表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/50

9話 か弱い

「?」

 僕の態度を不思議がるような顔でこちらを見ている猿渡さんに僕はどう返せば良いのか分からないけどとりあえず頭を上下に振らなきゃいけないような気がしてくるいや待て雨宮練ここで欲望に身を任せて良いのか良いんじゃね良いんじゃないかなだって反対意見の出しようがな――

「あ、そっか」

 と、句読点が一切ない大変読みにくい文字の羅列を脳内で始めてしばらくした頃、猿渡さんが何かを閃いたように口を開く。

 ここが漫画の中だったら、きっと頭上には電球が浮かんでいる事だろう。

「雨宮君、私がひ弱だと思ってない?」

「え?」

「男子高校生一人くらい膝枕したって、私の骨は折れないわよー?」

「いや、そんな、猿渡さんをひ弱だなんて、思うわけないじゃないですか!」

 だから、その拗ねたような表情はやめて! 男子高校生が獣になっちゃうから!

「……ゴリラみたいな屈強女、だとでも?」

「そんな事も言ってませんし思ってませんよ!」

 ただ、か弱い女性だとは思っていますがね!

 ……お? 今のこの一文、ちょっとイケテるんじゃないの雨宮練君?

 そうと決まったら、レッツゴーだ!

「ただ、可愛い女性だとは思っていますがね!」

「えっ」

「えっ」

 ……。

「あっ」

 噛んだ。

 ……馬鹿か僕はッ!

 なんでそこを噛むの!

「いやっ、今のは、そのっ、『か弱い』を噛んだだけですからしてっ、その!」

 大体『か弱い』って誉め言葉なの!?

 なんでさっきからミスをミスでコーティングしてるの僕は!

 その場の勢いに乗って行動した結果は必ずバッドな展開、って事を身を持って味わったね僕は今!

「……」

「……」

「「……」」

 痛い。沈黙が痛い。

 なんでこんな時に限って起きないんだよ荒谷は。カモン、ムードメーカー!

「……あの、なんか、すんません」

 終わった。

 ジエンド。

 ピリオド。

 フィナーレ。

 後、どんな言葉があったっけ。

 まぁ良いか。

「……いや、大丈夫大丈夫。お姉さんは言い間違いくらいじゃ動揺しないからね」

 思いきり動揺してましたよね、とは言わないでおく。

「でも、ありがとうね?」

「え?」

 ありがとう?

 何で? あ、今日はもしかして4月1日だったりするのか? いや、始めて【うずまき】に来たのは3月じゃないから全然違うか。

「か弱い、とは思ってくれてるんでしょえ」

「あ、はい」

「いや、アイツがあんなんだから、そう言って貰えると嬉しくてね」

 ぴしっ、と指が向く先は爆睡男。

「だから、お世辞でもありがとうね」

「いえっ、お世辞じゃな「っあー! よっく寝たー!」」

 永遠に眠ってろ!

 と思わず怒鳴りたくなるタイミングで、荒谷が目を覚ました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ