携帯電話の使い方
地竜の討伐を終えた俺たちは地竜の死体を回収していた。
こんなでかい死体ををどうするんだよ?と思っていたら、リリスが身に着けていた指輪に何か言うと空中に穴が出現して、その中に吸い込んでいた。
「これは収納の指輪と言ってクレイが作ったものだよ!会社からの借り物で討伐依頼の時には持っていって死体を回収するように言われてるんだ。個人でも欲しければクレイに頼めば売ってくれるよ。こんなに大容量じゃないし、結構高いけどね……」
「欲しいわね……」
慣れた様子で素早く地竜の死体を回収しながら、リリスが説明してくれる。
サラは収納の指輪を食い入るように見ていた、とても物欲しげだ。
基本的に倒した魔物の死体は持って帰るらしい。
地竜はどの部位も無駄にならないで色々使い道があるそうなのでかなりおいしいそうだ。
「そう、だから余裕があればあまり傷をつけないように魔物を倒して欲しいんだ。あくまで余裕があればだけどね!」
そりゃそうだ、それを意識しすぎてケガなんかしたら本末転倒だからな。
今回はただの討伐依頼だったので、気にすることはないが素材が目当てなら大事なことだ。
「ああ……そうそう、社員証や携帯電話の使い方を説明するね!」
社員証は会社に入る時に必要なものらしい。
社員証なしでも受け付けまでは入れるが、会社内を動き回る時には必要な所があるそうだ。
そのあたりは企業秘密!?らしい……。
携帯電話はボタン一つ押すとどこにいても会社につながって話ができるらしい。
すげえな!
あと、会社から携帯電話の位置がだいたいわかるらしい……なんか紐につながれているようで嫌だな。
数字を押せば携帯電話同士も会話できる。
もちろん、相手の携帯の番号がわからないとダメだし、かけても相手が出てくれなければ話はできないが。
とても、便利だが本当に大事な秘密にしたいことは話さない方がいいそうだ、他人に盗聴される危険がらしい、普段は気にしないでいいようだが。
「とりあえずはこんなところかな?わからないことがあったら聞いてね!研修やら携帯電話を支給したりしてるのはうちの会社くらいだよ」
これはとても便利なものだな。
情報をすぐに伝達できるというのは大きい。
そして、会社をやめる時には返さなくてはいけない、やめにくくなるということだな。
携帯電話は会社以外でも買えるが、番号が変わってしまうので色々面倒そうだ。
「試しに使ってみるよ……」
いきなり俺の持っている携帯電話が大きな音で鳴り出す。
びっくりした!
ボタンを押して携帯を耳にあてる。
「もしもし、リリスだよー!」
「えっと、もしもし!?」
「最初、電話をかける時は、たいていもしもしって言ってるね」
「すごいな!これはどこでも使えるのか?」
「基本的にこの世界ではどこでもつながるよ!そういうのを防ぐ結界内では使えないけどね」
「わざわざそんな結界を張るのか?」
「そりゃ、情報が漏れたら困るところもあるからね」
サラは俺とリリスが楽しそうに話しているのを見てちょっとおもしろくなさそうな顔をしている。
そして、携帯を見て操作しているが、うまく動かないのか携帯を不思議そうに見ている。
「相手が他の人と通話している時は、つながらないのよ。ツーツーという音が鳴っていたら、そういうこと」
それを聞いたサラが再び携帯を操作すると、カストロの携帯が鳴りだした。
「カストロだ!」
「ちょっと!声が大きい!直接聞こえるじゃないの!」
「そうか!ガハハ!」
「だからうるさいって!」
サラとカストロが大騒ぎしている。
なんかちょっとうらやましいな。
俺たち4人の番号はすでに登録してあるようだ。
「はーい、みんな自分の携帯を操作して自分の番号を出して」
「なんで?登録してあるんじゃないの?」
「そうだけど、他の電話からかける場合は番号が必要よ。自分の番号もメモしておいてね」
メニューを操作すると自分の電話番号が出てきた。
俺たち4人はお互いの電話番号を教えあって、メモを取った。
そして、会社に帰り、社長に結果を報告した。
「初仕事から予想以上の結果を出してくれるな!この調子で頼むぞ!」
社長の言葉を聞いてこの世界でやっていく自信を深めたガウスたちだった。
その晩、自分の部屋に帰ったガウスがしばらくのんびりしていると携帯が鳴った。
あわてて、携帯を取った、番号が出ているがまだ覚えていない。
「こんばんは、サラよ。もう寝ていた?」
「いや、まだ起きてるよ。どうかしたの?」
「せっかくこんな便利な道具があるんだから使ってみたかっただけ」
「そうか」
なんか自然と表情がにやけてしまう。
いや勘違いしてはいけない、使ってみたかっただけって言ってるし。
でも、なんだかうれしい。
「いきなり、こんな世界に飛ばされてどうしようかと思ったけど、ちょっとやっていける自信が出てきたわ、ガウスはどう?」
「俺もだよ。やっとやっていける気がしてきた」
「がんばろうね!」
「おう!」
「じゃあ、おやすみなさい!」
「ああ、おやすみ!」
そこで電話が切れた。
俺はまだニマニマしていた。
とても温かい気分だ。
すると突然また携帯が鳴る。
「おおおっ……もしもし?」
「びっくりさせたかな?リリスだよ」
「ちょっとびっくりした、どうした?」
「いや、今日はがんばってくれたから、お疲れ様って言いたかっただけだよ」
「リリスこそお疲れ様だろ」
「思っていたより楽だったよ?誰かさんのおかげ」
「……照れる」
「ふふっ、じゃあいつでもなんかあったら電話してきてね、おやすみなさい」
「ああ、ありがとう。おやすみ」
電話が切れた後、俺はしばらくボーっとしていた。
うれしいようなちょっと困ったようなでもやっぱりうれしい気分。
いかん、勘違いしてはいけない、勘違いしてはいけない、勘違いしてはいけない。
俺は顔がにやけるのを止められず眠りに落ちていった。




