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星のバラスト  作者: 弧川ふき(元・ひのかみゆみ)


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085 異質

 とある穏やかな日。チーム「月下の水」の全員が僕の家に集まっていた。

 和気藹々(あいあい)と、ただただ休息。

 ベレスがそんな時に打ち明けた。


神木霊獣(カムナギエヌ)を宿せましたよ、漸くですが」

「え! おめでとう!」つい声が大きくなった。「名前は?」


 僕が問うと、ベレスの横にその霊獣(れいじゅう)が姿を現した。大きな鳥型。(しち)霊獣の種としてはケナに宿るものと同じ。ただ別個体の『漂う存在だったモノ』ではあるはず、確かにそういうモノなはずだ。


「マーディにしました」

「マーディ? よろしく」

『うむ』


 互いに、普段から全員の霊獣を見える状態にしておいてもよさそうだ。こんな風に、できることが仲間にも増えていくのは、かなり嬉しい。

 ベレスに宿った証拠となる紋様はと言うと――


「脇腹に出たんですよ」

「え、いいなあ」僕はつい。「無理して隠さなくていいし、羨ましいよ、僕なんか、おでこだから」

「バンダナとかヘアバンドが欠かせないね、隠したいなら」とはジリアンが。

「そうなんだよねぇ」


 かく言う僕のおでこは、今はバンダナで覆い隠されている。

 そんなリラックスした談話の時だったが――

 電話のコール音が鳴った。僕のがだ。それに出ると相手は――


「もしもしユズトか、こちらツァーレだ、憶えてるか」


 あ、あの試験の時の!……という思いは、すぐに消えた。


「お前の住所は調べた。レイシーのことで心配してもいたからでもあるが。そこにゲートを繋ぐ! 正確には庭に。窓辺で待て」

「え――」


 ■■□□■■□□■■□□■■


 ツァーレの指示で、俺はピンセットを巨大化させ、それで挟んだチョークで床に円を描いた。

 正確な円ではなくてもいい。端と端を(つな)ぎ、そして――


 ■■□□■■□□■■□□■■


 誰かのゲートが庭の空中に繋がるのを見た。綺麗な円形の光。それが現れた。

 その光は、下に向いた鏡の淵のみから床へと落ちるように降った。幻想的で、暫く見ていたいくらいの光だった。

 その淵によるゲートを通って、誰かが現れた。降りるように。

 四人。

 ツァーレ・テイカンさんのことは見たことがあった。試験の人だ。ほかの人はっていうと――スーツ姿の人もいて、彼は確かスレク・ツネーイさんだ。警棒を礎術(そじゅつ)の対象とするのがケイリス・ポワーボさんで、ピンセットを操るのがテニー・ピーセさん、この二人に関しては初任務から数か月が経ってから、ジオガード内部雑誌で知った。

 その四人――の元へ、待機しておいた一階の窓辺から、急いで向かった。

 お父さんは仕事に行っていて、お母さんと妹のメグミの二人だけがリビングから見ている。そんな中で、何かやっぱり急ぐにしても挨拶(あいさつ)しておきたかった。


「行ってきます!」

「無事に帰ってね!」

「当然」


 そんなやり取りのあとで、今度はスレクさんがネックレスを操り空中に漂わせ、巨大化させ、それの輪の内側を丸ごとゲート化させた。


「さあ」


 それを通る。

 向かった先はどこかの建物の中。広い。ただ、博物館みたいな雰囲気の所。展示品が置かれていそうなガラスケースみたいなのが所々にある。全体的に灰色だ、まあ床は白いけど。

 で、ここはどこなんだ?

 辺りを見たると、声が、ツァーレさん達とは違う方向から――


「セントリバー州ゲニー市。閉鎖したリンクゲートのある地区だよ。レリニヤム区だ」


 男の声だった。その声がした方を向くと、その男性に向けて、ジリアンが――


「キリーさんっ?」


 と。あこがれの人か? というのは予想だったけど、それが本当だったらしい。「取材されて武勇伝を本にされていて有名な人」とジリアンがその口で教えてくれたけど、今はその話をしている場合じゃない。

 役者が(そろ)ったのか、そのキリーさんという男性の近くにいた別の男性が進み出、そして、


「四チーム揃った! 説明を頼む!」


 と、彼が。その人を指してジリアンが「あれはネウツァ・イルアーさん」と紹介してくれた。

 ジリアンの解説はそのチームのことのみに留まった。

 キリーさんというのは、本名キュトラーヴ・ムァボ。まあ僕もキリーさんと呼ぶことにしよう。

 その近くに居るもう一人の男性はモリット・リマスール。

 (そば)の女性はルモ・マデンボーさん。

 ジリアンが言うには、彼らが、かつてから聞いたことのある――ベレスに読ませてもらった雑誌にもあった――チーム『銀の弾丸』らしい。有名な凄腕チームだ。正直会えて嬉しい、あの志した時期に、凄い人達なんだろうなと思ったからなぁ……。

 で、彼らの一人が『四チーム』と言っていた。僕ら『月下の水』と、ツァーレさん達『メタルズ』と、彼ら『銀の弾丸』以外に、あとは――

 と、そう思って視線をやったその先に、居たのは、今にも説明を始めそうな受付っぽい服装の若い女性と、四人の老人達だった。向かって、左に広い空間がある。右手には廊下が。その間に、居るのは――左から、お爺、お婆、お爺、お爺、という感じ。この人達が――


「私はヨーシュ」

「トーアとお呼び」

「俺はギッキス」

「ウォルン」


 と、なぜか、左から順に口を動かした。

 それぞれ独特な挨拶(あいさつ)をした。ヨーシュさんは被っているハンチング帽の位置を整えるような動きをしたし、トーアさんはコートの(すそ)若干(じゃっかん)持ち上げ、お嬢様風に。ギッキスさんはズボンをパンと(たた)いた。ウォルンさんはガウンの上から胸を叩いた。どしんと任せなさいという想いを乗せていそうだった。

 まあ名前を知っても呼ぶことがあればだけど――一度に多過ぎるし――なんて思っていると、受付っぽい格好の、さっきからすぐそこにいる女性が、声を発した。


「重大な事件が起こりました。この特殊施設での管理下の――異質な生物が逃げ出してしまったんです」

「生物? 異質な?」


 つい、そう聞き返した。ついでに、かなり嫌な予感が。

 閉鎖したリンクゲートの近くで、特別な管理化の異質な生物が、逃亡?

 今までにないくらいに、嫌な予感がした。

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