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「あ~……なるほど、年下くんか〜。へえ〜、凄い年齢差ね。大学生か〜あー羨ましいわぁ〜。アナタやるわね〜。で、惚れられて付き合いだしたのに、セックスまでいけないと。あ、違う? キスもまだ!? やだ〜嘘〜。それは悩ましいわね〜。ふんふん、それでワンちゃんがネックになってるかと思ったら違ったと。あ〜なるほどね。で、前世の話は?」

「え?」


 俺は今回、前世の話は言わなかった。佐藤にもバカにされるし、なんだか言わなくてもいい気がして。ただの恋愛相談で終わらそうと思っていた。


「こう、占いに出てるのよ。あなたの回りに『前世』って言葉が」


 サイさんはインスピレーションで占いをするタイプらしく、タロットカードでもなく、自分の感性を高める特殊なカードを使ってリアルタイムに占っていく。


 俺の話を聞きながら、ひょいひょいとカードをめくっては、手元の紙にいろいろメモを残していく。


「あと……事故とか何か、そういう大きな機転になることが昔あった? ……あら、当たりみたいね」


 俺の驚いた顔を見て、サイさんはフフフと勝ち誇ったように笑った。


「……やだ、当時の彼氏最悪ね。ほんとゲイの風上にもおけないわ。って、バイだったわね、その彼氏。それで事故で死にかけたのね。やだ、もう。アタシの友達にもね、恋人に裏切られてね、それで自殺未遂した子がいるんだけど、相手が10股しててね〜って……あらやだ、脱線。へぇ〜夢で、告白! あら〜ロマンチック! それでその子が生まれ変わるって宣言して、その彼氏かワンちゃんのどっちかなのかもってこと。なるほどね」


 サイさんってとても聞き上手で、俺もすっかりと全部話してしまった。


 サイさんは俺の話しを聞き終わると、最後にカードをめくり、メモをまとめ始めた。


「さて、結論から言うと、その死んだ子の生まれ変わりだってことは、あり得ないわね」

「え?」

「ただアタシも、〝あなたの前世はこれ〟っていう特定の人物を想定した占いをしたことがないから、断定的なことは言えないんだけど、カードは身近にいる人、もしくはいた人物を示していないのよね。だから違うとアタシは判断したわ」

「で、でも……」

「そうね。あなたの心配ごとは、その彼氏が自分みたいな年増を……失礼、年上を好きになったのかってことと、告白してきたくせになぜ自分に触れてくれないのかってこと。そして飼っているワンちゃんが彼氏にだけ凶暴だってことよね」


 ロッシュが凶暴なのは、佐藤にもだけど。


 そんなことを思いながら俺が頷くと、サイさんは話を続ける。


「飼っているワンちゃんについては、占い以前の問題。あなたの甘やかしが原因ね」

「甘やかし……。前世が、とかではなく?」

「そ」


 身に覚えがありすぎる。


 赤ちゃんの頃からずっと一緒に生活していて、俺にはいい子だったし、人見知りはしてもトリミングや病院で暴れたこともないし、ひどく嫌うのは佐藤だけで、大げさなしつけは不要だと思っていた。


「そりゃ自分のテリトリーに新入りがいきなり馴れ馴れしく入ってきたら、怒るのは当然。しかもご主人様は、新入りを優先しようとしているわけだし。でもそのままじゃだめね。一度ドッグトレーナーに預けることをおすすめするわ。……これ、アタシの知り合いがやってるドッグスクールよ。警察犬のトレーナーをやってた人がやってるの。もしよかったら行ってみて」


 サイさんが机の下から、ドッグスクールのフライヤーを取り出すと、俺に差し出した。


 そこにはキリッとした犬とトレーナーの写真に『犬と人が共存するために必要なマナーと絆を』というコピーが書いてあり、スクールの特徴や住所なども記載されている。


「ここトレーナーがイケメンでしょ。腕もいいわよーオススメ」

「……ありがとうございます」

「で、次ね。その大学生の彼氏なんだけど、私の占いでは両想いなのよね。その彼の言う〝 好き”〟もちゃんと性的にってことね。それが彼からあなたに向けられてるのが見えるわ」

「じゃあなんで……」

「なんでかしらね。私に見えるのはここまで。それ以上は、彼自身にここに来て貰うしかないわね」


 さすがにそれは無理。

 なんて言って連れてくればいいんだよ。


 だからって黙ってこんなところに連れてきたら、ダイチだって怪しむだろう。

 ……気持ちを疑ってるってことだもんな。あ、罪悪感で胸が痛くなってきた。


「ともかく前世がどうのって忘れなさい。そういうのに縛られちゃだめ。死んだ子の魂がそのまんま復活することなんか有りえないんだから、死者の言葉を鵜呑みにしないで、今生きてる人のことだけを見ることね。アタシに言えることはこれだけ」


 喋りすぎて喉が乾いたのか、サイさんはテーブルに置いていたグラスの中身を一気に飲み干した。

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