38話 「見たの?」
「いない……?」
現さんが畳へ向かった後、僕は引き続き猿渡さん捜索計画を実行していた。
で、なしのつぶて。
空振りスリーアウトチェンジ。
それくらい、何も成果がなかった。
「こんなに狭いのに、どこに隠れているって言うんだ……?」
いくら【うずまき】が実は四階建てだからって、一フロアが狭かったら捜索に時間も手間もたいしてかからない。
行き違うこともまずない。
筈なのに。
「ちっくしょー! じゃあどこに居る、ってん、」
ふ、と。
視界にこの部屋の窓が入ってきたから、試しにそこから外を覗いてみて。
「!?」
海が見えた。
そこまでは良い。
問題なのは、【うずまき】から数十メートルほど沖に出たところで、消えていた。
ゲームのマップみたいに、ある程度進んだところで唐突に不自然に、消えていた。
まるで、本来の世界から【うずまき】とその周辺だけを切り取ったのがこの世界、とでも言うかのように。
「なん、で……?」
これくらいの距離にこんな違和感があるのなら、荒谷が調査で見つけていない訳がない。
と言うか、僕だってあそこくらいまで行ったことはあったはずだ。
なのに。
「どういう……ことだ……?」
こんな非現実な光景――いや、生死の境って時点で非現実なんだけど――を、見ることになるだなんて。
行ってみるか?
行ってどうする?
この前も行って、なにも分かっていなかったじゃないか。
知らなかったから気付かなかった、とでも言うのか?
そんなの、ありえない。
『覚悟、して、おけ』
ふと頭をよぎるのは、現さんのそんな言葉。
この言葉を、現さんがどんな思いで口にしたのか、は分からない。
でも、もしかしてこの言葉は、このことに対するものだったんじゃないだろうか。
猿渡さんの捜索中になにがあっても諦めるな、みたいな。
……なーんて、妄想染みた推論に意味なんてないか。
今、意味を持つのは、猿渡さんを探すことのみ。
そして、探す目的が一つ増えた。
この世界の真相を確かめなければならない、と言う目的が。
そして。
「見たの?」
見計らったかのように。
「見ましたよ、猿渡さん」
背後から
「……そう」
声。




