サポーター。勇者の中に放り込まれる
僕はユーリさんの戦いを見届けるために観客席に向かう。
けれど、もう既にそこは見物客で埋まっており僕の入る余地などどこにもなかった。
「む…ぎぎぎ……!」
屈強な冒険者達の合間を縫って前に進もうとするが、肉の壁に阻まれて進むことは叶わない。
「はぁ……どうしよう……」
サポーターとして、こんな所で足止めを食っているわけにはいかない。けれど、レア中のレアモンスター、ダイヤモンド・デュラハンの姿をお目にかかるなんてそうそうない。
その姿を見るために見物客が集まってきてしまっているようだ。
試験を受ける人のパーティがその戦闘を見られないなんて、どんな欠陥試験なんだと毒づきたくもなる。でもそんな事をしても無意味なので再び分厚い肉の壁へと挑む。
けれど、そんな僕の戦いを当の冒険者たちは気づくこともなくただ和気あいあいと話をしている始末。これじゃ僕の一人相撲じゃないか。
「お、マインやないか」
そんな風に虚しい戦いを1人繰り広げていると、聞き覚えのある声が投げかけられた。
「アーサーさん!」
「なんや、相変わらず腕っ節はからっきしやのぉ」
僕の様子を見て全てを察したアーサーさんは呆れたように笑う。
「んならこっち来ぃや。ええとこ連れてったるわ」
「え?いいとこ?」
アーサーさんに誘われるまま、僕はアーサーさんの後に続いた。
ーーーーーーー
「……………………………………」
「Hey。何だこの豆粒は?」
「あらあらぁ?勇者パーティにしては頼りない子ねぇ」
「コレ、ワイの推しやで、ええやろー」
僕は身が縮こまりそうになりながら椅子の上で正座をしていた。
「ほーれ。ここならたっぷり試合が見れるで?いやー、ええ仕事したわぁー」
はい。しっかりと。最前列でユーリさんの試合を見届けられますよ。
でも……でもここは……!!
「ここ……勇者専用のVIP席じゃないですかぁぁぁあ!?!?!?」
僕の周りに座るのは、筋肉隆々の褐色の肌を持つ鉄の勇者アイアンさんと金の長髪を揺らし、透き通るような緑の瞳をしたエルフの中でも、魅了の勇者レイラさん。こんな勇者専用の場所に1サポーターの僕なんて、分不相応にも程があるでしょう!?
「えーやんえーやん。細かいことは気にしたあかん。それともあのまま美人ちゃんの勇士見れんまま遊んどきたかったんか?」
「う……それはそうですけど……」
確かに、ここなら他のどの席よりもユーリさんの戦いを見届けられる。
「あらぁ?私を差し置いて美人だなんて。随分なことを言うわね、アーサー?」
「あっはっは。ワイは美人に目がないからなー。レイラたんも今度デートとかどう?」
「ふふふ。そうねぇ……呪われた【神蝕】の剣を引き抜けたらデートしてあげてもよろしくてよ?」
「止めてくれや。あんなふざけたもんに関わりとうないわ」
そんな勇者トークを聞きながら、僕はただ眼下のフィールドに目を落とす。そこに担ぎ込まれるのは大きな黒い棺。確か死霊モンスターを捕獲するためのアイテムだったはず。
「ユーリさん……」
いくら分不相応とはいえ、折角アーサーさんが連れてきてくれたんだ。それにここならユーリさんの戦いをしっかり見届けられるはず。
勇者に囲まれるという非日常に戸惑いながらも僕は気を引き締め直す。
そうだ、流されるな。今の僕にできることは何か分からないけれど、例え共に戦えなくてもユーリさんを支えなければ。
そう心に誓いながら僕は試験が始まるその時を待った。




