あなたは時々境界線を引いて
十三日目、朝。
頭が痛い。
寝返りをうって反対側を向くと、そこには金髪の人がいた。
「え、誰?!」
軍人さんが無防備に寝ていらっしゃいました。
それでいいのか軍人さん。
この状態で敵が襲ってきたらどうするんでしょう。
脳内シュミレーションだけじゃ足りなくて、そっと首元に手を伸ばしてみる。
そーっと。
首筋に手が触れるか触れないか、のときに、
「俺を殺す気? 千早」
にやにやした軍人さんがいた。
「っざけんな!」
とりあえず叫んで殴っておいた。
「さっきのは完全に八つ当たりだよね千早」
「…………別に?」
鳩尾に拳を叩き込んだせいか、軍人さんはお腹をさすりながら言う。
朝ごはんを用意して食べて、いってきます、の前に。
「私に無断で外出しないでください」
釘を刺すと、軍人さんはにやっと嫌な笑みを浮かべた。
「じゃあ女の子ここに連れ込んでいいってこと?」
「好きにしてください。でも香水の匂いとか勘弁してくださいね。父がうるさいので」
にこっと笑って返すと、軍人さんは手をひらひらとふってはいはい、と言った。
「からかってみただけだよ」
と続けて。
じゃあ最初から言うな馬鹿。
行ってきますもなしに家を出た。
あ、扱いにくい……。
学校から帰ってくると、TVの前に座ってビールを飲んでる軍事さんがいた。
なんか、ちょっとだけ、安心した。
「お帰り。今日は三分十五秒早かったね」
「それ、いつが基準なんですか」
いつもいつもきっちり私を見てる軍人さんはある意味気持ち悪い。
時間にきっちりしすぎだよ。
「最初の日だけど」
「そうですか」
軍人さんはビールの横に銃らしき物体を置いている。
「手入れですか?」
そろっと近寄りながら聞くと、軍人さんは優しい顔で笑った。
「うん。結構使い込んでるからねェ」
そういう顔もできるんだ。
なんか人間らしい一面を見たような気がする。
「ん? 撃ってみたい?」
突然聞いてきた軍人さんに私は辟易した。
現代日本の女子高生に銃試し撃ちする? って聞く大人がどこにいますか!
「いえ……遠慮します」
丁重にお断りした。
「ぐんじ……ザシャさん。それ、護身用とかに持っていってないでしょうね」
疑う目で軍人さんを見ると、彼はそろっと目をそらした。図星か。
軍人のくせに。ポーカーフェイスくらいできないんですか。
「いやー……小さいの一つだけだから。ね、いいだろ?」
許して、みたいに言うから、私はまた分厚い本を取り出した。
「銃刀法ありますけど読みますか? また一から現代日本について説明しなければならないんですか? 軍人さんアホですか」
「…………ごめん」
今度はうなだれた。感情の起伏が激しい人だ。
「ご飯ですから、ビール飲むの中断してください」
「はーい」
「それにしても軍人さん、結構な量飲んでるのにあんまり酔いませんね」
「だねぇ」
そんなに強くはないんだけどな、と言いながらビールを片付ける。
今度お母さんに焼酎とか持ってきてもらって酔っ払わせてみようか。どうなるかおもしろそう。
「そこの書類片付けてください」
銃の横に散らばっていた紙類を一瞥する。
軍人さんの表情が固まった。
「どうしたんです? やらないなら私やりますよ」
「いや、自分でや――
「さっさと片付けてくださ……………………………………」
私は自分の行動を後悔した。
書類は、ただの書類じゃなくて、多分手紙。封筒に住所と宛名が書いてあって、軍人さんの名前が見える。
そして、紙の中に、人の顔が。
「これ、恋人、ですか?」
うっかり口を滑らせてしまった。
軍人さんはすっと手紙を仕舞うと、綺麗な笑顔を浮かべた。
「違うよ。友達」
あ、嘘だ。
「綺麗な方ですね」
「そうだね」
会話終了。気まずい雰囲気でご飯を食べる。
そうだよ、軍人さんはもう成人してるし、恋人のひとりやふたり……いてもおかしくないかもしれない。
恋人と離れ離れになるって、なんて悲しいんだろう。
いつ戻れるか分からない、不安定な場所で、軍人さんは生きてるんだ。
すごく、辛い。
……?
じゃあなんで、ホテル街にいたんだろう。
「それは千早には言えないね」
あ、私口に出してた。
にやっと笑った軍人さんとは、その日それきり会話をしなかった。
なんか、ぎくしゃくしてる。
びこーず作者VS登場人物あとがきこーなー(・・||||rパチパチ
作者:さあ、ザシャくんに恋人疑惑。
ザシャ:やだなァ、恋人じゃなくて友達だよ。
作者:君の女の子の友達は大勢いるんだね。
ザシャ:それを言われると辛いなァ。
作者:若いっていいね。ま、頑張って。
ザシャ:作者の方が若いだろ。
作者:いや、私は君たちの親だからね。
ザシャ:へー。で、次回どうすんの?
作者:すれ違う。
ザシャ:まじ?
作者:うん。これからちょっとだけ喧嘩編。
ザシャ:えー? 俺また悪人な訳?
作者:そうだね。というかお前以外悪人はいないから。
ザシャ:ふーん。ま、頑張る。
千早:軍人さーん! ご飯ですよー。
作者:いってらっしゃい、軍人さん(笑
ザシャ:はいはい。じゃあまた。
作者:次回でお会いしましょう!




