↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
断罪終了後の悪役令嬢はもふもふを愛でる~ざまぁするつもりはないのですが~  作者: 一番星キラリ@商業ノベル&漫画化進行中
【クロ視点】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
7/48

7

切なくキュンとなるクロ視点です。

正直、ボクは前世での記憶が、チェルシーみたいにしっかり思い出せていない。

その代わり、この世界で目覚めてからの記憶はしっかりある。

だからむしろこの世界の方が、ボクにとっての全てでもあった。


何より、この世界に来る前の記憶は……とても悲しいものだから。


今でも思い出す、体を刺すような雨。

雨だけではなく、砂粒も舞い、容赦なくボクの体に打ちつけていた。

風は、風なんてレベルではない豪風で、呼吸すらまともにできなかった。

小さな子猫のボクには、どうにもできない自然の猛威。

そこから助け出そうとしてくれたのが、前世のチェルシーだった。


今とは全く違う姿のチェルシー。

名前なんて分からない。

でも黒髪で、眼鏡をかけていて、優しい瞳をしている。

その目を見ると安心できたし、なんだかとても懐かしく感じた。

そして実際、とても親切な人だった。

なぜならあの竜巻の中、ボクを助けようとしてくれたのだから。


彼女の胸に包まれた時。


助かる……!


心から安堵して、その直後に絶望を見た。

飛んできたトタン屋根。

それがボクの恩人の命を奪う。


天国から地獄に落ちた瞬間だ。


こんな理不尽、許されていいわけがない。


あの時、なんであんなことが起きたのか、本当に分からなかった。

でもチェルシーの魂はこの世界に導かれてくれた。

ただ、チェルシーは幼い子供の体で転生していて、ボクは彼女以上に小さかった。

お互いこれでは何も認識もできない。

だがチェルシーはどんどん成長し、言葉も話せるようになった。

その一方で、ボクはなかなか成長しない。


悩むボクにヒントをくれたのは、庭にやってきた鳩だ。

この世界のもふもふは、人間と意思の疎通をはかれる者が、稀にいるらしい。そういったもふもふは、成長が遅いとのこと。ここは、エルフもいるような世界。世界のあちこちに、不思議が転がっている。そしてこの話を聞いたボクの心に、希望の光が灯る。


焦らず、チェルシーと話せる日を楽しみに待った。

彼女が前世の記憶を取り戻すことを期待した。


でも……。


時間だけがどんどん過ぎて行く。


チェルシーは美しく成長し、婚約者までできた。

彼女の前世の記憶が覚醒することはない。ボクとの意思疎通もはかれない。


ボクは十八歳のチェルシーと変わらない年齢のはずだった。

しかしとても成猫とは思えない姿であり、チェルシーと話すこともできない。

焦燥感だけが募った。


学校を卒業したチェルシーは間もなく二十歳になり、そうなったらあの婚約者サール王太子と結婚してしまう。そうなる前にチェルシーと話したかった。もし話せても何も変わらないと思う。チェルシーは人間で、ボクは猫のまま。


何も変わらないとしても、チェルシーと話したい。この世界で過ごす日々の中で、チェルシーと意思疎通を図りたいとずっと思い続けた。とにかく話すことができたらと願い、それが一つの目標になっていたのだ。


だからそれが思いがけず叶った時。

さらにはチェルシーが前世の記憶に目覚めた時。


ボクは天にも昇る気持ちだった。


しかもチェルシーは、あのサール王太子と婚約破棄できた! あんな浮気男、婚約破棄で正解だ。チェルシーと婚約しているのに、ルナシスタなる令嬢と仲良くしているんだからさ。


サール王太子はチェルシーを手放してくれた。

なんとなく、これでチェルシーはボクだけもの。

なんて気持ちになっていたけど。

エルフのセフィラス。

彼は自身の身分を明かしていないが、エルフ王の血筋に間違いない。

だってこんな城みたいなツリーハウスに住んでいるのだから。


もふもふの森はかつてもっと広大で、そこにはエルフの王も存在していた。だが人間が森を焼き払い、もふもふたちが住む場所を奪われる姿に心を痛め、遥か西の世界へ旅立つことを決めたのだ。多くのエルフが、かの王に従い、沢山のもふもふも彼に従い、西の地へ向かってしまった。


もふもふにだって王はいた。でも今、もふもふの王はエルフの王と同じ。この森にはいない。セフィラスのように、エルフ王の血筋を引く者は、まだこの森に残っているようだけど……。もふもふの王の血筋なんて、既に残っていないのだろう。


ともかくだ。

セフィラスはあのサール王太子よりも、それ以外のチェルシーの周りにいたどの令息よりも。格段に美しい。なにせエルフなのだ。人智を超えた存在。それだけ美しくても当然だ。姿だけでなく、声も美しく、森の木々にも、もふもふからも愛されている。さらに森の木々にも、もふもふに気を配るぐらいだから、とても優しい。穏やかで、落ち着きがあり、まさに癒しだ。


そう、セフィラスは……非の打ち所がない。しかもエルフ王の血筋。完璧過ぎる。


でもそのセフィラスを見て、チェルシーがあんな顔をするのは……。

見逃せない!


セフィラスに敵うかどうかは分からない。

そもそも同じ土俵にいないと思う。

それは分かっている。

分かっているけれど……。

でもせめて、こんなもふもふではなく。

ボクも……人間に生まれたかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【一番星キラリの作品を紹介】
作品数が多いため、最新作を中心にバナーを並べています(2025年12月の大掃除で・笑)。 バナーがない作品は、作者マイページやタイトルで検索でご覧くださいませ☆彡

●9/2発売●
バナークリックORタップで書報ページ
悪役令嬢はやられる前にやることにした
『悪役令嬢はやられる前にやることにした』

●本編完結●
バナークリックORタップで目次ページ
やらかしてしまったモブ令嬢です
『やらかしてしまったモブ令嬢です 』

●新連載●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢に転生!婚約破棄で推しと家族が闇落ち!回避したいだけなのに
『悪役令嬢に転生!婚約破棄で推しと家族が闇落ち!回避したいだけなのに』

●溺愛は求めていませんよ?●
バナークリックORタップで目次ページ
平凡な侍女の私、なぜか完璧王太子のとっておき!
『平凡な侍女の私、なぜか完璧王太子のとっておき!』

●紙書籍&電子のコミカライズ化決定●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢に転生したらお父様が過保護だった件~辺境伯のお父様は娘が心配です~
『悪役令嬢に転生したらお父様が過保護だった件~辺境伯のお父様は娘が心配です~ 』

●これぞ究極のざまぁ!?●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢は死ぬことにした
250万PV突破『悪役令嬢は死ぬことにした』

●出版社特設サイトはコチラ●
バナークリックORタップで出版社特設ページへ
婚約破棄を言い放つ令息の母親に転生! でも安心してください。軌道修正してハピエンにいたします!
80ページが試し読みできる特設サイトへ
『婚約破棄を言い放つ令息の母親に転生! でも安心してください。軌道修正してハピエンにいたします!』


●出版社特設サイト●
バナークリックORタップで出版社特設ページへ
婚約破棄を言い放つ令息の母親に転生! でも安心してください。軌道修正してハピエンにいたします!②
『婚約破棄を言い放つ令息の母親に転生! でも安心してください。軌道修正してハピエンにいたします!② 』

●もふもふも登場!●
バナークリックORタップで目次ページ
断罪の場で自ら婚約破棄シリーズ
『断罪の場で悪役令嬢は自ら婚約破棄を宣告してみた』は
日間恋愛異世界転ランキング3位!

●壮大なざまぁを仕掛けます!●
バナークリックORタップで目次ページ
婚約破棄された悪役令嬢はざまぁをきっちりすることにした
『婚約破棄された悪役令嬢はざまぁをきっちりすることにした』

●章ごとに読み切り!●
バナークリックORタップで目次ページ
ドアマット悪役令嬢~ドン底まで落ちたらハピエンでした!~
『ドアマット悪役令嬢はざまぁと断罪回避を逆境の中、成功させる~私はいませんでした~』

●宿敵の皇太子をベッドに押し倒し――●
バナークリックORタップで目次ページ
宿敵の純潔を奪いました
『宿敵の純潔を奪いました』

●コミカライズ化も決定●
バナークリックORタップで書報ページへ
断罪後の悪役令嬢は、冷徹な騎士団長様の溺愛に気づけない
ノベライズは発売中!電子書籍限定書き下ろし付き
『断罪後の悪役令嬢は、冷徹な騎士団長様の溺愛に気づけない』


●妹の代わりに嫁いだ私は……●
バナークリックORタップで目次ページ
私の白い結婚
『私の白い結婚』

●[四半期]推理(文芸)2位●
バナークリックORタップで目次ページ
悪女転生~父親殺しの毒殺犯にはなりません~
『悪女転生~父親殺しの毒殺犯にはなりません~』

●現実世界の恋愛物語●
バナークリックORタップで目次ページ
せと恋~瀬戸内の夕陽がつなぐ島の恋~
『せと恋~瀬戸内の夕陽がつなぐ島の恋~ 』

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。