36
一味違う一番星キラリのオリジナル・エンディング。
想像通りのエンディング希望の方は後日公開の「38」へお進みくださいませ。
――王子を想い、愛する女性が死に、また愛する女性を想い、王子が死した時。北の魔女の呪いは解かれる。そしてついに王子と愛する女性は、永遠に結ばれる――。
この世界で結ばれずとも。
二つの魂は求めあう。
運命の糸はまさに今、一つへと絡まり合う――。
◇
新緑の清々しい季節に変わっていた。
花粉症も落ち着き、マスクもいらなくなった。
久しぶりに外でランチでもしようかな。
「先輩、社食行きます?」
「いや、今日は外に行くわ。久々に隣の公園でお弁当でも食べる」
「え~、そうなんですか! 今日、研修を終えた新入社員が、午後から配属じゃないですか。その中に一人、すごいイケメンな外国人がいるらしんですよ。オールフォード大学の大学院まで出ている秀才で、私とは同い年で、先輩より一歳下のその彼。というか本社配属の新入社員は、社食で揃ってランチ食べているから、みんな見に行っているみたいですよ」
「それ、なんだか昨年、ミス・岡山の新入社員女子が入社した時みたいね。男性社員がこぞって社食につめかけていたっていう。見世物じゃないんだから、ほどほどにしなよ~」
トートバックにお財布とスマホ、化粧ポーチを入れ、席を立つ。
見渡すと女子社員の姿がほとんどないことから、本当にみんな、社食にその新入社員を見に行っているのだろう。
トイレに寄ってから、エレベーターへ向かった。
エレベーターの扉は鏡のようになっており、そこに自分の姿が映っている。
かなり珍しいと言われる紫色を帯びた黒い瞳。小柄だが、そこそこメリハリのある体は、水色のシャツと明るいグレーのスリムパンツに包まれている。髪は恐ろしいほどのストレートのロングで、シュシュで結わくとするっと落ちてしまう。
時間をずらしたので、エレベーターのランチ混雑はない。
そのままロビー階まで向かい、ビルの前に来ているキッチンカーでお弁当を手に入れた。
会社の入っている隣のビルの公園は、都心の一等地とは思えな程、広々としている。周囲はオフィスビルばかりなのに、そこには滑り台やブランコ、砂場などがあり、実に不思議な感じだ。
沢山あるベンチは埋まっているが、スーツ姿の男性は、食べ終わるとすぐに去ってくれる。よって席をちゃんと確保できた。
「にゃー」と一匹のもふもふな猫が、目の前を通り過ぎる。
手足はスラリと長いのに、胴体と尻尾はふさふさ。
長毛種と短毛種の両親を持つ猫なのかしら?
ザザッと木々が揺れる音がして、強い風に目をつむる。
風が収まるのを待ち、目を開けると、そこにもう猫の姿はない。
膝の上に乗せた、紙の容器に入ったオムライスを食べようと蓋を開けた時。
涼やかな香りを感じた。
木製のスプーンを握り締めたまま顔を上げると……。
フワリと吹いた風に揺れる、サラサラのアイスブルーの髪。
凛とした眉に、長い睫毛、その瞳はサファイアのようで、鼻がとても高い。
シャープな輪郭に、血色のいい唇。
スラリとした長身に長い手足。
水色のシャツに、コバルトブルーのストライプ柄のネクタイ。
パールグレーの明るいスーツが、実に清々しい。
「Is this seat next to you available?」
甘めの柔らかい声に聞き惚れ、かつ語学力がそこまでない私がぽかんとしていると、その驚くほどの美貌の男性は、太陽のような明るい笑顔になる。
「櫻木 藤華先輩、こんにちは。僕、雨音 悠一です。同じ三峰商事の新入社員です。隣の席、空いていますか?」
首から下げた社員証を示し、完璧な日本語で挨拶をされ、私は口をぽかんと開けたまま固まる。
さっき後輩が言っていた、すごいイケメンな外国人の新入社員が彼なのではと思い当たった。そしてなんで私の名前を知っているのかしら――という疑問は、自分も社員証を首から下げたままだったことを思い出して解決する。
「あ、はい……どうぞ」
「ありがとうございます」
隣に座った雨音くんからは、さっき感じた涼やかな香りがしている。さすが外国人。香水をつけているんだ。
偶然の出会い。
ランチを終えた新入社員が息抜きで公園へやってきた。
たまたま同じ会社の人間を見つけ、声をかけてくれた――と、その時の私は思っていたのだけど……。
後々、彼が私の部屋に当たり前のようにいる関係となり、初めて結ばれた日の夜。不思議な転生の話を聞くことになった。まるでドラマや映画のような話だったけれど、それはとてもリアリティがあるもの。嘘をついているとは思わず、その話を信じ、そして――。
「もう、藤華のことを離さない。一生、そばにいて。僕と結婚してください」
そう言われるのは、この新緑の日の昼下がりから、一年後のことだった。
~ fin. 「37」で、あの時何が起きたかが明らかに~
お読みいただき、ありがとうございます!
すっかり貴族っぽい世界の話ばかり書いていたので、この現代風は、なんだかくすぐったい気持ちで執筆しました。
現代の恋愛話も読んでみたいと感じていただけた読者様がいましたら、いいね!や感想などで教えていただけると嬉しいですー。
それとですね。本日バレンタインということで、活動報告でちょっとした診断を公開しています。常連読者様は「あー、去年のバレンタインもやっていましたネ」と懐かしいかもしれません。
気が向いたらご覧ください。
大したものではないのでスルー無問題です~。
https://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/2371542/blogkey/3258230/

























































