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寒い国から来た鬼類  作者: 弐乃
第10章 鬼類、ダンスを踊る
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エピソード龍美・6

「今日は誘ってくれてありがとう」

 午後四時。あたしはミカとダンに挨拶してその場を離れる。愛想の無いあたしの態度に二人は若干憮然としていたが、二人のご機嫌を取る義理はない。

 結局この日分かったのは、波止場公園に集まるバイクチーム、ダンスグループ、数は多けれどピンキリだということ。

 正直ミカとダンが所属する海猫はイマイチの印象。まぁ言うだけあってダンスパフォーマンスはそこそこだし、ファッションなんかにもお金をかけてるみたいだけど、所詮それだけ。

 一方でミカとダンが何やら目の敵にしているマウントクリークは好印象。一本筋の通った自分たちのスタイルを持っていること。自分たちの活動を楽しんでいること。そしてミカとダンが言う事とは正反対に周りへの配慮があること。他グループとの関係も良好で好かれているらしいし、応援しているファンも多い。

 各団体のファンを見ていると面白いことに気づいた。良いチームには良いファンが集まるということ。マウントクリークはチームはもちろん、集まったファンの雰囲気もとても良かった。

 一方で海猫の方は、チームもファンもイマイチの印象。どう言えばいいのか、なんだか舌先に嫌な味が残るって感じ。

 考えながら歩いていて、ふと気配を感じて立ち止まる。目の前にあのギター少年が立っていた。アメリカンドッグを頬張り栄養補給中。

「やっ、お姉さん。楽しんでくれた?」

 ピッと二本指で敬礼。これだけ近づくとさすがに鬼風を感じる。

「ダンスも演奏も良かったよ。おかげで楽しく過ごせたよ」

 少年は照れ笑いを浮かべながらピースサイン。

「あざーっす。そう言ってもらえて嬉しいよ。時にさ、お姉さん鬼人でしょ?」

「うん。あんたもね」

 ギター少年はアメリカンドッグの残りを大急ぎで口に押し込むと、チラリと周りを見回す。

「お姉さんシーガルズのファン?」

 演奏しながらでも目敏くチェックしていたらしい。その辺やっぱり鬼人だ。あたしは正直に首を振る。

「同じ学校の知り合いが踊ってるの。無理やり誘われちゃって」

 少年がちょっと大人びた態度で頷く。

「そんな感じかなって思ってた。チームに鬼人を入れたがってるって聞いてたから」

 あたしはこの少年なら信用できると踏んで、

「うん、マウントクリークからちょっかい出されて困ってるから助けてほしいって言われて」

と告げてみる。少年はちょっと肩をすくめて渋面を作る。

「ちょっかい?ちょっかいは出さないけど忠告や警告はしたことあるよ。もちろん俺じゃなくて先輩方がしたんだけど」

 忠告や警告?拳をチラつかせながらの忠告や警告だろうか?あたしの表情を読んだ少年が笑う。

「違う違う、本当のアドバイスだよ。あんまりヤバいことに手を出さないほうがいいよって」

 年下の少年に心を読まれるとは。里暮らしが長いとどうしてもこうなってしまうんだな。

「ヤバいことって?」

「うーん、俺は先輩から聞いてるだけだけど、薬とかさ、窃盗とかさ。あといろいろと。ほら、ケンカとか、女の子に乱暴なことしたりとかさ」

「女の子に乱暴?」

「うん、ほら、よくあるやつ。強引過ぎるナンパとかさ、お酒飲ませて酔わせてひどいことするとかさ」

 少年がちょっと頬を赤らめる。大人びているようで、この手の話題はまだ恥ずかしいらしい。

 海猫のメンバーから感じる「嫌な味」はどうやら当たっているらしい。

「ありがと。参考になったよ」

「お姉さん、名前教えてくれない?俺、鬼人の友達ほとんどいなくて。せっかくだし」

 あたしは驚いた顔をして少年の顔をマジマジと見つめてやった。

「あら、あんたもナンパ上手じゃない」

 少年は鼻と頬を真っ赤にして、

「違うよ。話してみてお姉さんは良い人だって分かったからさ。良い鬼人とはつながっときたいんだって。それだけ」

 少年はズボンで手をゴシゴシやるとあたしに差し出す。

「俺、礼二っていうんだ。逆巻礼二。よろしくぅ」

 あたしはニヤッと笑って少年と握手する。

「鏑矢。鏑矢龍美よ」

「龍美の姉御、気をつけなよ、あのダンって奴。うちのリーダーもいい噂を聞かないって言ってたからさ」

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