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星のバラスト  作者: 弧川ふき(元・ひのかみゆみ)


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086 異質な生物について

 何も知らない者のためにもと、解説が急がれた。

 受付のような格好の女性が言う。


「アレが捕獲された時期は、ジオガードが設立される前のことです」


 彼女(いわ)く、こういう事だった。


 礎球(そきゅう)の国が統一された頃、初頭は軍が少しばかり機能した。だが、国家の名残同士が争いをしなくなっていくにつれ、互いへの尊重も相まって、軍も縮小し、互いをむしろ守る方向へと、何もかもが動き出した。

 軍の余った分を、別の活動をする部隊にした。それがジオガードの前身となった。

 そこから試験やら方針、施設拡充などをし、今に至る。

「異質な生物『ポドヴァーム』」を捕まえて少し経ってからジオガードが正式に誕生。ということになっている。


 そこまでを理解してからすぐ、トーアさんの解説(ごえ)が、


「本当はポドヴァームを捕まえてから余った軍の使い道が計画され、その生物のためにジオガードがある」


 と聞こえた。

 受付の女性はそのあとも話した。

 それらの話をまとめると、こういうことだった。


『異質な生物は突然どこかから現れた。その過去、一匹しか現れなかったため、その一匹を捕らえればそれで済んだが、いつ大量に出現するか。それが大問題。本当はそのためのジオガード。なぜその生物を保管していたかというと、たまに研究するなどして万が一に備える為。その生物に()まれた者は毒に(さいな)まれる。高熱と患部から広がる痛み。それが一週間以上続くと死に至ると言われている。それに備えるために。成分や生体そのものの研究は進んでいた。地球由来の技術もそれに貢献していた。そしてなぜか生物がいなくなった』


 それは緊急も緊急。とんでもない事態だ。

 そして目の前に、とある文書がある。

 厳重そうな硝子(ガラス)()の向こうの台に置かれた書。解説者の女性が、それを手で示した。


「この書には必要な対策や解毒方法が書かれています。問題の生物自体の体細胞も解毒薬の材料には必要だと研究でずっと前に解っていて――」


 だから生かして保管していたのか。きっとそういう事だ。

 女性の話は続いた。


「――研究は終わったとされています、管理者は()え置かれているだけ。そうなってから百数十年が経っていて、何かあった時は文書だけが頼りです。あの生物『ポドヴァーム』が勝手に消えたとは考えられないので、誰かが持ち去った可能性が高いんです。だから、これも誰かに狙われるのならと……この書だけは何とか守らなければなりません」


 確かにそう思うのも当然か。なら、この書だけでも守らないと。

 と、意気込んだその時――辺りに白い壁が建ったかと思った。直後、なぜか視界が真っ白に。


「な、なんだ――!」

「私たちは追う!」


 誰かが来たらしい。『私たちは』って、ネウツァさんの声? 多分そうだ。

 僕は動けなかった。今の視界ではどこに何があるかも判らない。

 数秒じっとそのままだった。

 漸く視界の真っ白さから解放されたという時――問題の文書がなくなっていた……。


「そんな!」


 つい(なげ)いてしまう。もしも対処や解毒の仕方を誰も(おぼ)えていなければ……。


「対処法が……!」


 焦りが胸に満ちる。

 それにしてもどうして硝子戸のこちら側から何者かが書を奪い去れたのか。よく見ると、角に結界用の赤い境界石があるのが判った。許可証が無ければ礎術(そじゅつ)もそこに発動しないはず。

 今や僕らのチームしかいない。いや、説明していた女性はいる。

 とにかく、犯人のことは、あの人たちが捕まえるといいけど。

 そう思っていると、一人の警備員が来た。彼が唐突に――


「あの。許可証を貸せと、緊急事態だと言う者がいて協力したんですけど、何かまずかったですか?」

「――! そうか、だから」


 僕がそう言うと、「そうだな、それで盗られた」とレケが(うなず)いた。


「あ」警備員自身が横を見て気付いた。「あの文書のために? え、じゃあどうしてだったんだろう」

「……? なんか変じゃないですか? その返答……。その人、どんな人だったんですか」

「コートと仮面をしてました、ある地域じゃ凄腕の礎術師(そじゅつし)として有名だったあの仮面の人です」

「……!」


 コートと仮面! 僕のこと……? それを追った?

 もしかして、そこまで気にすることではないのか?

 確か、ラウツさんは……以前()()()()を言ってたな……。

 よし。今は犯人のことじゃなくて、このポドヴァームについての研究文書のことに集中しよう。その方がいい……と思う、多分。問題のコート姿の誰か(多分僕)を追った別チームは、信頼できそうだった、実績もあるし、追跡は大丈夫だろう、相手は『味方』だしな。問題はそっちにもあるだろうけど、ここにもある――もしものための策が無いのはまずい。

 にしても、とんでもない事になった。

 そこで、ジリアンが話し出した。


「予防薬は無いんですか? 手元に(すで)に作ってあるものとかは……」


 するとさっきまで説明していた女性が、


「予防薬は、ええと……作っておいても腐ってしまうので、作り置きしておくことはできません……」


 と、蒼白な顔で言った。世界の一大事(ゆえ)に、その顔も当然か。

 そこで僕はピンと来た。


「過去だ。僕らがそのジオガード設立時期の過去に行って、ポドヴァームを一匹だけでも捕まえる。この時代用に!」

「でもそのためには時空ジャンパーがないと」


 ジリアンがそう言った。

 そうだ。それがネック。でもって、もしかしたら、その流れであの状況になるんじゃないか……?

 じゃあ行く場所は決まった。ラウツさんの所だ。

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