやレイナ。大イノシシのドロップで紅玉ってアイテム出たか?」
ふと思い出して尋ねる。
「大イノシシって、昨日のあのボスの事? そんなアイテムはなかったと思うけど……それがどうしたの?」
「大したことじゃないんだけどな。ボスを一番最初に倒すとファーストブレイクボーナスっていって特殊なアイテムをもらえるんだよ。レイナがもらえなかったってことはまだ何かしらの条件があるみたいだけど……まぁ要検証ってとこだな」
「ふぅん、それって、有用なアイテムなの?」
「そりゃあ便利だぞ。生産スキルを大幅に上げられるし、こうやって装備に加工してもらえばそのボスに対応したスキルも手に入る」
俺の胸元に光る首飾りを見せる。
橙大蛇の紅玉から手に入ったスキルは[毒付与]。
橙大蛇は毒を使った攻撃をしてきていたのだし、そのボスに対応するスキルが手に入るのは確実と思っていいだろう。
となると、大イノシシの紅玉からは一体どんなスキルが手に入るのか。
「そうなんだ。じゃあ私も次から狙ってみようかしら」
「次にボスが発見されるとしたらどこだろうな。ゴルゴ山は案外広いけど他エリアに比べたら攻略は楽そうか?」
「ここでボスが出るとしたら何かしら。ジュラス広原はイノシシが雑魚として出てきたし――」
「じゃあヘビだな」
「やめて」
他愛のない会話をしながら中層を進んでいく。
しかし10分程経っても、モンスターと遭遇する気配はなかった。
「……流石におかしいよな」
「そうよね」
疑問に思いながら口にすると、レイナも同意してくる。
下層のヘビ嵐からのこの凪だ。
下層が異常だったとも言えるが、それにしてもこの遭遇率はおかしい。
「集団で行動してるから一塊になっててそうそう出会わないってことかしら」
「うーん。だとしたら攻略も楽だから歓迎なんだけどなぁ」
何かが気になる。
だが、耳を澄ませても何も聞こえない。
聞こえるのは、相変わらず響く風の音のみで。
「何か気になるなぁ。まぁ精々警戒を怠らないように――」
そんなことを話していなければ恐らく気付けなかっただろう。
――一本の矢がレイナへと放たれてきていたことに。
「嘘、だろっ!」
「え?」
全く気付かずに立ち尽くすレイナに迫る矢。
それがレイナの背中に突き刺さる直前、手を伸ばして何とか掴み取ることに成功する。
「どういうことだ……? 全く気づかなかった……!」
いや、正確には全くではない。
風の音は常に聞こえていた。
つまり――。
「意図的に風の音に矢の風切り音を紛れさせたとでもいうのかよ……?」
本当にそうだとしたら、このモンスターはとてつもなく知能が高いということになる。
だが俺の脳内は同時に別の事も考えていた。
中層に入ってから攻撃が一切なかった今までの10分間、奴らは何をしていた?
もし奴らが、戦闘に入るまでの準備を整えていたのだとしたら?
そしてその準備が終わると同時に矢を放ってきていたのだとしたら?
そこまで考えた時、ようやく気付いた。
夥しい数の生物が遠くから近づいてきていることに。
「……おい、レイナ、逃げるぞ」
「……え? 逃げるってどこに?」
「どこでもいい! こいつらはヤバイ! まともに戦ったらとんでもないことになる!」
レイナの手を引いて走り出す。
それと同時だった。
100匹を超えるサルが、武器を構えて樹上に姿を現したのは。




