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寒い国から来た鬼類  作者: 弐乃
第10章 鬼類、ダンスを踊る
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エピソード龍美・5

 波止場公園内の空気が震えだし徐々に温まる中、マウントクリークがパフォーマンスを始めた。

 生バンド演奏に合わせたロックンロールツイストが弾ける。革ジャンを脱いでシャツ姿で切れ味のいい身体捌きを見せる男女。女子は脱いだ革ジャンを腰に巻く子や、可愛らしいチュチュロマンティックを着けて踊る子もいる。男女共に十代半ばから三十代半ばぐらいまで。意外と幅広い年齢層が集まっている。

「わぁ、上手い!」

 あたしはうっかり口に出してしまった。明らかに聞こえたはずだけどダンもミカも何も言わない。つまりマウントクリークのダンスはなかなかの物だということなのだろう。

 しばらくしてダンが

「ジジイババアがかっこつけやがって」

と、取ってつけたように吐き出す。うん、確かにマウントクリークのメンバーは平均年齢高め。十代、二十代前半が中心の他チームと違って髭面の三十代もいる。小さな幼児を抱っこしたママさんメンバーもいる。

 ただパパさんママさんダンサー、目茶苦茶上手い。ダンスに大人の余裕を感じるのだ。ガツガツせず、汗だくになるまで踊らない。若いメンバーに声援や口笛を送り、好きな曲が流れるとステージに上がって楽しそうに踊る。なんだかとても格好良いのだ。

 ダンスだけではない。演奏もとてもイカしてる。生バンドの演奏で踊るチームは珍しく、公園がびっしり埋まるほどに集まったチームの中でも数チームしかない。

 このバンドトリオがまた上手い。激しい8ビートからメロディアスなバラードまで、前に出過ぎす、かといって埋もれることもなく、クリアで粒の揃ったビートをダンサーたちに提供し続けている。

 ドラムスは長髪の二十代らしい男性。白シャツの襟元にシルバーのネックレスが見えるがそれ以外のアクセサリーは無し。

 ベースは女の子だ。二十歳前後だろうか。茶色く染めた長髪のポニーテール。爪は赤いマニュキュアを塗っているが短く揃えられている。

 そしてギター。鬼人の男の子。一番若いのにテクニックは抜群だ。手元をほとんど見ずに肩、腰、膝で巧みにリズムを取りながら演奏する。演奏だけでなく、踊らせてもなかなかのものに違いない。

 マウントクリークの前に移動して近くから見物する。観客もかなり多い。観客の中にはもちろんバイカーズ風のファッションの人もいるが、バイカーズでもツイスターズでもない一般客が多いようだ。

 近くで見ているとギターの少年の鬼風を微かに感じることができた。うん、鬼力はあまり強くないみたいだけど、なかなか爽やかで夏のそよ風みたい。

 そう思いながら眺めていると、ハタと少年と目が合った。少年が「おや?」という顔をする。あたしが鬼人だと気づいたようだ。

 少年は穏やかで優しい目をパチンとやってあたしにウインクを送り、小さく手刀で敬礼する。ふぅん、子供のくせになかなか粋な真似するじゃない。

 それから数曲パフォーマンスが続き、メンバーの一人がしばらく休憩し午後は一時からパフォーマンスを再開すると伝えた。観客からチームのパフォーマンスを労う拍手が起きる。

 あたしは海猫のステージ前に戻った。海猫もすでに昼休憩に入ったらしく、ミカもダンも姿が見えない。

 あたしは波止場近くで営業しているキッチンカーでホットドッグを買って食べた。大きなソーセージとカレー味の炒めキャベツにケチャップがたっぷり。美味っ。

「ルミ、どこ行ってたの?」

 しばらくして戻って来たミカが声を掛けてくる。うん?どうやらお昼はラーメン&餃子かな?服に染みがつかないよう着替えて行ったらしい。ま、これぐらいの口臭なら観客に気づかれることもないだろうけど。

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