第3話 捨てる神あれば拾う神あり
上手いことばかりいかないのが人生。
「なんだこりゃあ!??」
死体の山に驚くおっさん。カメラはそれも捉えておりコメントは流れていく。
〈やば、やっぱりFランクダンジョンにしては魔物の数が多いと思ったけど……〉
〈那由多マジつえぇー!このままやっちまおうぜ!〉
〈俺だって出来る〉
〈Cランクは当然なんだから黙ってろよ〉
またコメントでケンカしちゃっているよ……と立っていると他の斧を持ったおじさんが口を開く。
「FランクダンジョンでDランクのホブゴブリンにブラックスケルトンまで出たとギルド命令で来たのだが……」
彼らはギルドの命令で来たらしいが、既に俺が処理済みだ。
ずっと荷物持ちと採取をしていたから知らなかった。アレはFランク魔物ではなかったらしい。
「俺のドローンの数の暴力で倒したんで安心してください!」
コメントも擁護。
〈格上キラーだ〉
〈彼が全部やっちまったんだぜ〉
それを信じないのかサーチ魔法を使う、ちょっとそれは目の前では失礼じゃないのっ?
「ほ、本当だ……ご協力感謝します。ギルドまでご同行頂けますか?」
えっ……待って俺悪いことした?してないよね?
「えっ、でもボス倒して報酬増やしたいのですが……」
金が欲しい。
親孝行したい! それに倉田に金返したいし欲しい装備も多い。何をするにもまずは金は必要だからな。
「サーチの限りここのボスは、そこで死んでる魔物の群れに既にやられてますね」
「マジすか……」
ボス撃破ってことは縄張り争いでも始めたのか? 同族殺しなんてのはよくあるのかな?
「なのでご同行頂けますか?」
「な、なんでですか……?」
「君は間接的にここに入ったFランクの人を救っている、そしてこの殲滅力はEランクじゃない、少なくともDランクに特例で格上げをする様にギルドに問い合わせようとな」
その時コメントも暴れる。
〈めでてぇな!〉
〈装備を増やす逸材を逃す理由も無いしな〉
〈圧倒的な蹂躙はすごかったよ〉
〈特例とかラッキーじゃん〉
ああ! もっと褒めて! 気持ち良いから!
俺はまた承認欲求満たされてまくりで興奮が止まない。
「ありがとうございます!」
こうして駆けつけた5人のおじさん達と共に久しぶりにギルドに向かうことになったのだ。
そして俺の力は荷物運びのEランクでないことも示せた筈だ。
そしてギルドに入り、おじさん達は受付嬢に話しかけると俺は手招きされ着いて行くとギルド長がいる部屋に通された。
「君がFランクダンジョンでDランクを倒した子か」
「は、はい」
き、緊張するなぁ〜……ギルドになんて全く来たことないからな。なんせ探索者歴も2ヶ月ちょっとだし。
「どうやったか見せれるかな?」
「はい! 分身!」
そしてまた空間にドローンが32機も飛ぶ。
「そしてこれに搭載した魔石をエネルギーにして魔弾を撃って制圧しました!」
それを言った時、俺を連れてきたおっさん達は笑顔だがギルド長は違った。
「……所詮、装備がなければEランク止まりだ。ギルドが評価するのは武器ではない、本人の戦闘技術だ。装備が壊れたらあまりに無力……お前たち、こいつを帰らせろ」
「ですがギルド長!」
「判断は変えないぞ。その装備は量産も実績もない。暴走する可能性すらある。ギルドは未知の装備では昇格を判断できん。早く帰せ」
微妙な空気が流れる中再度口を開くギルド長。
「ランクとは冒険者本人の実力を証明する資格だ。装備込みで判断する前例は作れん。帰ってくれ」
そして自分の時間をくだらないことで奪いおってと言わんばかりに強い口調で追い出す様に命令された。
おじさん達は更に言い返してくれたがクビにすると脅されてあえなく撃沈。
「すまねぇな……あの人馬鹿みたいに頑固なんだ」
「報酬は上乗せしたから受け取ってくれ、すまんな」
おじさん達は本当に申し訳なさそうだったので、怒りは湧かなかった、ただ落胆はあった。
受け取った16万を握り締めてギルド前で立ち尽くす。そこで思い出す、企業案件を。
「帰ってから連絡してみるかぁ……こっちは何とかなってくれよ……ってなんだ!? 俺の配信バズってんじゃないか!?」
調べると殲滅するシーンのクリップがSNSで投稿されバズっている、41万回再生だ! そして紐付けられた俺のアカウントのフォロワーがとてつもない人数に増えている。22人だったのが7000人超えだ。
「ヤバ! 満たされる〜早く帰ろ」
帰宅して早速父に話しかけられたので全てを説明した。
「そうか……俺たち地域の管轄のギルドはお役人様だからな。取り敢えず神代に連絡だな」
うん、と答えて自室に入り電話しようと思ったが相手がどのレベルの企業か気になって検索をかけたがトップヒットした内容だけでひっくり返りそうになった。
えっ……防衛省とも共同開発してる会社なのか!? 売上何千億!? 更に武器メーカー最大手!?
俺は驚愕しつつDiveONの企業アカウントに掲載されていた電話番号に発信した。
「……あ、もしもし?」
見なきゃ良かった、余計に緊張するわ……
「もしもし、お世話になっております。こちら神代工業・開発事業部でございます」
「あ、えーっと、お世話になります。神楽那由多です、DiveONの配信のコメントで企業案件を頂いたのですが……」
いやー本当に緊張するなぁ〜。敬語……おかしくないよな?俺バイトもしてなかったから真っ当な社会人経験したことないんだよぉ〜……
「神楽様ですね、お電話ありがとうございます。少々お待ちください、担当にお繋ぎ致します」
なんかよく聞く保留音が流れる。
まさか本当に案件がもらえるなんて思わず手が汗ばんできた。
「お待たせいたしました、開発事業部の部長の橘と申します。先刻の配信、拝見致しました」
「み、見ていただけて光栄です、ありがとうございます!」
部長にしては声が若い人だな、エリートって言ったところかな? やっぱり大企業の部長は落ち着いているなぁ。
「いえ、突然のご連絡となり失礼しました。神楽様のスキル運用に大変興味を持ちましてご協力をお願いできればと考えております」
「協力……ですか?」
モルモット的な?
「はい、現在弊社では、国や冒険者向けの装備を開発、実証実験を進めております。神楽様にはそのテスターとしてご協力頂きたいのです、勿論テスト品は差し上げます。そして報酬自体も別でご用意しております。……如何でしょうか?」
それを聞き俺は震えた、当然武者震いだ。
俺の金では買えない様な装備を試すついでに貰えるなんて願ってもない好機だ。早く戦いたいぞ。
「お受けいたします! 是非とも、よろしくお願いします!」
「ありがとうございます! では、今週中に一度弊社研究所までお越しいただけますでしょうか。あと、例のドローンもぜひ拝見させてください」
「はい!」
「試作品第1号をご用意して、お待ちしております」
少し前まで荷物持ちだった俺は、この日を境に人生が大きく変わることになる。
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