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おわり?
「んん、あ、あ」
橋本先輩の弟、晴樹君が小さく唸った。
「お」
「あ」
橋本先輩と宮下先輩が同時に晴樹君の顔を覗き込む。
僕は彼女らの後ろで見守った。
「……あ、姉貴……」
「晴樹! 良かったあ」
橋本先輩が安堵の声を漏らす。
その横で宮下先輩が良かった、と微笑む。
「俺は……? 誰?」
晴樹君は僕と宮下先輩に気づき、困惑の声を漏らす。
まあ、仕方ないか。
「この人たちがお前を助けてくれたんだよ」
晴樹君が体を起こす。
「あれ、あいつらは?」
呟きながら辺りを見渡した彼は、地面で伸びている四人を見つけた。
「なんで、あいつらが、倒れて……」
僕は頬を掻いた。
宮下先輩が僕の袖を引っ張る。帰ろうという合図だろう。僕はそれに従い宮下先輩と並んで空き地を後にした。
帰り際、針のねじ曲がった注射器を拾い上げ、溝に捨てた。
□□□□
電車の中。
隣に座った宮下先輩は外の風景に目を向けたまま、呟いた。
「かっこよかったよ」
僕は赤面し、また、頬を掻いた。
まだ、拳は熱い痛みを残している。




