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【BL】前世が俺の友人で、いまだに俺のことが好きだって本当ですか  作者: Bee
前世が俺の友人で、いまだに俺のことが好きだって本当ですか
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 薄々気づいてた。黒木が俺のこと好きだったこと。


 だって抱きついてくるのはいつも俺にだけだったし、それに山から帰ってきたら、いつもお土産って観光地の土産屋にありそうな変なキーホルダーくれてたし。


 そのキーホルダーも、捨てるに捨てられず今も部屋のどっかにあるはず。


 でも俺には尚人がいたから、本当はずっと迷惑だった。好きだって告白されたわけでもないから、邪険にすることもできないし。


「俺、こうしてユウジと2人きりに、ずっとなりたかったんだよね。でもユウジには恋人がいるからさー。俺てっきり女の人とつきあってんのかと思って遠慮してたけど、相手が男だって知って、あとですげー後悔した」


 黒木が隣にうつ伏せで寝転び、すねた子供のように唇を尖らせた。


「さっさと言えば良かった〜って。恋人と嬉しそうに歩く姿見ちゃってさ、もう言えなくなっちゃって。ってか、今本人に言っちゃってるじゃんね、俺〜!」


 両手で顔を覆い、キャッとわざとらしく恥ずかしさを演出する黒木に、なんだか今の状況がバカバカしくなってきた。


「んで? 今も付き合ってんの?」

「……あー……いや……」

「別れたのか?」

「んー……まあ…………」

「うっそ、マジで?」

「マジ」

「そっかー。……あーそれって、俺にもまたチャンスあるってこと? 俺ちょっと顔ニヤついてきたかも〜」

「おい、別れたからってお前と付き合うとかは……」


 死んでんのに、何言ってんだって俺は。


「わーってるって。冗談。んで、なんでここに来ちゃったんだよ。なにかちょっとでも覚えてないの?」

「……」


 なんで死んだかとか、何がどうなって死ぬようなことになったのかは分からない。


 でも死ぬ理由はあった。


「覚えてないってことは事故? ……もしかして殺人!?」


 ギョッとしたような顔をした黒木に、俺は慌てた。


「いやいや、殺されたりとかはねーよ! 絶対! 最後は1人で車に乗ってたのは覚えてるし。……ただまあその……、事故するような運転をしてた可能性はある……」

「え? え? 何? ユウジってそんなスピード出したりするタイプだったっけ? もしかして運転すると人が変わるタイプ?」

「あー……」


 言いたくない。こんなみっともないこと。言いたくないけど、……言ってスッキリしちまうか。もう死んじゃってるわけだし。黒木なら笑わず聞いてくれるかな。


「実はさ」


 俺はこれまであったことを、全部黒木に話した。


 付き合って8年経って、振られたこと。しかもよりにもよって、男じゃなくて女と二股かけられてたこと。別れて半年たたない間に入籍してて、今日がその結婚式だったこと。花嫁さんが妊娠中だったこと。


 そしてその結婚式から帰る途中で記憶が途切れて、今ここにいること。


「こんな話、笑い話にもならねーだろ」


 もうヤケクソ。半笑いで話終え、黒木のやつどんな顔してっかなって思って、隣を見たら、俺よりもすげー傷ついたような顔してやがった。怒りのような、泣き顔のような、なんとも言えない顔。いつも笑ってる黒木のこんな顔、俺は初めてみた。


「……なんて顔してんだよ」

「だって……! くそっ! なんだよそれ。だったら、こんなことになるんなら、俺が! ……俺があのとき告白して、あの野郎からユウジを奪ってれば良かった!」

「……告白? 俺に? お前とそんな雰囲気になったことなんかあったっけ」


 覚えがない。


 ……そういやなんで黒木は俺が尚人と、というか男と付き合ってること知ってるんだろう。

 俺がゲイで、尚人と付き合ってることは、本当にごく一部の限られた友人しか知らないはずなのに。


 誰に聞いたんだろう。

 尚人とも構内を手をつないて歩いたりとか、そんな雰囲気を人前で出したことなんかあったか?


 いや、ないはずだ。


 尚人が嫌がるから、人前で、しかも知り合いが大勢いる大学でそんな雰囲気を出したことなんか一度もない。


「……なあ、ちょっと聞くけどさ、なんでお前、俺が尚人と付き合ってること知ってるわけ? 誰から聞いた? 佐藤か?」

「……あ」

「俺も尚人も付き合ってること、人に言ってねーんだよ。大学のときの仲いいやつでも、知ってたやつは佐藤だけだし。だからそこまで接点のないお前が知ってるって、ちょっとおかしいんだけど」


 訝しんで睨む俺に、黒木はしまったという顔で、目をあちこちに向けている。これは何かを隠している顔だ。


「なあ、誰に聞いたんだよ。言えよ」


 佐藤のことは信じてるけど、でもこれは誰かに聞いたとしか思えない。まさかと思うが、佐藤のやつ、うっかり口を滑らしたのか?


「なあって。今更怒らねーからさ」

「……本当?」

「ああ。もう死んでるしな。怒っても意味ねーだろ」


 嘘だ。言ったやつ絶対呪ってやる。


「……本当に?」

「ああ」


 黒木。お前デカい図体のくせして、その上目遣い結構かわいいな。


 そのかわいい上目遣いでも俺からの追求に逃れることはできないと観念したのか、黒木はようやく「実は」と口を開いた。

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