女剣士。罵られる
戦闘試験まで残ったパーティは25。
私が控え室に向かうとそこには屈強な勇者候補達がズラリと並んでいた。
彼らは私の姿を見つけるなり、嫌な視線を向けてくるのが分かる。ついこの前まで慣れていたその視線に、少しだけ胸が痛む。
「おい」
すると、そんな私に1人の髭を蓄えた大男が声をかけてくる。
「お前……確か、1位で学力試験を突破した奴だよな」
「だから何?」
「ふざけているのか」
目の前の男の言うことが、私にはよく分からなかった。何か彼らの気に障ることでもしただろうか。
そんな私の反応を見て、男は言う。
「分かるだろう?ダイヤモンド・デュラハンなんてモンスター、1人で太刀打ちできるモンスターじゃない。あんなものただのハズレモンスターだろう」
髭の男の言葉を聞いて、周りの冒険者達もまた声をあげる。
「そんなモンスターをわざわざ1位のお前が選ぶなんてふざけてるだろ。死に急いでる以外になんだってんだ」
「言ってやるな。可愛くてちょーっとだけ強くてチヤホヤされて、天狗になってやがんのさ。どうせ試験だからって死なねぇと思ってんだろ」
「せいぜい頑張れよ。どうせ10秒ともたねぇだろうけどな!」
「…………はぁ」
彼らの言葉を聞いて、私はため息をつくしかない。
「何がおかしい?」
私の態度が癪に触ったのだろうか。髭の男が私に問う。
「勇者になるんだから、当然でしょ?挑む前から怖がるなんて勇者らしくないじゃない」
むしろ、私には分からなかった。
勇者になるということは、これまでとは違う。より強力なモンスターやクエストに挑む権利を得るということ。
「勇者になれば、こんなモンスターと戦うことだってあるでしょ?むしろ、どうしてそんな危険に飛び込む勇者候補がわざわざそいつを避けて弱い相手を選んで戦わなきゃらならないの?」
「「「………………っ!!」」」
私が放った言葉を聞いて他の冒険者達は酷くひきつった顔をした。
考えても見たらそうだろうと思う。マインの話ではあのダイヤモンド・デュラハンは勇者パーティで互角の相手。
逆のことを言えば、そいつは勇者パーティになれば相対さなければならない敵だということ。
自らそいつと同じ土俵に立とうと言う人間が、何故そいつとの戦いを避けて且つ、そいつに戦いを挑めば「舐めている」という話になるのか。
そんな私に周りの勇者候補達が声を荒らげる。
「だ、黙れ!1人で戦うのが馬鹿げてるって話だろ!?」
「そうだ!俺達だってパーティを組めりゃダイヤモンド・デュラハンぐらい……」
「じゃあ、あなた達はパーティがいないと戦えないの?もし仲間達が傷ついていたら仲間を置いて逃げるの?」
「……………………っ」
私の言葉を聞いて再び黙り込む冒険者たち。
私……何か間違えたこと言っただろうか。マインがいないとこう言う時どうすればいいのか分からない。
「だから、私はダイヤモンド・デュラハンと戦う。マインが学力試験では最高の力を示してくれた。だから今度は私の番。この試験で1番強いモンスターを倒して、ちゃんと勇者として相応しいってことを証明する。それだけだけど」
だから、とりあえず私は自分の考えを冒険者たちに伝えることにした。
別に、他の冒険者たちを舐めてるつもりもバカにするつもりもない。
ただ、私がそうしたいだけ。私とマイン、2人の力で……2人で勇者になるために私ができる最大のことをするだけなのだから。
「……上等だ」
そんな私の意見を聞いて、髭の男は声を上げる。
「だったら、もしお前がダイヤモンド・デュラハンを倒したなら俺はお前を勇者と認め、この勇者試験をリタイアしよう」
………………………………はい?
この男はなんだと言うのだろう。
「乗ったぜ!だったら俺達もだぁ!!」
「勝てるもんなら勝ってみやがれ!若いくせして偉そうに!!」
「可愛いからって調子に乗るなよぉ!?」
おかしい。
こんなつもりで話した訳じゃないのに……。
「ね、ねぇ……別に私そんなつもりじゃ……」
「ふん。勘違いするな女」
困惑する私に髭の大男は言う。
「ダイヤモンド・デュラハンを1人で倒せる奴がいるのなら、それこそ勇者にふさわしい存在だ。お前がその偉業を成せると言うのなら見せてみろ。勇者としての力を、俺に見せてみろ」
「…………変な人」
そんな髭の男の言葉を聞いて、私は呆れる。けど、同時に嫌じゃないとも思った。
「せいぜい、死なない程度にやってこい」
「上等。必ず私の力を目に焼き付けてやるから」
そう言い残して、私は歩き出す。
戦闘試験がいよいよ始まる。モモカに鍛え上げてもらった両手剣を握り、私は闘技場へと足を運ばせた。




