Re:5 二度目の夜
「では40分程で到着すると思いますので、女の子へお支払いお願いしますね!チャット割のチェンジはできませんのでご注意ください、では良い夜を」
慣れた口調で店員は常套句を紡いで電話を切った、
反射的に電話したものの、実はこういうサービスを頼むのは初めてである。
行為自身はもちろんしたことはあるし、妻以外との経験も結婚前に多々ある。
それでも結婚後は勿論そういった機会はなく、久々に妻以外と触れ合うことになる。
ましてや、つい最近普通にメールをする女の子とである。
もちろん、こういう店では最後までの行為はご法度であるが、男性が果てるまでを前提にしているので当然女性は何も纏わない姿になる。
悠はどんな顔をするだろうか、そんなこと考えながらとりあえず歯ブラシに歯磨き粉を添え、いつもより念入りに歯を磨いて少し部屋を片付けた。
予定時刻付近、妙にそわそわしている自分に少し笑うしかない。
こういう時にどんと構えて待てるのが大人なのだろうか、なんてくだらないことを考えているうちに、インターホンがなる。
玄関へ向かいのぞき穴の向こうを見ると、そこには見間違うことなく悠がいた。
そっとドアをあけて僕は驚く悠にこう告げた。
「いらっしゃい」
「新見さん、なんで!?」
「とりあえず入りなよ」
「……おじゃまします」
気まずそうに玄関に佇む悠に、僕はリビングのドアを開けこちらへ来るように促す。
悠も理解したのか、涼しげなサンダルを脱ぎリビングへ入りドアを閉めた。
「え、なんで!?なんで!?」
「落ち着いて、たまたま見てたら悠ちゃんがそこにいたから。呼んでみた」
「いや、え、なんか、その…」
「とりあえずストーカーでは無いから安心して」
そう言って冷蔵庫から冷えたお茶のペットボトルを取り出し悠へ差し出した。
「あ、お店に到着の連絡しなきゃ!」
そういって、携帯電話で連絡する悠。
「はい、いまから90分。はい、19000円。はい、わかりました」
無言で2枚の紙幣を渡し、一枚の紙幣を受け取った。
そして受け取った紙幣をそのまま少し乱暴に悠の胸元に差し込んだ。
「挟める場所が無いから、服に入っていったね」
言葉通り服へ入ってしまったお札を探す悠。
「もう、新見さんのエッチ!!」
「いまから服を脱ぐのにエッチも何も無いだろうに」
そういって笑う僕と頬を膨らませる悠。
どこか照れた表情だ、僕も平静を装っているものの本心は緊張している。
「とりあえず、終わらせよ?」
「…はい」
その会話終えた後、僕らはしばらく行為に溺れた。
………シャワーが身体を打つ。一通り行為を終えた身体を悠が洗い流している。
「はぁ…新見さんにはコッチのお仕事知られたく無かったな」
「俺も画面に出たのが君じゃ無ければ、今日こういうことはしていなかったと思う」
「ねぇ新見さん、ウチ下手じゃなかった?」
「うん、下手だった」
「ですよねー。なんかその…無理して終わってくれた気がする」
悠は経験が無いわけでは無さそうだが、どうやらシテあげる経験は多くは無いようだった。
「でも、最初のお客さんがこっちでも新見さんになんて」
「え、最初なの?」
「はい、今日からなので」
「向こうでもちゃんとしたお客さんとしては初めてだし、こっちでも新見さんで…」
「ま、これも縁かもね」
そう、会話を交わしながら身体を洗う悠に、身体が再び欲を素直に表現している。
大きくなったそれを指さしながら悠は尋ねる。
「新見さん、やっぱり若いですね。それ、もう一回します?」
「ごめん…。じゃあお願いしようかな、君の練習にもなるだろうし」
「もう…いじわる」
そう言いながら、再び快楽に溺れていき、夜は更けていった。
シャワーを終えて着替えていると、悠がふとある言葉を口にする。
「ねぇ、新見さんってウチの名前呼んでくれたこと無い。メールでも直でも“君”って」
「あー、そういえばそうだね」
「何かそれ嫌です、名前で呼んでください。」
「じゃあ悠ちゃん?それかレナちゃん?」
「なんでそこでレナちゃんなんですか!!悠が良いです」
「じゃあ悠?」
「うん、それがいい!」
悠とは縁が無いとは思ってはいないが、それでも2回しか会っていない、それも仕事上での男性に呼び捨てにされるのが良いっていうのはどうなんだろうか?
なんてことを考えてはいるが、内心は優越感に浸っている。
男なんてそれぐらい単純なものだ。
「じゃあ、おれも新見さんって呼び方やめて貰おうかな」
「えー、新見さんはニイミさんだよ!」
「どんな理屈だよ」
そう言って僕は笑った。
「さて、お時間ですね。またね」
「また、こっちの方が良い?」
そんな言葉に、した事を思い出したのか少し照れた様子で悠は続ける。
「もうエッチ。どっちでも良いですよ!」
「ま、独身気分も今日までだからしばらく機会もないし、悠がお店やめたら一生会えないかもね」
「えー、あっちのお店なら飲みにいくだけだし、こっちもお店から一緒にホテルコースもあるよー。新見さん次第!!」
少し拗ねたようにお店への来店を促す悠。
ここに来た時より言葉が砕けてきた。
これも悠と呼べと宣言した彼女なりの距離感なのだろうか。
「はいはい、考えておくよ。自分のお小遣いと相談しながらね」
そういって笑いながら悠に手を振って玄関で見送った。
「それじゃあ、また」
手を振り返す悠。
自宅でそういうことをした背徳感を感じながら、僕はフローリング用の掃除用具を手に取り、少なからず落ちてしまっているであろう悠の長い髪の毛を念入りに拭き取って眠りについた。




